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バイトの面接に行って恥をかいた話

最近アルバイトをしていると、みんなの問題解決能力の高さにビビることが多い。同い年の人にもビビる。なぜみんな絶望せずに問題を解決できるのか、なぜそんなに思考を巡らせることができるのだろうか。もしかしてだが、日常的に絶望していないとでもいうのだろうか…

発端

私は就職する気がない(現在大学3年生)。なぜなら障害者だからだ。大学を卒業しても今のアルバイトを続けるつもりだ。

今やっているアルバイトはレストランだが店内にバーカウンターがあり、そこでの業務を担当することもある。

バーの業務を教えてくれた正社員の人がいた。その人は元バーテンダーの人で、イケメンで仕事ができてキックボクシングを小さい頃からやっていて筋肉がすごくてイケメンである。さらに言えば、イケメンである。そしてイケメンである。

俺はその人に憧れを抱くようになった。その社員さんに憧れたから、バーテンダーになりたいと漠然に考えるようになった。だが、バーに行ったことなど1度しかないし、そもそもそんな敷居の高い職業、心のハードルが高い。でも、時間が経つにつれてそのハードルが低くなってきた。憧れに近づきたい。その想いの方が強くなってきた。

ということで、バーのアルバイトを探して面接に行ってみようと思った。俺の特徴である「思い立ったら即行動」が発動した。

面接1

1つ目の面接は下町にあるバーだった。看板も店の名前もなく、どうやって開ければいいかもわからない扉だけが構えていた。どうにか開けて入ってみると、そこには黒いシャツとヴィヴィアンのネクタイをつけたバーテンダーと、常連客の2人がいた。そしてバーテンダーに向かいのお店の2階にオーナーがいることを聞き、そこへ向かった。どうやら三つの店を経営しているらしい。そこで俺はまず向かいの店に入り、階段の場所を教えてもらい、2階に辿り着いた。そこで俺は何を血迷ったのか、ノックをせずに戸を開けてしまった。


そこには愛人というイメージを具現化したかのような、絵に描いたかのような女性と、体格は細いがいくつもの修羅場を潜ったかのようなオーラを放つ男が、角のいやらしい雰囲気漂う場所でテレビか何かを見ていた。

俺は人生の終わりを心で感じた。やってしまった。その気持ちに支配されていたが、何とか面接に来たことを伝えると、少し間を置いて「1階の向かいの店で面接するからそこでちょっと待ってて〜」と言われた。そのオーナーの気の抜けた返事が、逆に怖かった。

俺は最初に入った店に戻ると、バーテンダーが「何か飲みます?コーラとかありますけど」と言ってくれた。俺は「あ、じゃあコーラでお願いします」と言った。そのバーテンダーに簡単な質問を受け、しばらくして先ほどの女性とオーナーが来た。ただものではないオーラである。俺は緊張せずにはいられなかった。そのオーナーがバーテンダーに口を開いた。

「何でコーラなの?」

「え、いや…」

「何でコーラなの?」

「…」

100億トンアルティメットギガパンチが炸裂すると確信した俺はすぐさま「いや!僕がコーラがいいと言ったんです!」と言った。するとオーナーは

「ダメじゃない?バーに来てるのに。」

「あ…すいません…」

ここでいきなりオーナーは笑顔になり、「まぁいいんだけど!笑 まぁいいんだけど!笑」と言った。

俺は1日に2度も死を覚悟した。こんなことは初めてだ。そのオーナーの満面の笑みが俺の中から恐怖心を呼び起こしたが、俺は笑うしかなかった。殺されないために。

俺は新しくメーカーズマークハイボールを作ってもらい、オーナーと飲みながら面接が始まった。面接はバーテンダーのあるべき姿や求められること、社会での立ち位置など、意外と普通の内容で終わった。やはり下町ということもあるので、価格設定は高めにしていること、わざと入りにくい扉にしていることである程度お客さんの質を選別していると言っていた。

面接が終わった後少し飲んでその店を後にした。俺は面接の途中に「まぁここで働いてる人たちはさ、ならずものが多いんだよ。」と言われたことを思い出していた。「こいつだって2年働いてるけど今20歳で高校も中退してるし。」とバーテンダーを指して言っていた。俺より年下だったことに驚きを隠せなかった。あまりにも格好良かったからだ。

オーナーは続けて言った。「でもそうゆう奴らがどうやったら大人の世界で渡り合っていけるのかって言ったらさ、やっぱこっち(頭)で勝負できない分、何か武器を身につけなきゃいけないんだよね。」

俺には武器なんてないし、身につけることなんてできるのだろうか。そのようなことを考えさせられ、1回目の面接は終わった。

面接2

2つ目は今やっているアルバイトの近くのバーだった。とても有名で、俺もインスタで見たことがあった。面接が始まると、まず企業や店の説明を受けた。それはよく覚えていない。

というか、この面接は恥をかいた場面の断片的な記憶しかない。

まずギムレットはどうやって作るか知ってますかと聞かれた。

俺はわからないと答えた。

次にマティーニはどうやって作るか知ってますかと聞かれた。

俺は、それもわからないと答えた。

シェイクは出来ますかと聞かれた。

俺は出来ないと答えた。

バーテンダーの仕事の優先順位を考えるクイズを出された。

俺は全く逆の順位で答えた。

これくらいだろうか。バーテンダーに必要な知識は全て知らなかった。「マティーニはカクテルの王様って呼ばれてるぐらい有名なんすよ。」とか、「きっとあなたが明日の生活も危ういっていう状況なら、もっと勉強してきたと思うんです。」とか、「あまり接客が好きじゃないんだと思う。」とか、とにかく空っぽな自分をつつかれるような、恥ずかしくて惨めな、社会を舐めている自分が露呈されて、懸命に自分を守っていた自尊心が剥がれ落ちたことで、面接中はずっと死にたかった。

