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読書記録『ローレンス・ブロックのベストセラー作家入門』

 創作指南を何冊読んだところで小説が書けるわけではないのだが、飽きずにまだ読んでいる。図書館にはまだまだ未読の創作入門や創作ハウツーが残っていて、おかげで当面読む本には困らなさそうだ。
 もはや何かの知識や知恵を期待しているのではなく、僕はただの読み物として読むようになってきた。となれば重要なのは役立つ情報よりも読んで面白いかどうかだ。そして今日読んだローレンス・ブロックの創作指南はこれまで読んだどれよりも面白かった。
 僕はこれまでに読んだ創作入門の類の20〜30倍のハードボイルド小説や探偵小説を読んでいるはず(もっと多いかもしれない)で、当然、ローレンス・ブロックのマット・スカダー・シリーズや泥棒バーニィのシリーズも読んでいる。『八百万の死にざま』はいまでも書棚のいちばん手前に並んでいる。ところが小説と本書では文章はまったく違った。
 『ベストセラー作家入門』ではユーモラスな軽い語り口で創作にまつわるあれこれがつづられていた。内容の詳細は割愛するが、小説であれエッセイであれ楽しく読ませるためには、文章の巧みさと語り手本人のパーソナリティも影響するのだなと感じた。
 ともあれ本書はエッセイとしても十分に面白くて、読み終わった直後には理由不明のニンマリとした笑みが浮かんでしまった。しかもシステマチックに小説の作り方を解説した指南書よりも、学ぶところや役立つと思えたところは多かった。やはり「誰でもまんべんなく書けますよ」的なハウツー本よりも、ベストセラー作家の筆力は圧倒的に上にあるのかもしれない。
 まずは図書館で借りてきたけれど、あまりに面白かったので、読み終わった直後にamazonでオーダーしてしまった。
 それと、探偵小説好きにはたまらなかったのが序文。
 書いているのは4年前に惜しくも他界したキンジー・ミルホーン・シリーズのスー・グラフトン(!)。いきなりこの序文から始まるご褒美感がたまらないのでした。
 それにしてもハヤカワミステリのキンジー・ミルホーンのシリーズ、今はもう全部絶版になっちゃってるらしい。
 サラ・パレツキーのV・I・ウォーショースキーのシリーズはまだ残ってるんだから、どうにかならないもんですかねえ。


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