漫画みたいな話。(考察編)

〜前回の話〜

漫画みたいな話。(前編)
漫画みたいな話。(中編)

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あまりに現実離れしたこの昔話にはまだ続きがある。前回の出来事から丁度一年後に我々はこの同じ店に行くのだが、その話の前にこの2010年の時点での考察記事があるので、そちらを先に読んでほしい。

ただ、この考察記事だが、次回の話を読む際には一切忘れてしまった方が良い。こんな考察などなんのあてにもならない事になってしまうので。


------2010年05月31日(月)の記事------

前回、前々回と、にわかには信じがたいこれまでの話。 
僕が伝えた事は偽り無い事実ではあるけども、しかし彼らの話した事までが全て事実かどうかはわからない。

そこで、いくつかの仮説を立ててみた。 
まず、考えられる一つの仮説はこちら。 

【ケース1】 
『彼らの話は全て事実で、全ての現象も"手紙の主"(王妃である女性は「自分の守護霊ではないかと言っていた。」)の仕業説』 

たしかに彼らの言葉には嘘を言っているような感じはしなかった。 
むしろ、なんというか、もう完全にそうだと信じきった様子ですらある。 

この人たちの人格を尊重するならば、一番信じてあげたい説であるが、しかし、疑わしき言動がいくつかあった。 

申し訳ないが、僕は、この説は無いような気がする。 


【ケース2】 
『マジシャン説』 


まず、僕らが降ってくるコインやビー玉を目にしたことは事実である。 
それだけはどうしようも否定できない。 

しかし、そこにトリックが無いとは言い切れない。 
世の中には、不可能と思えるマジックをする手品師や、その技術が存在することは承知の事実。 

今回の現象も、彼らが持つ持ちネタのひとつであるという事も考えられるわけだ。 

正直、あまりに論理的すぎて、面白味のない仮説であるが、彼らが確信犯だとすると、自分たちの都合のいいように話を組み立てることが可能なのである。 

ただ、そうなると何故彼らはこのような事をするのか目的が分からなくなってくるのである。そこで、いくつか考えられる目的を予測してみる。

[A] もしかすると、当初はただの客寄せで考えついたネタや、お客さんを楽しませるためにやっていたものだったが、次第に話が大きくなりすぎて、後に引けなくなってしまった。 
おかげで、気味悪がられたり、この話をすると嫌がられたりするので、僕らが来るその日までこのマジックは封印され、どうか平穏に暮らそうとしていた。 

[B] 宗教を始めようと考え、信じる人が来るのを待っている。 
そのため、いかなる隙も見せまいと前世の話をあそこまで作り込んでいる。 

[C] もう一種のエンターテイメント。僕らのようなお客さんが来る度に同じようなくだりの展開のショーをやっている。 
そう考えた場合、僕らがまるでドラクエの勇者気分で謎解きを楽しめた事や、ストーリーの展開方法や攻略難易度の高さなどの徹底ぶりは尊敬の域。会話を一つでも間違ったら不思議現象へたどり着けそうにない緊張感は、自分たちが漫画ハンターハンターの登場人物になったようにすら錯覚した。

など、上記のようなもの以外にも上げればキリが無いほど、様々な考えが上げられる。 

ただ、どちらにせよ、これらの仮説はどうも夢がない。 
なので、僕は全てが嘘で全てがトリックという、この仮説よりも下記の説を支持したい。


【ケース3】 
『同時に起こった超科学や超心理学の重複、そして王妃の女性多重人格説』 

まず、この説について説明する前にポルターガイストの発生要因として多く上げられる理由を書かねばならない。 

ちなみに、ポルターガイスト現象とは発生理由の分からないラップ音(人がいないはずの場所で、物を叩く音や、手足の間接をパキッと鳴らしたような異音が頻繁に多発すること)や、物体の移動、空中浮遊などが起きる現象である。 

