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よもぎのたからもの

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ぼくをかたちづくる、スキあふれちゃうnoteをあつめました。人の宝箱はかんたんに見ちゃいけません。
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#エッセイ

日本酒をすきになったとき、くるおしいほどにきゅうっとした

 日本酒をのんだいつかのとき、間のある風味の心地よさに思わず言葉を呑み込んだ。声をあげてはいけないと思った。  この風味が頭のてっぺんからつま先まで抜かりなく行き渡るように、ゆっくりと鼻から息を吸って、つま先まで滑り込むのをしずかに待った。 𓈒.𓈒.𓈒.𓈒  日本酒ソムリエ検定 sake diplomaの資格を取得してから半年以上がたった。  試験がおわった頃から、日本酒と過ごした日々のことを綴り、たくさんの音を閉じこめた海辺の貝殻のようにその想いをぎゅうっと抱きしめてい

私はわたしになって

書きたいことはたくさんあるはずなのに、言葉にするとなんだかうそに思えてしまう。 この頭のなかをぜんぶそのまま文字に起こせたらいいのにと思えば思うほど、指先をすり抜けて液晶画面に浮かんだときにはもう、くるくると草原を走り回っていた裸のあの子たちはいつの間にかドレスアップしてしまっている。 温度のある言葉がすきだ、と思う。 温度のある言葉を使いたい、と思う。 昔から江國香織さんの編み出す言葉がそれはそれは大変に好みで仕方なくて、そのおおきな理由のひとつに「漢字とひらがなの

ゴールは私の手の中に

締め切りがなければ、夢を叶えることができないのだとしたら、世の中には夢を叶えることのできない人が多いだろう。 だけど、その締め切りという名のチャンスは、決して一度きりしか訪れないわけではなく、自分が自分自身で諦めるまでは、何度だって訪れる。 ゴールテープが夢の締め切りだとする。 でもそのゴールテープは、新たな夢へのスタートラインでもある。 夢を追い続ける人生。 ゴールテープを切っても、まだ続くのが人生なのだとしたら、夢だってなんどもカタチを変えて、私たちの人生の中でずっと続

君が紡ぐ物語

「ねぇ、おかあさん。め、つぶって?」 ちびがわくわく顔でそう言った。言われるままに目を閉じた数秒後、手のひらに温かいものと冷たいものが同時に触れた。 今日は何が手のひらに載せられているのだろう。 太陽の光を瞼の裏で感じながら、こちらの心もわくわくしている。 「いいよ!」 弾んだ声を合図に目を開く。この瞬間が、私はとても好きだ。 * 我が家のちびは、外が好きだ。お日さまの光と風を浴びて育ったような子どもで、玄関を開けて外に出るとき、いつも足取りが弾んでいる。カエルの

¥200

脱・丁寧な暮らし風

大学4年生の夏休み、私は1カ月間、ホームステイをした。 私が住んでいた家から車でわずか20分の所にある、母方の祖父母の家がホームステイ先だ。 当時、私は大学3年生のうちに就職先が決まり、大変不規則な生活を送っていた。昼夜逆転する体内時計。それを正常に戻すために全く寝ない日を設ける。そんな日々を定期的に繰り返し、気付けば人生最後の夏休みが目前に迫っていた。(社会人にも夏休みはあるけど、学生の夏休みは特別だからね。) 「このままではいかん・・・!私の時間を取り戻さねば・・・!

雑記  すきなもの

わたしはオタクになり得ないタイプの人間だ。 すごく好きなものに対する「好き」を爆発させられないタイプ。 例えば、好きなアーティスト。 そのアーティストが発売してきた曲は、シングル、表題曲だけじゃなく、アルバム収録曲のいわゆる「マイナーソング」までほとんど知っている。CDが出たら必ず買うし、配信されたらitunesで購入してダウンロードする。 SNSでは、そのアーティスト関連のアカウントをフォローして、何となく情報を追い、どこかの番組に出ていたら録画までするかは別として、チェッ

人肌依存症の行方

“人肌恋しさ”でいったら、わたしの右に出る者はまずいないと思っている。 「好きな人とふれあうことが好き」という生理的欲求にも近い思いは、大なり小なり多くの人が持ち合わせていることだろう。 しかしながらわたしのそれは、彼らの健全なものと並べるのが申し訳ないほどに途方もなく大きく、笑えないくらい深刻で、日常生活にも支障をきたしてやまないレベル。 「ふれあうことが好き♡」というよりも「ふれていないといよいよヤバくなる」と表したほうが、おそらく正しい。 ひとりの夜は、ベッドに入

