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褒美もなしにサルはパズルを解くのか

※この記事は速読の練習用として使えるように、主に太字部分を読めば1,2分程度で読めるように書かれています。ぜひやってみてくださいね!



勉強や仕事をさせるためには、それを完遂させるためになにかエサ(褒美)や苦痛(罰)が必要だと思う人は多いのではないだろうか。

しかし、「遊びと学び」「子育てにおける刺激の重要性」「もし寝ているだけでお金が入ってきたら」などからもわかるように、ヒトは元来情報を求める生物である。また、それに伴い知的好奇心や向上心も持って生まれている。



好奇心からパズルを解くサル

その証明として、動物心理学者のハーロイによって行われた「パズルの実験」というものがある。

その実験では、餌と水を十分に与えられた2匹の大人のリーザスサルに、6つの部品からなる組み立てパズルを提示した。それは大きな知恵の輪のようなものを想像してもらえるとよい。これを1日5回ずつ、2時間の感覚で、檻の中に置いておく。そして毎回の最初の5分間のサルの行動を観察した。

もちろんこのサルにはパズルが解けたことによって何か褒美が与えられるというわけではなかったのだが、パズルを熱心に解こうとする様子が見られた。そうして日に日にパズルの解き方が上手になり、手順を間違える回数が著しく減少していった。

実験を始めて12日目には、ほとんど間違えることなく、この複雑なパズルを解けるようになった

さらに13日目に1時間に10回ずつ、6分おきに10時間ぶっ続けにパズルを与えたところ、これらのサルは飽きることなくパズルをいじり続けた。このパズルはサルにとって見たことのない目新しいものだったというだけでなく、うまく外れた際の喜びを感じさせてくれるものでもあったのだ。

これは、サルのパズルを解くという探索が、不快な緊張状態(罰)によって生じ、適切な解き方がこれを解消させる(褒美を与えられる)ことによって習得されていったのだ、という説明を当てはめることはできない。むしろサルは、好奇心から楽しくそれを探索しているうちに、解き方を自然に覚えたのだと言える。



好奇心が一番働きやすい状態

ここでのサルは餌も水も十分に与えられており、不快な状態や、緊張状態にあるわけでもなかった。しかもパズルを解いたからといってご褒美がもらえるわけではない。

実はこの条件は好奇心が一番働きやすい、と考えられている。餌や水が十分に与えられなかったり、苦痛刺激が存在すると、探索はかえって減少してしまう。そうした苦痛や欠乏と条件づけられた刺激を見せても、やはり探索行動が抑制される。また、褒美をやるようにすると、それが与えられる時だけは熱心にやるが、褒美がもらえなくなると途端にやめてしまう。

これは初めに言った‟勉強や仕事をさせるためには、それを完遂させるためになにかエサ(褒美)や苦痛(罰)が必要だ”という考えが誤っていると言えるだろう。この考えには人間は学ぶ動物だ”、という尊厳が欠け落ちているように思う。

つまりは探索する好奇心と不快な緊張状態は、両立しないということだ。



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参考文献

知的好奇心-人間は怠け者なのか?(1973)波多野 誼余夫, 稲垣 佳世子


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