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売れない時代がビートルズをつくった

この本のことは知らなくても、多分この本で書かれた「1万時間の法則」は数多のビジネス書に引用されているので知っているかもしれません。

一芸に秀でる形で成功した人たちを調べたところ、どの人も一万時間はそのことに打ち込んできた共通点がある、という著者マルコム・グラッドウェル氏の理論。10冊くらいビジネス書読んだらたぶん1冊は引用されているはずです。

なお、1万時間を24時間で割ると416日(1年と51日)、1日6時間集中して打ち込むとした場合1660日(4年と204日)。なんとなく「成功には1万時間」というのがキャッチーなんでこのフレーズだけが一人歩きしていますが、もちろんただ漠然と1万時間を過ごせばいいのではなく、実行→検証と反省→調整→実行といった弛みないアップデートを1万時間やればプロになれる(かもしれない)ということです。(ビートルズについてはドイツでの1日12時間演奏という苦行のようなバンド時代が後の成功をつくったといわれています。)


そう考えると最近は若い人のクリエイティブレベルが音楽、デザイン、アートなどで軒並み高いのは「プロと同じ道具」「高い吸収力」「ネットのおかげで新旧織り交ぜて世界の様々な質の高いコンテンツにアクセスできる環境」をベースに子どもの頃から数えると1万時間くらいをそれに費やしているから、かもしれません。ただデザインについては「課題解決」については社会に出て仕事をしないと身につかないので、それに気づけるかどうかは分かれ道ですね。

ちなみに、原書の題名はOUTLIERSは「異常値」という意味合い。他とは違う突出した状況(音楽やスポーツの才)などはどう生まれるのか、についての本であり、題名の「天才!」っていうのは本を売るにはわかりやすいけど、内容とはちょっとかけ離れている感も。(マルコム・グラッドウェルの本は勝間さんが変に翻訳したせいで、結構もったいない部分多いんですよね。)

この他にもアジア言語における数字体系のシンプルさが数学に強い環境をつくっている、韓国語と韓国カルチャーの在り方が飛行機事故の多さに繋がっている、など「エビデンスはなんだ?」みたいな話をせず、そういう考え方もあるのね、と思いながら読むには最良の本かと思います。

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天才!成功する人々の法則(2009年、講談社、マルコム・グラッドウェル)
https://amzn.to/3tRoMFp

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