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子育てにおける刺激の重要性

※この記事は速読の練習用として使えるように、太字部分を読めば1,2分程度で読めるように書かれています。ぜひやってみてね!


※この記事は前に書いた「子供を人手をかけずに育てるとどうなるか」の記事の続きです。



さて、前の記事の終わりだが、別な考え方として‟母親の愛情に基づく行動”とはなんなのか、といったものがある。すなわち、それがどういった行動なのか、ということだ。スピッツは母親の愛情の重要性を説いたが、ここで紹介する実験は‟どういった行動が影響を与えているのか”といったことを説いている。

母親はしばし、子供を見て話しかけたり、笑いかけたり、抱き上げたりする。これらによって子供は多くの刺激変化(情報)を得ることになる。

しかしこれは母親のいる、家庭児の話だ。

果たして施設の子供が受け取る刺激変化の量はどうだったのだろうか?

施設は壁やカーテン、ベッドも白、そしてなるべく静かに、余計なものは置かないようにしていた。なぜならこういった施設は「静かで清潔であるべき」だと思われていたからだ。つまり知らず知らずのうちに、刺激変化量が最小に抑えられていたのである。



刺激変化量と発達の関係


―――幼少期では環境中の情報の量を多くすることによって施設児の発達を促進できる。

ハーバード大学の心理学者、ホウイトはそう考え、ある実験をした。


ホウイトは施設の子供を生後6日間から36日間までの期間、毎日20分間特別に抱いたり、いじったり、という触覚的経験を与えた。そして通常の保育しかされていない施設児と比べてみた。すると、触覚的刺激を余分に与えられた乳児の方が、その後の視覚的注意の発達でやや優れていた。

次に同じ期間の子供に同じ経験を与えて、さらに37日以後124日までは次のように環境を変えた。

・白一色からカラフルに変える
・様々な形の色や形のおもちゃを天井からつるす
・シーツを模様のあるものにする
・平らなマットレスの上に置き、乳児が体を動かしやすくする
・ベッドの柵を取り除き、毎日15分ずつ3回、うつ伏せにさせ、周りの光景 が良く見えるようにする

こうした環境下に置いた後、視覚的注意の発達の様子を調べてみると、75日頃までは少しそれが抑制される傾向があった。しかし、それ以降は普通の条件下の施設児に比べ、著しくその発達が促進されたのである。



適度な情報量

だが、そうした乳児たちは初めは居心地が悪そうにし、泣くなどの反応を見せていた。そこでその中でもうひとつ、少し情報変化の量を減らしたグループを作った。

ここでの乳児は快適に過ごし、発達も著しく促進された。つまりは刺激の量は多すぎでも少なすぎでもなく、「適度」であることが重要なのだ。なお、テレビがガンガンなっている、といった大きな騒音は発達に好ましい影響は与えないことも報告されている。また、刺激の質はあまり問題ではなく、豊富であればいいとされている。

清潔無音な施設のベッドは、感覚遮断の実験(「もし寝ているだけでお金が入ってきたら」)の状態と同じなのである。そういったところに閉じ込められていると、次第に無気力、無感動になり、発達も著しく遅れてしまう。また、これは実験ではなく逃げることもできない。こうした環境で育った子供がどうなるか、想像に難くないだろう。




乳児は昔は生まれたばかりは何も見えないと思われていたが、今では乳児は生まれて数時間後には目が見え、好奇心の兆候を示すと言われている。生後数日で白あるいは黒一色の刺激よりも、黒と白の市松模様などの刺激を長く注視することもわかっている。単純な刺激よりも複雑な刺激の方が好きなのだ。

乳児は生まれたそばから情報を求めているのである。そうして好奇心を育んでいく。しかしこの好奇心の発育は人生の早期に決まってしまうとされており、後からそれを直すことは不可能だと言われている。

しっかりとした刺激変化を与え、子供の好奇心を開発し、発展させであげることが乳幼児の教育では大切なことなのだ。また、こういった言葉がある。


「刺激変化(情報)は人生の薬味ではない。人生を作り上げている材料そのものなのだ。」



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参考文献

「知的好奇心-人間は怠け者なのか?」中公文庫(1973)波多野 誼余夫, 稲垣 佳世子

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