まちづくり妄想

私が思う自由なまち
〈基本理念〉
 第一に考えるべきは市民の幸せ。それを大きく左右するのが人と人の繋がりだと思う。人同士の関係が疎遠にならない、誰でも居場所が自然とたくさんできるまちを作りたい。そして、ひとりひとりが文化の発信点となり、交流によってシナジーが生まれ、文化が花開く。
〈長い説明文のようやく〉
 生活の中心になる広い生活用歩道を中心としたまちをつくる。その生活道路のわきにめちゃくちゃ自由な広場をつくる。そうするとなんやかんやあって文化が生まれる。
〈長い説明文〉
 クルマ同士では、たとえ人がたくさん集まっても、人の繋がりは生まれない。顔が見えないからだ。スクランブル交差点のように人が行きかうだけでも、人の繋がりは生まれない。きっかけがないからだ。道のわきで絵を描いている人がいたら、現代でもぎりぎり、「もしもしこんにちは」が起きるのではないだろうか。キーワードは、流れ淀みである。多数の歩行者が行きかう場所(流れ)と、移動を止めて行為をする場所(淀み)がすぐそばにあることによって、人の繋がりは初めて生まれるのである。これが私の妄想の根幹である。また、徒歩にはいろんな効果がある(環境、健康、防犯、安全)。
 生活の中心になる広い生活用歩道(流れ)と広場(淀み)をつくる。ここから私の妄想にお付き合いいただこう。
 道の両側には木が植えられ(幼木から育てる)、奥には自然の樹林が広がる。街路樹みたいに人工物の上に自然物がのってる感じではなくて、あくまで自然の中に人工物を置くという発想だ。この道はまっすぐではなくて上下左右にゆるやかに蛇行していて、まあまあ歩きにくいけど、木質チップでふかふかになっていて、歩くごとに景色が変わって楽しい。おしゃれな撮影スポットもある。樹林には四季折々の花が咲く。遠くに美しい山も見える。ここは住民も観光客も歩いている。通勤時間の前後には家から職場までランニングする人でにぎわう。夜は人感センサー付きのライトが人のいるところだけつく。空を照らさないようにしているので、星空が見える。ここの住民は自然の美しさも厳しさも知っているので、環境保護の意識が高い。
 広場はある間隔をおいて設けられ、住民や観光客の集いの場となっている。多くの住民は仕事と睡眠以外は屋外を生活の中心としている。広場には仕事を引退した年配者が娯楽や趣味で昼夜集まり、住民の孤立をふせぐとともに、防犯役も担っている。人付き合いの好きな連中が道行く人に声をかけて軽くしゃべったりもする。このおかげで地域では自殺者0人を達成した。
 この広場には建物がひとつふたつあって、住民自身がカフェやレストランや美術館、古着店などやりたいサービスを考えて提供する。この運営者は公務員として雇用され、定額給与なので、失敗を恐れず始められるし、純粋に利用者のためを思って商いができる。このサービスで市民は幸せになるし、同時に広場に人を呼ぶきっかけにもなる。また、運営者は訪れる人に積極的に気を配り、コミュニティナーシングをする。カウンセラーと違って普段から知り合っているからいざというときに相談しやすい。
 建物はバラックや看板建築のような簡易的な作りなので、建て替えが容易で半年ごとに建て替わっている。地域に縁のあるアーティスト&建築家が手掛けるので、建物自体が個性的なクリエイティビティを発揮する。建材も再利用できるとより良い。
 もちろん広場も文化創造の場所になっている。まず、この広場は自由に寛容に多様な人を受け容れる場となっている。あまり一つの用途に絞って作られていないが故の寛容さである。ひとつの広場では多様性を包容しきれないので、多種多様な広場があることによって欠点を補完する仕組みになっている。たとえばある広場にはストリートピアノが設置されていて、ピアノ好きの多様な人々が集まるし、またある広場では芸術活動や議論が盛んにおこなわれていて、またある広場ではDIYで建築物が建てられたりしている。このように素直な好奇心で生まれたものが他の人の心を刺激することによって、このまちのクリエイティビティの起爆剤となる。
 ある一つの広場について詳しく見てみよう。ここは討論が盛んにおこなわれている。ある人が勝手にレジャーシートと看板とマーカーと掲示板をたくさん持ってきている。ここに来た人は掲示板に自分の意見を書いたり、討論に参加したりする。討論を始める時にはマーカーで看板に議題を書いて地面にぶっさしておくことが暗黙の了解になっている。議論をしている人だけではない。民俗舞踊やフルートやゼミの看板をさしている集団もちらほらいる。
 こういう集団は自然発生的なもので、特にメンバーはないが、常連はいる。なので来なかったとかで咎められることはないので気楽にやれる。ほかにも美術展覧会やラジオ体操、コンサート、将棋大会、引退した年配者やボランティアが教える青空教室などで利用されていて、だれでも参加できる。観光客も参加している。かつてこの地域には観光客がいなかったが、文化的に注目されて、観光客が急増したのである。この地域には1000円で泊まれる簡易宿泊所がおかれていて、訪れやすい。観光客はこの地域を気に入ってくれて、ここの農産物を定期的に買ってくれるようになる人が多い。
 この広場は条例が適用されておらず、高校の自治クラブが管理している。規定の範囲を超えた活動の可否に関しては、自治クラブが判断を下す。これによって行政に関心をもつため、若者の投票率は全国レベルをはるかに上回る。
 住民の家具等はトランクケースのようなものに入れれば、市の自動運送システムが家でも職場でも届けてくれるので、家は家賃2万円の寝るだけの部屋を借りてこの自動運送システムを利用している人が多い。食事はレストランを利用する。レストランはなるべく地域でとれた食材を使い、前日までの予約制によりフードロスを0に近づけるように条例で定められている。

 この地域はコンパクトシティであるため、徒歩で移動しても無理のない広さだが、生活道路に沿ってLRTが走っているのでそれを利用することもできる。市の外側ではロボットを使って農業がおこなわれており、さらに外側にある山岳地帯には多くの登山者が訪れる。
 実は日本各地にこの地域に似た姉妹都市があって、住民は多拠点生活を送っている。平野部は平地を生かした農業で、日本の食糧庫と化している。

 はい。ここまで私の妄想に付き合っていただいてどうもありがとうございました。最後の方になるにつれてフィクション感が強くなっていきましたが… 

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