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お金のない学会・研究会に使えるオンラインツール:メリット・デメリット 2021年版

2020年は軒並み学会・研究会がオンラインになって,大変な一年でした。そろそろコロナも収まってくると思われるので,多くの方にはもうすぐ不要になるかとは思いますが,オンラインコミュニケーションツールそれぞれのメリット・デメリット(特にポスター発表・懇親会)をまとめておきたいと思います。ちなみに2021年版とか言っておきながら情報はそんな新しくないです。

この記事ではそれぞれのツールの全体的な特徴を紹介していますが,お金がないことを前提としていますので予めご了承ください。どのツールでもお金払えば学会・研究会に最適なサービスを提供してくれます。5万円とか10万円とかそういうレベルの予算がしかない方を想定しています。

オンラインコミュニケーションツール

今のところメインに使われる可能性があるのは,ZoomRemoGather townSlackあたりでしょうか。お金がある方はきちんとした運営会社に問い合わせてください。

# 2021/9/9追記:最近,oViceを使う研究会・学会も増えてきましたね。RemoとGatherの中間みたいなシステムです。用途がGather寄りで,見た目がRemo寄りです。ただし使い方が煩雑あるいは難しく,最初は参加者に混乱招くこと間違いなしです。Remo寄りの使い方(テーブル参加型,結婚式など)であれば導入するメリットが大きいかと思います。Gather寄りの使い方(学会でのポスター発表や展示)は,慣れるまでに結構時間がかかります。機能は充実していますので,数日間におよぶ学会であれば,導入するメリットはあると思います。

口頭発表ばっかりの場合はほぼZoom一択

でいいんじゃないでしょうか。双方向式の質疑応答も比較的スムーズにおこなえます。チャットも利用できます。ウェビナーを使えば一方的に喋ることもできます。

メリット

何よりもお金がかからない,あるいは安く済むことです。最近は大学での一括導入ケースが多いです(個人的にエクストラな支払いはなし)し,残念ながら機関が導入してなくても,小規模であれば個人アカウントでもそこそこの機能が利用できます。
並行していくつものセッションが走る場合には,ブレイクアウトルームを使えば楽です。自分で部屋を移動する設定もできますので(1年前くらいはできなかったような),実際の学会に近い形での運用が可能です。ブレイクアウトルームを使用するとURLがひとつで済むのも,利用者にとっては楽です。ブレイクアウトルームじゃないと,毎回URLを探してログインしないとならないので参加者的には面倒です。

デメリット

特にないです。というか,だいたい我慢できる範囲内です。動画の共有は,カクつく可能性や,音声がズレることがありますので注意しましょう。発表の制限時間を知らせ方については別に書いたものがありますので,参考にしてください(情報古いけど)。

オンラインミーティングにおける時間管理方法

Slackの併用

チャット,質疑応答はログを残すことができますが,多人数がチャットで質疑に参加する場合,あるいはその後も質疑をじっくりしたい場合にはSlackを併用すると便利です。具体的には,メンバーが固定されているような会議,あるいは何日も続くような会議ですね。一度ワークスペースを作れば,その後も使いまわせます。

あまり質疑に慣れていない人でもゆっくり考えて質問できたり,質疑そのものを若手の学生などに読ませるというのも教育的にもGoodかと思います。ただし,PC操作に慣れていないとSlackの導入でつまづいたり,2画面(あるいは2デバイス)ないとリアルタイムでZoomと併用するのが難しいといった面倒もあります。

YouTubeでも良い

ちなみに一般の方へのアクセスを優先,そして講演に特化するのならば,YouTube Studioでライブ配信がいいかと思います。チャットで質問も受けられますし,アーカイブ配信もしやすいです。作業的にも,やってみると意外に面倒でもないですよ。WEB上にたくさん資料ありますし。

Remoでもいいけど

講演時(画面共有時)の動画再生に対応していないと思います。もしかしてアップデートされているかもしれませんが,これマジで注意です。ただしブラウザベースなので,動画だけYouTube URL投げるとか臨機応変に対応可能です。


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ポスター発表と懇親会

さて,悩ましいのがポスター発表です。可能性としては,①Zoomのブレイクアウトルーム,②Remoのテーブル(ホワイトボード),③Gather townのポスターパネル,④Slackという選択肢があります。

①Zoomでポスター発表

ブレイクアウトルームを使えば,できるっちゃできます。

メリット

部屋だけ作っておけばいいので,運営はめっちゃ楽というメリットがあります。口頭発表がZoomである場合には,連続性という観点からもメリットがあります。専用ソフトウェア(アプリ)をインストールするので,トラブルは少なめです。
懇親会については,ひとつの会話への参加人数という観点ではもっともメリットがあるかもしれません。また,顔出ししない&発言しない(恥ずかしがりやで聞いているだけ)という人を許容することが明言されていれば,そういう人は参加しやすいかもしれません。

