一世

クリエイティブディレクター、MBA特任教授。料理すること、食べること、本を読むことが好…

一世

クリエイティブディレクター、MBA特任教授。料理すること、食べること、本を読むことが好きです。

最近の記事

大流行の「ビジネス・パーパス」に一石を投じる視点

ブランディングを中心としたビジネス界隈ではここ数年で一気にメジャーワードとなった「パーパス」。なぜ自分たちはその仕事をするのか、をビジョンと絡めて言語化することの重要性が企業視点で語られる中で、逆に「ひとりの人間であるアナタ」という視点から書かれたこの本に発売前から興味がありました。 著者は「クラックアンドサイダー」というホームレスのために買い物するポップアップストアとオンラインストアをはじめたアントレプレナー。 この本は広告代理店で働いていた彼女がなぜそのような事業をは

    • 現代のグラフィックデザイナーには必要なのは職人性以上に論理性

      コミュニケーションデザインとは何かというワンテーマについて、深い深い考察がまとめられた一冊。デザイン・ドリブン・イノベーションなんかもそうですが、イタリアの方のデザイン論は商業的ながらも、生活や歴史と密接に繋がるポイントを端的にまとめている気がします。 ビジュアルデザインを「ある意図に見られるためにデザインされたすべてのもの」と定義していることからはじまり、ただ歴史を俯瞰することが目的ではなく、実は能動的にデザインを消費することは他人の意図を無意識に受け入れることにも近い、

      • ジョブズの話を読みながら、自分の留学時代にお世話になった方を思い出す

        スティーブ・ジョブズが亡くなったあとにでた、彼の追悼本的な中でもちょっと異色だった彼がよく通っていた鮨屋の大将の話。たしかにスティーブ・ジョブズが愛用した店ではあるようですが、シリコンバレーで鮨屋を営んだ男性の物語ですね。これ読みながらアメリカにいた頃にご縁があった鮨屋の大将を思い出しました。 留学時代、海外生活をはじめたけど日本食が恋しくなった時に、安く食べられる回転寿司店には助けられました。ポートランドの隣町のビーバートンには日系「マリンポリス」って店があり、自分も時々

        • ルールとは壊されるためにあり、ルールを壊すことがクリエイティブである、なんて日本だとなかなか理解されませんが・・

          多くの日本人は学生生活における校則を通じて、ルールとは例え納得いかなくても皆にあわせて守るものだ、と教育されています。選挙権が18歳まで引き下げられた今、突然高校を出た途端に「きみの一票で社会は変わる」と言われても、それまではルールを守ることだけを遵守されてきて、そこから急転換されてもついていけないのでは、と思うこともしばしば。 僕が留学していた頃、プログラミングを専攻していた友人が「ネットセキュリティーのクラスを受講していた時に、先生のパソコンにハッキングしてデータを引っ

        大流行の「ビジネス・パーパス」に一石を投じる視点

        • 現代のグラフィックデザイナーには必要なのは職人性以上に論理性

        • ジョブズの話を読みながら、自分の留学時代にお世話になった方を思い出す

        • ルールとは壊されるためにあり、ルールを壊すことがクリエイティブである、なんて日本だとなかなか理解されませんが・・

          お弁当屋さんの創業経験:僕が料理が好きになったわけ。

          留学生の頃、お弁当屋を経営していました。 夏休みの間限定で、バンドでギターを弾いていた友人と一緒に週3回日替わりメニューを事前に配布し、予約販売形式で販売。ちょうど夏休みに学食が閉まっている時期にあわせて、直接寮まで届ける宅配形式で営業してました。 友人がファイナンスの専門家だったのできちんと利益計算などをやってくれたおかげで、短期間ですがそれなりの収益をあげ、そのお金で念願のドラムセットを買いました。(それまでは電子ドラムでごまかしていたので。) そういえば・・この頃

