ファーストステップ司法書士53「遺言を書こう!【遺言】」
Aは身寄りのない老人です。お隣さんのBはAのお世話を長年続けてきました。そこでAは,自分が亡くなったら,自分が持っている家をBにあげるという旨の遺言を書きたいと思いました。Aはどのように遺言を書けばよいのでしょうか?
☑ 参考条文 ☑
【960条】
遺言は,この法律に定める方式に従わなければ,することができない。
【961条】
15歳に達した者は,遺言をすることができる。
【985条】
①遺言は,遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
☑ 用語解説 ☑
『 要式行為 』・・・法律行為のやり方を法律で定められているもの。遺言・婚姻・離婚・養子縁組など,その内容を明確にする必要があるものは要式行為とされています。
【1】意義
遺言とは,一定の書き方で表示された個人の意思に,その人の死後,それに即した法的効果を与える制度です。この遺言によって他人に財産をあげることを遺贈といいます。遺言は,本人の意思に基づくものであることを確認し,また,偽造を防止するため,要式行為とされています。つまり,遺言を書く際は,きっちりと形式を守らなければいけません(960条)(※1)。このようにきっちりと形式を守った遺言は,原則として,遺言を書いた人(遺言者)が死亡した時に効力が生じます。また,遺言をするには行為能力を必要としません。15歳以上であれば単独で行うことができます(961条)。これを遺言能力といいます。
※1 例えば,自筆証書遺言という形式では,遺言者が遺言書の全文,日付,氏名を自分で書き,これに押印することが必要となります(相続財産の目録は自書であることを要しない)(968条1項,2項)。これらのうちどれか1つでも欠ければその遺言は無効です。
【2】趣旨
遺言制度は,遺言者の最後の思いを尊重するための制度です。遺言は,遺言者の死亡した時から効力が発生するので,その効力が発生するときには,もはや本人の意思を確認することができません。そこで,あらかじめ遺言者の意思をはっきりさせるため,遺言の方式が厳格に定められているのです。また,遺言は,遺言者の最後の思いを尊重するための制度なので,遺言できる能力を行為能力のレベルまで引き上げる必要はありません。そこで民法は,遺言という制度自体が把握できる能力があれば十分と判断し,遺言能力の基準を15歳という年齢に定めました(※2)。
※2 そもそも,行為能力の制度は,通常より判断能力の低い制限行為能力者を保護するための制度です。しかし,遺言の効力が発生するときは,遺言者はもはや死亡してしまっているので,本人の保護を考える必要はありません。ですから,遺言する能力は,遺言という制度自体が把握できる程度で十分なのです。
【3】解答
Aは遺言を書く際,民法で定められた形式をしっかり守って遺言を書く必要があり(960条),その遺言の効力,つまりBへの家の遺贈はAが亡くなった時に生じます(985条)。
★やってみよう!★
【過去問 平成7年第19問ア】
☑ 満15歳に達している未成年者は,保護者の同意がなくても,遺言をすることができる。
➠○ 15歳以上であれば,単独で遺言をすることができるので,保護者の同意は不要です。行為能力の制度としっかり区別をするようにしてください。
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