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【択一式】抵当権・先取特権・用益権に関する登記(髙橋講師)

みなさん、こんにちは。伊藤塾司法書士試験科講師の髙橋智宏です。

今回の問題 ~抵当権・先取特権・用益権に関する登記~

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【1】第1問の解説 ~抵当権の被担保債権の発生原因日付の更正~

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利息に関する定めのある抵当権設定の登記に後れる第三者の抵当権設定の登記がされている場合において,先順位の抵当権の被担保債権の発生原因日付を過去に遡らせる更正の付記登記を,更正前の原因日付から2年を超えない日に申請するときは,後順位の抵当権の抵当権者の承諾証明情報を提供することを要する(登記研究786号,法66条)。

〔趣旨〕抵当権の被担保債権の発生原因日付を過去に遡らせると利息により担保される額が増加するところ,増額更正と同視することができるからである。

〔よくある質問 ~「2年を超えない日に申請する場合」に限定されるワケ~〕
Q.  上記の問題では,なぜ「2年を超えない日に申請する場合」に限定されるのでしょうか?
A.  抵当権で担保される利息は最後の2年分とする民法375条1項との関係で,2年を超えていたら,どちらにしても担保されるのは2年分で変わらないからです。仮に抵当権設定の登記をした日から1年後に,原因日付を1年前の日から2年前の日に遡らせれば,担保される利息は1年分から2年分に増えるので,後順位抵当権者等に不利益です。しかし,抵当権設定をした日から2年後に,原因日付を2年前の日から3年前の日に遡らせても,担保される利息は直近2年分であることに変わりはないので,後順位抵当権者等に不利益はありません。

【2】第2問の解説 ~先取特権の登記における建物の設計書の内容を証する情報~

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建物新築についての不動産工事の先取特権保存の登記を申請する場合,申請情報と併せて新築する建物の設計書の内容を証する情報を提供しなければならない(令別表43添ロ)。一方,不動産売買の先取特権保存の登記を申請する場合には,当該情報を提供することを要しない(令別表42添参照)。

〔趣旨〕建物新築についての不動産工事の先取特権保存の登記を申請する場合に建物の設計書の内容を証する情報を提供するのは,建物新築の場合には,工事によって新たに不動産が出現し,これを目的として不動産工事の先取特権が発生するため,工事の前に設計書に基づく表示に関する登記をして,その部分を特定する必要があるからである。この趣旨から考えると,不動産売買の先取特権では新たに不動産が出現するわけではないため,建物の設計書の内容を証する情報は不要である。

【3】第3問の解説 ~地役権抹消の登記における承諾証明情報~

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地役権設定の登記「前」に要役地にされた抵当権,差押え等の権利に関する登記又は所有権移転の仮登記の登記名義人は,地役権抹消の登記についての登記上の利害関係を有する第三者に当たらない(登記研究466号)。これに対して,地役権設定の登記「後」に要役地にされた抵当権,差押え等の権利に関する登記又は所有権移転の仮登記の登記名義人は,地役権抹消の登記についての登記上の利害関係を有する第三者に当たる(68条,令別表37添ハ)。

〔趣旨〕
【前段】地役権設定の登記「前」の抵当権等の登記名義人は,もともと地役権が設定される前の土地を目的として抵当権等を取得していたのだから,当初よりも不利な状態にはならず,不利益を被ることがないため。
【後段】地役権設定の登記「後」の抵当権等の登記名義人は,土地の利用価値を高める地役権が設定されている要役地であることを前提に抵当権等を取得しているため,地役権設定の登記が抹消されると不利益を被ることになるから。

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