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【投資】三井住友トラストAM、マグニフィセントセブンに投資するハイテク株投信 - 日本経済新聞

今朝(2024年3月6日)の日本経済新聞記事。日本の資産運用会社大手、三井住友トラスト・アセットマネジメント(三井住友トラストAM)が大型ハイテク株7社、マグニフィセント・セブンに投資をするファンドを設定すると。なんでしょう…ちょっとモヤっとしたので、雑感です。


マグニフィセントセブンとは?

そもそもマグニフィセントセブンとはなんでしょうか?ググってみると:

『マグニフィセント・セブン』(The Magnificent Seven)は、2016年のアメリカ合衆国の西部劇アクション映画。1954年の日本の映画『七人の侍』を基にした、1960年の映画『荒野の七人』のリメイク

Wikipedia

とあり、元は映画のタイトルのようです。現在の金融界での定義は、足元の米国株市場を牽引する大型ハイテク銘柄7社、グーグル(現アルファベット)、アップル、フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)、アマゾン・ドットコム、マイクロソフト、エヌビディア、テスラの総称です。

設定されるファンドの概要

今回、三井住友トラストAMが設定する「米国大型テクノロジー株式ファンド」(愛称"マグニフィセント・セブン")は、その7社に投資資金を均等(14.2%ずつ)に振り分けて投資を行うファンドです。当該社のHPにはまだ販売用資料、目論見書等が掲載されていないので、EDINETという金融庁の電子開示システムを利用して申請された届出書を確認してみます(EDINETは金融商品取引に関する有価証券報告書等の開示書類が誰でも閲覧できる便利なサイトで超オススメです)。

  • 設定予定日:2024年3月22日

  • マグニフィセントセブンに等金額で投資、原則として半年ごとにリバランス

  • ただし、信用状態の著しい悪化等今後継続的に株価下落が見込まれると委託会社(三井住友AMのことです)が判断した場合には、これを売却することがある。この場合、委託会社の判断で他の米国大型テクノロジー株式を新たに組み入れることがある。

  • 為替ヘッジはなし

  • 販売手数料(申込手数料):2.2%(税込、上限)に販売会社が設定。なお取り扱いを予定しているSBI証券、楽天証券では販売手数料はゼロのようです。

  • 信託報酬:年率0.594%(税込)

  • 解約手数料、信託財産留保額等はなし

ファンドの枠組みとしては、いわゆる一般的な米国株式ファンドと変わらない普通のファンドになってます。

なぜ今からマグニフィセント・セブンなのか?

当方最初にモヤっとしたのが、「なぜ今からマグニフィセント・セブンに投資をするのか?」ということ。もちろんその7社がこれまで米国株の上昇を牽引してきたのはよくわかります。記事にもありますとおり、この7社でSP500の時価総額の約3割を占め、2023年1年間のパフォーマンスは他のSP500構成銘柄に比べて10倍もの差があったとか。

割高じゃないのか?

ただこれまで市場を牽引してきたということは、それらの銘柄にも割高感が出てきているかも?という懸念が湧いてきます。直近のデータを以下の表にまとめてみました。PER(株価収益率)だけで判断するのはもちろん乱暴ではありますが、今注目のエヌビディアは約70倍、アマゾンで60倍。平均でも約40倍ちょっと。日本のバブル期、1989年頃の日本株のPERの平均が60倍〜70倍だったようですので、まさにそれ並みに評価されているということです。ちなみにSP500指数全体でみると約20倍のようですので、エヌビディアやアマゾンは市場より3倍程度、そして7社平均でも市場の2倍以上での評価となってます。

データはYahoo! Financeより

ここでは、この7社が割高なのかまだ大丈夫なのかの議論はしません。以前、自身のnote(これから出てくるであろう"株価正当化"議論 - 米テック株、PER30倍超え")でも議論しましたが、専門家の間でも意見は分かれるでしょうし、高くてもそれを正当化しようとする意見が出てくるのは想定通りです。

繰り返しますが、これだけで判断するのは乱暴だとは理解しつつも、個人投資家/長期投資家の基本は「いいものを安く買う」こと。マグニフィセント・セブンは「いいもの」だとは思いますが、やっぱり「安く」はないですね。「いいものを高く買う」、ブランド品みたいなもんです。

自分でできるんじゃない?

