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惑星弱虫

目印も何もない月面を
肩書きばかり詰め込んだ名刺 握りしめて
誰かの足跡 探してなぞっていく

存在しない椅子の周りをぐるぐる廻るだけの
くだらない椅子取りゲームはもう飽きたし

僕が僕である為に必要な物もの
ただ此処にあるもの
きっと それだけ
ただ それだけ

同じ街で育った僕ら
同じ体温で生きていたから
分かり合えたんだ

凍てつく酸素が心臓まで届きそうだから
少しだけ寄り添った


くたびれた希望にもたれて僕は
出来損ないと嘲る事しか

雨音に混じるサイレンに耳を塞いで
借りてきた夢にトリップする

真っ逆さまに堕ちながら 誰かの笑い声を
聞いた気がしたんだ
痛みを感じる前に
クチナシの香りで 惑わせてくれませんか


心の片隅に 吹き溜まりの地層
今更 触れようなんて 無茶苦茶してさ
泣き笑い からかい合うその瞬間が


同じ音で違う言葉を喋る人々
何処かの星の路地裏ですれ違う事もあるだろう

ひとりぼっちの影踏みは終着点を探してる
息を押し殺して
有象無象で生きていく事だって出来た筈なんだ

君が君である限り
どんなに姿形が変わろうとも
きっと それだけ
ただ それだけ

同じ傷を負った僕ら
同じ痛みを知っていたから
笑い合えたんだ

まるでスクリーンに映る恋人同士のような
つかの間のハッピーエンド


耳障りな心拍数に呑まれて僕ら
全てを明るみに晒けだすのは怖いけど

街灯のリズム数えながら
交差点で白線の綱渡り

真っ逆さまに堕ちながら 歓声と喝采を
聞いた気がしたんだ
痛みを感じる前に
クチナシの香りで 惑わせて欲しいよ
そんな気に して欲しいよ

この星の愛すべきすべての弱虫達よ


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