深夜ラジオと出会った話

ラジオを聞くのが好きだ。夜中にイヤホンで一人で聴くのも良いし、カーラジオから垂れ流しながら長距離を運転するのも良い。最近だとネットラジオをTwitterなんかで実況しながら聴くのもとても面白い。 私がラジオと出会ったのは、中学2年生の頃だった。年末の忘年会で父親が景品で貰って来たポータブルラジオを譲り受けたことがきっかけだったと思う。 それまではラジオの印象といえば、家族で車に乗って出かける際にカーステレオから流れる『日高晤郎ショー』という番組だった。この『日高晤郎ショー

名前のない感情を書く理由#わたしの執筆スタンス

最初に物語を書き始めたのは、確か小学生の時だった。でも、何か表現したいことがあってとか将来作家になりたくてとかでもないし、頭に物語が溢れてくるような天才でもなかった。 ただ、自分が人よりもちょっとだけ書くことが得意なことは知っていたから、その得意分野で誰かに褒められたかったからだ。 正直、物語の内容なんてどうでもよかった。ただ、上手だねぇとかすごいじゃん!って褒められたいがために書いていた。だから、あの頃書いた物語の内容は覚えてないし、書いてて楽しかったかって聞かれると正直

その敏感さがわたしは好きだよ

「あなたはとても敏感で繊細な心をもっています。心が疲れやすいと感じてしまうことがあるでしょう。休日には仲のいい友人と動物園や公園に出かけたりして心のリフレッシュをするのがいいでしょう。」 わたしの通っていた公立中学校では毎年4月にクレペリン検査を行なっていた。クレペリン検査とは、用紙いっぱいに羅列されている数字を制限時間内にひたすら足し算していくという地味かつ疲れる作業をすることで、その答案用紙からその人の性格を分析するテストだ。 その結果は、5月の家庭訪問の際に担任の先生か

ネットを通して何がしたかったんだっけ

僕らの初対面は言葉だ。 写真や絵、音を使うこともあるけれど 結局は言葉でのやり取りになる。 僕らは普通に生活しているだけでは関わることがないだろう。 もしかしたらどこかですれ違っているかもしれない。 それほど多くのSNSを使ってきたわけではないけれど、最近少し違和感を覚え始めた自分がいる。 今までこれほど多くの人に認知されることはなかったし、交流もなかった。 実際にお会いしましょうなんて尚更だ。 「ネットを通じて知り合った人」というカテゴリが僕の中にはある。 実名ではな

サブスク解禁に寄せて。aikoの名曲13選を恋愛シーン別に全力で推してみた

2020年2月26日。通算39作目のシングル『青空』の発売日である昨日、全414曲ものaikoの楽曲がサブスクリプションで解禁された。 サブスクの常であるのかもしれないけれど、現在進行形のガチファンというよりも、昔よく聴いていたという人や、なんとなく好きな人の方が、より反応が大きかったように感じた。インスタグラムやツイッターのタイムラインが、続々とaikoで埋まる。 こんなにも多くの人の心にaikoの楽曲が根付いていたのだ。その圧倒的な知名度と存在感に、わたしは胸が熱くな

わたしの愛は安くない あなたのスキは狂おしいほど意味があって

わたしの人生はきっと生まれて来る前から神さまのもとでプログラミングされているのだと思うときがある。「偶然」は既に仕組まれた「当然」で、予定不和なのも神さまから見たら予定調和なのだ。 だから、わたしが今まで誰と出会い、これからどんな人たちとの偶然の出会いを重ねていくのかもきっと、神さまは知っている。 今すれ違った名前も知らない誰かのことでさえも、細かいプログラムの中に組み入れられているような気さえする。 激動の1年だった。去年の今頃、諦めきれない進路の為に公務員試験浪人を決め

あの日ぼくが見た景色は。 noハン会レポート

12月8日に行われたnoハン会2ndのレポートを書こうと思っていろいろ考えていたけれど、すでに投稿されているレポたちを読んでいるうちに胸がいっぱいになってしまって、なかなか書けずにいた。 ぼくはまだまだ日曜日の余韻の中にいて、月曜日に戻った現実のなかで、まだ足もとがふわふわしている。 もう木曜日なのに。 ずっと会いたかった人たちに、会えた。 現実に話ができるなんて、当初は想像もできなかったし、思ってもいなかった。 それが叶った今、それじゃあこれから何を目的にnoteを続けて