もう1つのモヤが、7社程度なら「自分でやればいいんじゃない?」ということ。米国株の投資経験のある方、あるいは普段からネット証券で個別株を運用されている方であれば、米国株は割と少額から投資できることを知っています。一般的には米国株は1株から購入できるので、例えばエヌビディアは足元$859/株なので約130,000円、アップルであれば$170/株なので約25,000円から投資できます。

おそらく自分だったら、投資信託(ファンド)ではなく、個別にやるだろうな…と思うんですが、とはいえ、投資信託であればもっと少ない資金(例えば1万円とか)からその7社に一括で投資をしてもらえ、そして半年に1回ではありますがリバランス(配分の調整)もやってもらえるので、便利ではあります。まさにそれが投資信託の機能ですからね。年率0.6%程度の信託報酬も悪くないと思いますので、「(高いか安いかはさておき)手軽に少額でマグニフィセント・セブンに投資をしたい」という方は検討できるファンドではないでしょうか。

機関投資家の苦悩?

では機関投資家向けの運用をされているいわゆるプロの投資家たちはどうしているのでしょうか?最近のニュースをちょっとググってみると:

ヘッジファンドは2023年10-12月(第4四半期)に市場に極端な兆候が見られる中、大型ハイテク7銘柄「マグニフィセント・セブン」へのエクスポージャーを縮小した。ゴールドマン・サックス・グループが指摘した。

2024/2/21 - Bloomberg

届け出によると、ヘッジファンドの間では、マグニフィセント・セブン銘柄の保有比率がまた上昇した。個人トレーダーも、新型コロナウイルス時代の取引ブームをほうふつとさせる強気オプションへの需要で、動きをけん引している。

2024/2/25 - Bloomberg

米金融大手モルガン・スタンレーによると、世界のヘッジファンドは足元で米国の超大型7銘柄「マグニフィセント・セブン」への投資配分を減らし、他のハイテク、メディア、通信(TMT)企業を増やしつつある。

2024/1/15 - Reuters

Bloombergの記事では2月21には「減らした」、その直後の2月25日には「増やした」とあるので、どっちやねん!?って突っ込みたくなりますが、なかなか神経をつかっている、微妙なところにいるのが感じられます。

機関投資家向け(プロの投資家)の運用では、ベンチマーク(例えばS&P500とか)に勝つか負けるかで評価されます(上記ヘッジファンドはちょっと違いますが)。たとえマグニフィセント・セブンが割高だなって思っていても、それが市場を牽引し続けるのであれば、「割高なんでアンダーウェイトします」なんて言い続け、そしてベンチマークに負け続けるのはなかなか我慢・忍耐がいるものです。

結果として、上記に紹介した過去のnoteにもある通り、「確かにPERで見たら割高に見えるが、別の角度で見ると…」とか、「潜在的な成長率を勘案すると…」とかって言って、それらを保有することを正当化するような議論も出てきます。

それが合っているのかどうか、ちょっとわかりません。また当方、既に資産運用会社には勤めていないので、現在の米国株の運用者たちの状況はよくわかりません。ただ、なんとなく苦戦している状況、そして過去繰り返されてきたのと同様な議論が展開されているのかな、なんて想像しています。

まとめ

長くなりましたが、要は…

  • 当方は当ファンドは買いませんし、今からこのマグニフィセント・セブン銘柄を個別に買うこともありません。結果として間違っているかもしれませんが、高く見えるので今から追っかけて買わなくてもいいかなって思ってます。もちろん、割安で放置されている銘柄群が個人的に好きだということもあり、自分の嗜好に合わないっていうこともあります。

  • だからといって、このファンドが設計上ダメかというとそうではなく、どういうリスクを取るのか理解した上で「それでも買いたい」というのであれば検討してもOKかとは思います。

  • ただ、過去相場が高くなってきた頃によく聞いてきた議論、パターンと似てきている感じはしています。当方、引き続き日本株、米国株のエクスポージャーは高いですし、ある程度はそれを維持していく予定ですが、慎重姿勢、そして下落への備え・心構えは持っておきたいと思ってます。そしてその思いはちょっと強くなってきています。

#日経COMEMO #NIKKEI

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