さて、このポルターガイスト現象の原因を、多くの人が心霊現象のひとつだと思っているかもしれないが、実はそうではない。 

少し調べてみれば分かるのだが、ポルターガイスト現象が起こる時は必ず中心となる人物がいることがあげられている。 
その中心人物のほとんどが、思春期の少年少女、特に少女がいる家庭に多いと言われている。 
また、その少女達は、家庭問題や、精神的問題を抱えていたりすることがあり、その問題が解決するとピタリと現象は収まるのである。 

これは、過剰なストレスやリビドー(性衝動)が引き金で、過度に脳が刺激され起こる、いわば超能力の一種だと考えられているのだ。(ただ、超能力ではなく、人目を盗んで物を投げたり、体の関節を鳴らしたり、親の気を引こうとする子も多くいる。) 

しかし、あのレストランには思春期の少年少女どころか、おもいっきり酸いも甘いも噛み締めた経験豊富そうな男女しかいなかった。 
多感な年頃はとうに過ぎているのに、ポルターガイストは考えられるのだろうか? 

答えはYESだ。 
たしかに、ポルターガイストは思春期の人間に多いと言うが、あくまで多いと言うだけで、実は更年期の女性にもその事例は多く存在する。 

(((大人の場合は、性的な問題とより密接な関係があると言われている。特に更年期の女性の中には、ポルターガイストの震源地となる人が多いようだ。更年期に入ると、思春期と同じように代謝機能が乱れるのである。事実、1900年代に活躍した物理霊媒師の大半は、更年期の女性である。最近の多くのケースは、ポルターガイスト現象が性的なフラストレーションの抑圧や心労と関係していることを示唆している))) 
『"ポルターガイストの謎"より出典』 

つまり、ビー玉やコインが降ってきた原因はあの王妃の女性の能力だという可能性が高い。 

それが意識的に出来る事なのか、無意識的に起きるものなのかは分からないが、そうなると、前世の話や手紙の話はどう説明するのかと思うだろう。 

やはり、それらもすべて王妃の女性の仕業だと推測出来る。 

そもそも疑わしかった事は、オルスが「手紙の主から電話がかかってきた」という話をしたときだ。 
その電話は、そこに働く従業員の元にもかかってきたといっていたのだが、王妃の元にはかかってきた様子はなかったのだ。 

王妃 
「その声が、湯婆ば(宮崎駿監督のアニメ"千と千尋の神隠し"に登場するキャラクター)みたいな声だったんでしょ?」 

彼女がそうオルスに言っていたことからも、やはり電話は彼女にはかかってきていない。
いや、かかってくることは無いに違いない。 

そう、きっとそれは王妃が声色を変えて電話しているからに他ならないからだ。 

僕がそう判断したのは、 
もし、電話番号が1111111とか、おじさん自身の携帯番号からなど、ありえない番号からかかってきていたなら、そうは思わなかったのだが、非通知で電話がかかってくるという事自体がなんだか神秘さに欠けていて人為的な臭さがプンプンしたからだ。 
そこは、せめて公衆電話からとかにして欲しかった。 

そして、そのことをおじさん自身も気づいていると僕は思う。 

なぜなら、おじさんはこれまでの一連の出来事を楽しんでいる節があるのだ。 

僕らがいるときに届いた彼への手紙に関しても、「また、怒られちゃったよー」と、慣れているとは言え、どこか余裕があるような発言が数多く見られ、また、彼はキッチンから「ほぅほぅ」という声が聞こえたときも、王妃がキッチンにいるはずなのに、誰も居ないと言っているのは不自然でしかない。 

つまり、王妃は本気だが、彼は王妃に乗っかって楽しんでいるだけではなかろうか。 

ただ、普通ならここまで徹底されると、ウンザリしたっておかしくないはずである。 

そもそも、こんなことする王妃の意図がわからないし、王妃の様子には、なにか後ろめたさや、嘘を言っているような様子は伺えなかった。 
彼女は、自分で仕組んだ手紙や前世を疑いも無く、何者からか届いたものだと信じているように感じられたのだ。 