          お弁当屋さんの創業経験:僕が料理が好きになったわけ。

          親の真似をしながら学ぶことからはじまる、脳・社会性・行動の秘密を解き明かす一冊

          人の脳の中には他人の行動を自分のことのように感じるミラーニューロンという要素がある。DNA発見と同じくらいの大発見といわれる、この仕組みを見つけた科学者の方の本。 学者の方が書いた脳科学の本なんですが、専門用語少なめユーモアたっぷりで読みやすい一冊でした。 といったこの教授の考えるミラーニューロン理論がきちんと、マーケティング戦略的に広告ビジネスに取り入れられてることは、ある種の脅威であり・・いかに潜在的に自分の決定を企業にコントロールされているのか、を知るエピソードでし

          親の真似をしながら学ぶことからはじまる、脳・社会性・行動の秘密を解き明かす一冊

          偏見に負けず報われるための努力をするための心の支えになる一冊

          スタンフォード大学のティナ・シーリングの著書「20歳のときに知っておきたかったこと」はアントレプレナーシップ教育における必読書のひとつです。 読んでみて、同様にこの「ハーバード 人の心をつかむ力 EDGE」も必須図書だと思いました。もしかしたら、アジア人である自分にとっては、差別や偏見という抗えない社会の仕組みのことも踏まえた、台湾からの移民であるファン教授のこちらの本のほうが響くものは多くありました。 当たり前ですが・・努力が報われないこともある、というのはとても残酷な

          偏見に負けず報われるための努力をするための心の支えになる一冊

          企業活動と社会を繋ぐ上で抑えておきたい幾つかの社会を定義する視点が詰まった本

          『社会学者・宮台真司と経営学者・野田智義が、大学院大学至善館で経営学修士課程の国際色豊かな社会人学生に行った講義を初書籍化』という解説と、本のデザインから固くて重たい本かと思って怯んでいたのですが、尊敬される研究者さんがお薦めの本に挙げていたので読んでみました。 結論としては、読んですっごく良かった本でした!ネットコミュニティ型の人間関係や社会構築の負の面についての指摘や、国民国家と戦争の関係性の話なんかは、これからの自分が世の中を見る上で新しい眼鏡を、この本から手に入れる

          企業活動と社会を繋ぐ上で抑えておきたい幾つかの社会を定義する視点が詰まった本

          学びを捨てて、また学んで、捨てる・・・ってどういうこと?

          名著GIVE&TAKEの著者、待望の3作目。 最近よく聞くアンラーン的なアプローチを深め、学びを「知識をリセットし進化させるための必要性」としている所に共感。自身のリサーチと数々の興味深い事例とセットで、新しいアイデアを論理的かつ楽しく解説されている読み終えるのがもったいなく感じるほどの良書でした。 というフレーズが本の中にあります。 デザイナーは職業柄「自分のみつけた定義を研ぎ澄ましつつも間違っていれば壊す」を日々の仕事でやっています。実は、これが流動的な時代における

          学びを捨てて、また学んで、捨てる・・・ってどういうこと?

          多様性ある社会とは混乱や複雑を受け入れる社会:共感とは何なのか?

          ブレイディみかこさんの本は鴻上尚史さんとの対談きっかけで読むようになりました。 冒頭でも本人がふれているように、エンパシーを「他人の靴を履く」と表現するのは英語の慣用句なんですけど、彼女の言葉みたいにちょっと間違って伝わってるんですかね。 共感が大事だよね、って言われる日本で最近よく聞くようになった「シンパシーとエンパシーは違うんですよ、英語では」って話の総括みたいな一冊。 面白くないわけじゃないけど、冒頭は心理学系の本からそのまま持ってきたような感じで・・そこから彼女

          多様性ある社会とは混乱や複雑を受け入れる社会:共感とは何なのか?

