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モノの大衆化によって生まれた現代の消費文化は思いのほか陳腐な世界をつくった:そんな視点でラグジュアリーを見直す

ビジネスシーンでは「ラグジュアリー」という単語は、漠然としたイメージで語られているような感があります。それをきちんと再定義しなおし、さらには時代の流れを整理し、これからの方向性を指し示しているという意味で、この本の試みはとてもユニークだと思います。

たしかにこの本が指摘しているように、そもそも王族や貴族しか出来なかったような生活を産業革命によって多くの人が出来るようになった「大衆化」が実現したことに価値はあります。しかし、その結果たどり着いた消費文化には思ったほどの幸せがなかった、という視点は、今後日本でのブランディングデザインでふまえておくべき点だと思います。

プレミアム:美/心地よさや安らかな喜び
ラグジュアリー:崇高/驚き、衝撃、思い込みを覆される、想像力を刺激される、それによって高揚感や歓喜をおぼえる

と定義した上で、

美は計算してつくりあげることができるが
崇高はそれを感じる人の想像力も必要とするのでより冒険的である

とする解釈は、ただのブランドとラグジュアリーブランドの差を端的に言い表していると思います。

その他にも

ハイスペックなモノをもつだけなら地位や資格が不要になり
ラグジュアリーの大衆化が進み、それはたんなるスペック競争に陥った
だからこそ「ストーリーが重要だ」「ストーリーは飽きられる」という論争が
会議室で巻き起こることになる。
もしかしたら、これからの時代に必要なのは暗黙知的な「マナーや品位」ではないだろうか?

といった提案や

ラグジュアリーであるには歴史を感じさせることが大事
歴史の長さではなく、長い時間をかけて評価されてきた遺産と
繋がっていることが大事

といった見解など、読みながら付箋だらけになってしまった本でした。

余談ですが「ダンディズムとはなにか?」の解説のところでは、昔の滝藤さんのドラマを思い出すものがありました(笑)


新ラグジュアリー 文化が生み出す経済 10の講義(安西洋之・中野香織、2022年、クロスメディアパブリッシング)

【本日の朝食】

スペイン風オープンサンド(生ハム、オムレツ、パプリカ、オリーブ、クリームチーズ)にて。

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