現代のグラフィックデザイナーには必要なのは職人性以上に論理性
コミュニケーションデザインとは何かというワンテーマについて、深い深い考察がまとめられた一冊。デザイン・ドリブン・イノベーションなんかもそうですが、イタリアの方のデザイン論は商業的ながらも、生活や歴史と密接に繋がるポイントを端的にまとめている気がします。
ビジュアルデザインを「ある意図に見られるためにデザインされたすべてのもの」と定義していることからはじまり、ただ歴史を俯瞰することが目的ではなく、実は能動的にデザインを消費することは他人の意図を無意識に受け入れることにも近い、という点に警鐘を鳴らしている点がこの本の面白さです。
特に現代の子どもは生まれるとすぐスマホがある環境で育ち、情報は気がつけば習得できるようになるもの、と考えられていますが・・たしかに著者がいうように、情報の清濁混合になっている状況で、子どもの自己判断に委ねることが全て正しい選択なのかは疑問を感じます。(このテーマについては『スマホ脳』のほうが詳しく解説がされていますが。)
といった鋭い観察眼に基づいた考察が多い本ですが、特に
という部分はともすると職人的=良いとされるグラフィックデザイナーの業界についての、警鐘に思えました。表層的なデザインサンプルに簡単に接することができる時代だからこそ、その後ろにある理論や考え方への研究の大事さを改めて認識させてくれる本でした。
難を言えば・・原版を読んでないのでわからないのですが、図版と説明の位置がバラバラで読んでいると何度も頁をめくりなおす手間が出ることが、ちょっと残念。(コミュニケーションについての著作なので。)
ビジュアルデザイン論−グーテンベルクからSNSまで(リッカルド・ファルチネッリ、2021年、クロスメディアパブリック)
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