          生きることは選ぶこと:よりよい選択肢のたまに知っておくべきことのイロハ

          この本では意思決定をディベートの手法+αの観点から書いているのですが、その中で「悪魔の代弁人」という話が出てきます。ディベートなどで多数派に対してあえて批判や反論をする人、またその役割・・と定義づけされていますが、そういえばディベートのクラスを取っていた頃に、これを教えられました。 日本の大学ではメジャーではないのでしょうが、アメリカの大学ではディベートのクラスがあり、「尊厳死(留学していたオレゴン州は合法)は正しいか?」というようなヘビーなテーマについて、まずは賛成の立場

          生きることは選ぶこと:よりよい選択肢のたまに知っておくべきことのイロハ

          『オデッサの階段』の続編希望!

          ニコライ・バーグマン氏を知ったのは、たしか「オデッサの階段」というテレビ番組でした。 調べてみたら2012年の放送だから、もう10年前。全21回放送だったのですが、ニコライ氏の他にも佐藤オオキ氏、菊地成孔氏、柳家三三氏、隈研吾氏、狐野扶実子氏、武田双雲氏、松岡正剛氏といった早々たる顔ぶれのクリエイターが揃い、客観的視点からクリエイティブの源泉をまとめていく内容でした。映像や音楽も秀逸で、人物にフォーカスするのではなく創造性にフォーカスするドキュメンタリーという意味でも、最高

          『オデッサの階段』の続編希望!

          学ぶことで幸運を引き寄せていく方法

          僕自身はこれまでの人生を振り返ると、わりと「運がいい」ほうだと思っています。たしかに大変なことや、苦難に巻き込まれたこともありますが、結果いまの立ち位置から人生を見返すと、あまり大きな後悔のようなものはありません。 この本は早稲田MBAの杉浦教授が書かれたんですが、 といった内容が別の早稲田MBAを紹介する著書で書かれていたのが印象的で、こちらの本も読んでみました。 大きく杉浦の教授をまとめると、こちらのような図表になります。 たしかにこうやって整理されると、宿命や偶

          学ぶことで幸運を引き寄せていく方法

          コラボレーションの力が孤高の天才をしのぐ時

          個々の天才が発明をするのではなく、グループで考えることでイノベーションは起きるということを飛行機、BMX、指輪物語などなどの豊かな事例とともにまとめた本。 理論の部分もかなりしっかりしているので、いい本なのですが邦題の「凡才の手段〜」って表現で損をしている気もします。(原題はGroup Genius : The Creative Power of Collaboration) グループでの創造をオーケストラよりもジャズ、作り込まれた芝居より即興劇に例えているように、アント

          コラボレーションの力が孤高の天才をしのぐ時

          社会運動とは何かが中高生でもわかる本:大人が読むともっと人に優しくなれます

          海外で暮らすことで得られるものは「言葉」以上に「もうひとつの異なる常識のフォーマット」です。日本の中にずっといると「当たり前」と「普通」の呪縛から抜け出すことが難しいのですが、海外で生活をすると「あなたの当たり前は世間の異常(逆もまた然り)」を日常的に体験できることで、大きく自分の根底が揺さぶられます。 この本は、デモをはじめとする政治活動や社会運動がなぜ必要なのか、を中学生にわかるように書かれた内容。社会運動を「わがまま」という言葉に置き換えた上で、難しい言葉を使うことな

          社会運動とは何かが中高生でもわかる本:大人が読むともっと人に優しくなれます

          モノの大衆化によって生まれた現代の消費文化は思いのほか陳腐な世界をつくった:そんな視点でラグジュアリーを見直す

          ビジネスシーンでは「ラグジュアリー」という単語は、漠然としたイメージで語られているような感があります。それをきちんと再定義しなおし、さらには時代の流れを整理し、これからの方向性を指し示しているという意味で、この本の試みはとてもユニークだと思います。 たしかにこの本が指摘しているように、そもそも王族や貴族しか出来なかったような生活を産業革命によって多くの人が出来るようになった「大衆化」が実現したことに価値はあります。しかし、その結果たどり着いた消費文化には思ったほどの幸せがな

          モノの大衆化によって生まれた現代の消費文化は思いのほか陳腐な世界をつくった:そんな視点でラグジュアリーを見直す