デメリット

ルームの中に人がいるかどうかは入る前に確認できるので,人がいない時に聞きに行くことも可能ですが,チェックが多少面倒です。発表者がスライドを管理すると,参加者はポスターの見たいところを見れないので,ポスター発表ならではの良さはありません

懇親会については,他のツールと比較してそんなにデメリットがあるわけではありません。

②Remoでポスター発表(ホワイトボード)

メリット

Zoomよりも学会・研究会っぽい感じは出せます。小規模であれば,口頭発表(講演),ポスター発表,懇親会を一括で運営しやすいかもしれません。ポスター発表に関しては,ホワイトボードに何枚もファイルを貼り付けることが可能です(PDF,pptも可能だったと思う)。参加者のカーソルが個別に表示されるので,その辺もメリットかもしれません。
懇親会については,テーブルがあるのでなんとくそれっぽいです。あと強制シャッフル機能や,テーブルへの招待機能があります。前者はともかく,後者は意外に使えます。
ちなみに講演機能は,みんながテーブルで喋っていたとしても,強制的に画面共有されます。講演されている(スピーカーが壇上で喋っている)間は,テーブル内で音声おしゃべりすることはできません。ただしテーブル内チャットであれば可能です。開会の言葉とか閉会の言葉とか授賞式とか,そんなものをシームレスに実現できます。

デメリット

Remo全体のデメリットにもなりますが,フロア移動したときに人のいるランダムな席に移動したり,テーブルへの参加人数の上限がシビアだったり(料金プランによって変わるけれど)ということが挙げられます。ポスター発表に限定すると,ホワイドボード機能がRemo純正の機能ではないため予告なしにメンテナンスが入る(しかもだいたい日本時間で昼時間帯),結構インタラクティブなので参加者がいたずら可能(制限もできるけれど設定が面倒)などがあります。あとちょっと動作が重いかもしれません。
懇親会についても同様に人数制限が気になるところです。ただし,運営者(正式な名前わすれた)は人数カウントされません。テーブル移動はテーブルをクリックして移動するので味気ないです。
料金次第ですが,200人まで収容できるプラン(月額プランで450$,アカデミア割引あり)だと,ひとつのイベントが2時間半までだったような気がします。このプランでは2つのイベントを同時開催できるので,一日続く会議だと,2つのイベントをずらしながら開催するという感じになります。イベント間の移動はRemoのフロアにリンクが貼れるので,そこまで大変ではありません。

③Gather townのポスターパネル

メリット

いちばん学会のポスターパネルっぽいです。部屋を歩いて近くにいくと発表者と喋れて,自由にポスターを見ることができます(発表者に気づかれずにポスターを覗くことはできませんが)。その他,会場のどこでも参加者同士で会話することが可能です。ブラウザベースなので,参加もしやすいです。あるいは動画を貼り付けるオブジェクトを使うこともできます。
懇親会についても,自由に移動できるところが最大のメリットです。テーブルの人数制限はRemoよりは自由です。広告を出すスペースもあります。

デメリット

これはRemoもそうなんですが,ブラウザベースなのでテクニカルなトラブルが多いです。仕方ないことですが,運営としては避けたいところです。あと,やたらフロアを走り回る人が続出します。懇親会とかもボッチ続出です。ボッチ現象はリアルといえばリアルですが,走り回るのは興味深いです。

④Slackでポスター発表

まあ,これだけツールが増えた現在,やる人はいないかもしれませんが,ポスター発表であれば,意外といけます。

メリット

上の方に書いた口頭発表とSlackの併用と一緒です。じっくり何度もやり取りできます。通知もあるのでありがたい。オンラインで喋りたければ,各自で自分専用ZoomURLを公開して,スタンバっておけばいいですよ。運営的には超!楽!です。

デメリット

通知を適切に設定しないと,関係ない通知がたくさん来て非常にウザいです。あと,テキストで質問は可能ですが,引っ込み思案な人が”喋る”という機会は失われます。特に,発表者側としては喋る体験を重要視する場合には選択しにくいかと思います。また,特定の発表に対する人気・不人気がテキストとして可視化されるので,ちょっと悲しくなったりする人もいるかも。

終わりに

疲れました。初noteでした。途中で一回諦めましたが,書ききりました。参考になれば幸いです。思いついたら適宜こっそりアップデートします。

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