その疑問を解決するのが、王妃多重人格説である。 

どういうことかと言うと、"手紙の主"自体が、王妃の別人格であるという説だ。 

例えば、手紙の文字や電話も、その別人格によるものだとすれば、そのことを知らない王妃自身の主張には嘘が無くなるのだ。 

また、どの段階で人格が入れ替わるのかどうかは分からないが、"自動筆記"のように体の一部だけが別の人格に操作され、普通に会話をしながら、新たな手紙を生み出すことができる可能性も芽生えてくる。 

そして、オルスもこの人格の存在を知っていて、王妃本来の人格にはこのことを口止めしていると考えれば、王妃ではなく、もう一人の人格の気を損ねた場合、なにがあるかは分からないからこそ、僕らが最初に店で質問したときのあのキッチンに向けた怯えた表情の理由もうなずける。 

では、この別人格の目的はなんなのか? 
それは、女性の中に眠るもうひとつの人格"王妃"の眼を覚ますことではなかろうか。

と、これまでが僕の仮説である。 
仮説というのは結局憶測でしか無いので、全くなんの信憑性もない。
むしろ、信憑性の面で言えば僕自身のこの話自体がそもそも創作ではないかと疑うのが最も理にかなうのかもしれない。
ただ、僕は「これが自分が見てきた全てだ」と言う他ないし、今回、名前が出てきた友人たち全員が体験した出来事なので、僕以外の人たちに話を聞いてみるのもいいと思う。
そんなわけで、どうせ嘘だろうで終わるのも良いし、不思議だなーで終わるのもいいと思う。
個人的には、他にも別の仮説を立ててみたり、どうせなら色々な想像力を働かせて物事を見てみると面白いのではないかと思うのだけど。 

そんな感じで、長らくお付き合いどうもありがとう。 

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ちなみにこのお店の場所は北谷町はハンビータウン近くにあるクチョエコンラというお店である。
※2019年現在は閉店している。

みなさまもどうかその目でビー玉が降ってくる現象を確かめることが出来れば幸いだけど、おそらく簡単には見れないかもしれない。 
僕らも三時間近く粘って、彼らと仲良くなったからこそ、見れたのかと。

まずは、何が起きても怖がらないし、どんな話をされても嫌がらない、そして興味を持って聞いてくれる。そういう人でないと話すら控えると思われる。

これまでも、色々なお客さんや、近所の付き合いのあるお店の人々に、気味悪がられたり、話をするだけで怒る人が出てきたりしたようなので、割と平穏を求めている様子だった。 

とにかく、宙からビー玉やコインが降ってきたことは事実。 

その現象の謎や、それにまつわる他の話の真偽は自分で確かめてみてもらえたらと。
※二度目であるが、2019年現在は閉店しているため、もう確かめる事はできない。


ちなみに、この店での出来事の記憶が無くなるという話は、おそらく、みんな前世の話についていけなくなったからではないだろうかと思う。 

まず、ビー玉が飛んできたのは確かに見た。 

しかし、そのありえない現象を見た事を認めると、前世の書かれた手紙の話も認めざるを得なくなり、そうなると怖いとか面倒そうだからということしたのかもしれない。

あと、おもしろ半分で首をつっこむと不吉な事が起こると、おじさんとおばさんに言われてしまうと、なおさら見た覚えはないと言ったほうが都合が良いのだと思う。 

ただ、この二人の言った"不吉な事"というのも、聞けばそれほどたいしたことではなかった。 

店からの帰りに、普段いないはずの場所で警察が検問していたとか、高熱を出したとか、なんというか、言い方は悪いかもしれないが、こじつけのような話ばかりだったのだ。 

それでも、人間って何かにすがって信じたいもので、どんな事が起きても、なにかしら関連づけようとしてしまうんだから面白い。 

確かに嫌な時に嫌な事が重なれば、そりゃ不安になったり陰鬱になったりするのは分かるけど、でも、怪我でも病気でも検問でも、どんな不幸だろうが、幸運が起きようが、そんなものは起こるときには起こるし、解決するときには解決する。 

自分が不幸なときこそ、そういう事を意識しておくと新興宗教だのマルチ商法だのにつけ込まれる可能性は低くなるんじゃないかなと思う。 

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次回、後編。

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