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エッセイ | 私にとっての『書く』と言うこと

書き出しはこうだ。
「改まったタイトルにしてしまったが、難しい話でも暗い話でもない。本記事で50回目の投稿となるため、私にとって『書く』ということの位置付けをしておきたい」磯森照美いそもり あきよしはキーボードをたたく。以前から始めていたnoteに投稿する記事を書いているようだ。

磯森はnoteを知ってから始めのうちは人の書いた記事を読む専門だった。それは彼が人の話を聞くのが好きであったからだ。彼自身から話をすることもあるが、彼の周囲には話好きが多いため聞き役に回ることが多くなっている。知らず知らずのうちに根っからの聞き役になってしまったのだ。

しかし、磯森も話をするのは嫌いではない。むしろ好きな方だろう。人の記事を読み続けるうちに彼も「何かを書きたい」と思うようになっていた。その結果、50日間も投稿できるようになっているのだからやはり話をするのが好きなのだろう。

01

磯森は子供の頃から人間関係に恵まれていた。それは彼の性格のおかげだろう。困っている人には手を差し伸べ、彼が困っていれば周りが助ける。普通のことかもしれないが、彼にとってはそれがうれしかった。ただ、優しいだけと思われるのもしゃくだからか、冗談で悪態をつくこともあった。

磯森が友達と話をしている時、彼の友達は決まって笑顔で話を聞いている。それは磯森の話が面白いわけではないのだが、彼は自分の話の面白さが伝わっていると勘違いをして話し続けていた。

周りの友達がいつも笑顔で話を聞いてくれていた理由を磯森が知ったのは中学生の頃だった。いつものように磯森が話をしていると、彼の友達からあることを言われた。

「おまえは何を言っているか分からないな。話をしていても急に変なことを言うし。でも楽しそうに話しているから、こっちも楽しい」

それを聞いた磯森は驚いていた。自身の話が伝わっていなかったのだから驚くのも無理はない。それよりも驚くことは、周りの友達がそれを受け入れていたということだが、まだ彼はその恵まれた人間関係には気付いていない。

02

過去に思いをはせながら記事を書いていると、磯森は自身が「天然」と言われていたことを思い出した。最初のうちはいじられているだけだと思っていた彼だが、言われる回数が増え始めた頃に、その場の勢いで話すことをやめていた。

相手の話を聞いて、言葉を選びながら話す磯森は独特な間を持つ人になっていた。「天然」と言われることはなくなったが、磯森の口数も減っていった。

口数の減った磯森は、気が緩みある失敗をしてしまうことが増えていく。相手の話している言葉について勘違いして会話を進めることが増えたのだ。例えば、「話す」と「離す」のように、同じ読みでも違う意味の言葉に勘違いしたまま会話を進めるのだ。

何回かこの失敗が続いた時に、磯森は話すことが怖くなり、発言するまでにまた時間がかかるようになった。

03

磯森は話したいことが相手に伝わるようにしたいと考えるようになる。それが原因で自分から話し始めることが少なくなっているのに気付いていない。

「メールであれば何度でも読み返して修正できるけど、話すのは難しい。話すのも聞き返して修正できればいいのに」磯森はメールを書いている時によくこのような考え事をしている。

そう考えると、磯森は何かを書くことが好きなようだった。作文や小論文、メールでもなんでも書くことが好きだ。話すことが好きだった中学生の頃は書くことなんて嫌いだったが、高校生以降は好きになっていた。

磯森が考えていることがその場から流れて消えてしまわないように、伝えたいことがそこに残る。間違えていれば直すこともできる。

昔のようにその場の勢いで話したいことを書き、書き終えたら読み返す。読み返したときに意味が分からない文章があれば修正する。そうすることで磯森の話も伝わりやすくなる。

磯森にとってnoteはたまりにたまった話したい欲を放出できる場所なのだろう。彼の欲のままに文章を書き連ねるのだ。

たまに意味が分からない文章を書いていることがあるが、それは本当の磯森が出てしまっているだけなのだ。

04

「投稿するタイミングはいつにしようか。それよりも本当にこの記事を投稿するのか?」磯森照美はかれこれ2週間このことについて悩んでいる。noteの下書きにずっとこの記事があった。

他の下書き記事たちが投稿されていく中、この記事はいつまでたっても残っている。文体が変わり、文章が変わり、視点が変わり。文章をいじり続けている間で磯森自身も正解が分からなくなってきていた。

「とりあえず投稿してしまおう。見返して変だったら修正できるし」諦めたのか、腹をくくったのかは分からないが、磯森は50回目の投稿をした。


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