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#小説

【エッセイ】三点リーダーの数を指摘してもらうために、二次創作を書いたんじゃねぇんだ…!

「尊い」「いっぱいちゅき」「すこすこ」「沼に落ちたわ」 これは上記の言葉がまだ二次元を愛するヲタク達に浸透していない頃。 もう少しだけ具体的に言うと、今から10年以上前のこと。 当時は、「カクヨム」「小説家になろう」「note」「Twitter」などのネット小説に特化サイトやSNSはなく、携帯小説が流行していた。しかし、携帯小説サイトに読みたいものはなかった。まったく興味を持たなかった。 なぜなら、当時の私は二次創作に恋焦がれていたのだから。 漫画やアニメなどの作品を

一番大切な才能は?【ショートショート(約1300字)】

 かなり昔の話なんだけど、俺、小説の神様に会ったことがあるんだ。  小説に興味があったわけじゃないし、物語なんて一度も書いたことがない俺の眼の前にそいつは急に現れて、  こんなことを言ったんだ。 「お前が小説家になるための才能を三つ与えよう」って。そいつは、小説のしの字も知らないような俺に、選択肢を並べて、「さぁ、選べ」と続けたんだ。そこには小説家を志望するような者なら喉から手が出る欲しいだろう、才能の欠片たちが七、八個は並んでいたかな。  小説に興味がなかったら必要

書けなかった、かつての僕へ

 昔ある好きな作家の小説を読んでいると、〈小説家志望や小説を書きたい、という人間は驚くほど多いけれど、実際に書いている人間は驚くほどすくない〉と大雑把に言うとこんな感じの内容の文章が出てきて、僕はその言葉にどきりとした覚えがある。  何を隠そう、それを読んだ当時の僕は、小説家になりたいと口にしながらも、ほとんど大して何も書かない生活を送っていたからだ。わははっ。  一度、小説家になりたい、と小説を書き始めて、その内に何も書かなくなって「小説を書きたい」「小説家になりたい」

[ノンフィクション掌編小説]二度寝攻防記

昨日というか、今朝。早朝まで昨晩は起きていた。 記事を仕上げて投稿して、日記を書いて……、寝たのは6時近かったかもしれない。 朝、7時に目覚ましが鳴って起きた。2時間未満の睡眠だけど、ここまではいい。 今日はゴミ出し日だからだ。 起きようとして布団をめくると、刺すような空気の冷たさが優しく体をなでる。一瞬にして体温が奪われてしまった。反射的に布団をかぶって体を縮こませる。 寒い。 寒いときのお布団の魔力は凄まじい。人肌の温もりをもって物理的にも精神的にもすべてを受

夜明けに流すあなたとの日々

そのことばは夜明けへと続く。誰にも届くことはなく、風にさらわれた赤い花びらのようにどこかへ消える。 彼は待っていた。自分のために作られた居心地の悪い部屋で。山積みの教科書と新品の課題。彼は彼女を待っていた。家族はすでに寝室へと引き上げ、安らかに明日を迎えようとしていた。 眠気はない。明日も退屈な一日。朝、教室に入れば、彼女はいつものように奥の窓際の席に座っているだろう。それでも退屈なんだ。きっと、昨日よりもずっと。彼女はいつも通り、笑っている。でも、もうただのクラスメート

小説がそこにあるのが当たり前じゃなかった頃

 私はかなり遅れてきた読者である。 「幼い頃から小説に親しんでいて」「そばに本のあることが当たり前だった」「両親の書斎にあった本を子どものうちに、親よりも読むようになっていた」と私と付き合いのあるひとは小説書きかレビュアーが多いので、自然とこんな文章を見掛けることが多い。その言葉を聞くと、ちりり、と古傷が疼くような痛みをかすかに胸に覚えてしまう。  私は少年時代、ほとんど本の読まない子どもで、詳しい経緯はこちらの記事に書いたのですが、  ある時期を境に、急に小説の魅力に

私の文章はとても簡単だと気付いた話。

ふと気付いたんだけど、私の文章ってすごく簡単だと思う。 難しい言葉が出てこないし、凝った比喩的な表現とかあんまりない。 なんかちょっと考えさせるような言い回しとかも少ない。 エッセイはまぁそうだけど、私は一応小説も書いている。でもこれも独白形式が多いから風景描写も少なくて、季節の移ろいを感じるような情緒的な言葉も少ない。感情的な部分でも複雑なことがあまりない。 というか、簡単だ。 たまに素敵な文章をお見かけし、なんか「ほぉ〜」って気持ちで読ませてもらって、書く技術に

【ショートショート】光を育てるお仕事

「あっ」 さっきまで確かに手にしていたと思っていた光は、いつのまにか手からこぼれ落ちてどこにも見当たらなくなっていた。 (あー、またやっちゃった) 私の仕事は真っ暗な闇の中で、生まれてはすぐ消えていく儚い光を拾い集め、大事に大事に育てて大きな光にすることだ。毎日出社しては暗闇に身を投じ、静かに光が生まれるのを待っている。 「あんたまた落としたの?」 離れた場所から先輩の声が静かに聞こえてくる。先輩はとても優しい人で、入社したばかりで仕事がうまくできない私をいつも気に

「自分ダサいな。」って気づけてからが人生再スタートだっていう話

「まだ自分は大丈夫」、「やればできる人間だから」。普通に生きてて気づかないことがある。 会社を辞めて、晴れて無職になった時、あるいは生活費が底をつきそうになった時。現実を直視せざるを得ない状況。そんな時にどう考えるか。心に耳を澄ませて聞いてみよう。 会社退職、お金が尽きるまで 会社を辞めてから1ヶ月。時間に余裕ができて、これからどうするか、将来についてふと考えてみる。「まだ大丈夫。なんとかなる」、短絡的な思考の1つが頭の中で浮かび上がってくる。 元々夏休みの自由研究、

名前がなくても愛しくてたまらない

真っ白い部屋に包まれながら眠っていた。まだ眠い目を擦りながら、眩しい日差しに刺激されて目を覚ました。隣に視線をやると愛しい人がまだ眠っていた。あることをはじめるために、起こさないようにとベッドから出る。 そう、ピクニックの準備を。こんなにも天気のいい日はピクニックに行きたくなってしまう。断られるかもしれないと少し不安を抱きながらも、お弁当を作りはじめた。 寝室で叫び声が聞こえてきた。びっくりした。効果音をつけるとしたらきっと、ドタドタ、バンッ。走って思ったら勢いよ

女子会なんて抜け出して、給湯室でキスがしたい

男社会の周縁で夜な夜な繰り広げられる無法者たちの宴、いわく「女子会」ですらゆきずりの愛は肩身がせまい。   「A子、自分のことは大事にしなよ。」 「…わかってるよ。」 ガラスの天井を見上げながら入社後平行線の報酬を噛み締めて若さを消費するわたしたちの味方は白いサングリア。 社会の中心に居てはおれないわたしたちだからわざわざこんなところに集ったのに、だからこそなのか中心のはしっこにくらいにはしがみついていないと居場所なんてないんだと急き立てられる。   女だてらに