中でも、「何で就職しないんすか?」という質問に、就職できるような能力もないからということを伝えようとしたが、喋っている途中で「バーテンダーなら能力が低くても出来る」と言っているような気がして、それを誤魔化すように支離滅裂なことを一生懸命喋った。やりたいことをやって生きていきたいみたいなことを喋った気がする。「ちょっと何言ってるかわからなかったんですけど笑」と言われてまた死にたくなったが、伝わってほしくないことが伝わってないことに安心した。

「自分が何をやりたいのかを明確にした方がいいと思います。それが音楽だってなんだっていいんですよ。ウチにもミュージシャン目指しながら働いてる人いっぱいいますし。(ボロボロすぎて何を言われたか覚えていない)〜で、社会をもっとよく知って、そこら辺をもっと明確にした方がいいと思います。」


音楽をやりたい、バーテンダーになりたい、と、言えなかった。

面接2が終わった後の帰り道

「何もわからないけどとりあえずやってみる」が俺の生き方だった。なぜなら考えることや想定することが出来ないからだ。普通の人は色々考えて、自分のなりたい職業を探して、それを1つずつ自分と照らし合わせて、今自分に足りないものを分析して、それを補って就職する。でも俺にはそんな計算、出来ない。憧れている人がバーテンダーだったから漠然とバーテンダーになりたいと思った。とりあえずその世界に入って1から教わりながらバーテンダーになれればいいと思っていた。そんな生き方を否定された気持ちになった。


好きであればそれについて知識を深めるでしょっていう気持ちもわかる。でも俺は好きなことを追求したらその好きなことが嫌いになる。音楽だってそうだ。プロのベーシストを目指したこともあったが、音楽理論を理解できなかったから辞めた。基礎練習が面倒くさくて辞めた。曲の中で鳴っているベースの音があまり聞こえないから「才能がない」と言い訳にして辞めた。生まれ持った頭の出来はどうすることもできないだろう。そんなことも言い訳だと、言われているような気がした。

バーテンダーを目指してもどうせまたすぐに諦めるのではないだろうか。そんなことを見透かされていたのだと思う。きっと適当に生きて大した理由もなくバーテンダーになろうと思ったのではないかと、あのオーナーには全てバレていたのだと思う。


1つ目のバイト先のオーナーの言葉を思い出した。

「まぁここで働いてる人たちはさ、ならずものが多いんだよ。」

「でもそうゆう奴らがどうやったら大人の世界で渡り合っていけるのかって言ったらさ、やっぱこっち(頭)で勝負できない分、何か武器を身につけなきゃいけないんだよね。」


あそこで働いている人たちは生きていくにはどうしても武器が必要だったから死に物狂いで身につけたのだろう。どのような背景があるのかは知らない。だが、間違いなく親のスネを主食にしている温室育ちの俺とは違う。

少なくとも、今適当に生きていけている俺とは違うのだ。

そんな環境に身を置く度胸もない自分が惨めで嫌気がさした。

現在

全てをさらけだすと、俺はバーテンダーになる人に「ならず者」というイメージを持っていた。オーナーに言われるずっと前からだ。多分ドラマやゲームなどでそのような背景を持つキャラクターがバーテンダーになるという物語を見てきたからだと思う。例えを出すなら「JUDGE EYES(キムタクが如く)」などだ。最初に話した憧れを持ったというバーを教えてくれた社員も、その他の元バーテンダーの社員も、真っ当な過去を持っている人は少なかった。

だから「俺もバーテンダーになれる」と思っていた自分が本当に許せない。

仕事が出来る事とその人の生い立ちや環境などは関係ない。ただ「ならず者」というイメージが自分にぴったりだと思い、安直に、愚直に、自分と重ねた。

皆が頑張ってる中で俺は全てから逃げた。逃げて逃げて何もない俺がいきなりバーテンダーになるなんておこがましい。しかもなれると思ってるところがまたバーテンダーを下に見ている。正社員はメリットがないと言って真実を知った気になって、正社員で頑張っている人を見下してた。優越感に浸ってた。何も無いのに。何も出来ないのに。

能力が低くて何も出来ないくせにプライドや自尊心は異常に高い。そのくせ自己否定に走って自傷行為に明け暮れる日々。そうやってうじうじしているのが気持ちいいのだろう。そして自傷行為が終われば何もしない。怠慢である。


こんなゴミを誰が必要としているのだろう?

社会に出るなら誰かに必要とされなければならないなんて決まりは無いが、誰もが必要とし合って、手を取り合って、助け合うことが、「社会で生きる」ということだと思っている。誰かが考えたサービスを受け取る人がいて、それにお金という対価を支払って利用する。そんな社会の歯車にどうしてこんなゴミが存在することが許される?

2つ目のバイト先のオーナーに「家賃3万のボロアパートに住んでどうやってこの檻から抜け出すかとか、どうやったら稼げるかを考えて生きていった方が多分人生楽しいと思う。」と言われた。

俺は散々惨めな気持ちになって隠しているものも全て顕になった。だからその言葉にモチベーションが湧いた。久しぶりに生きる気力が湧いてきた。

だが、その言葉をかけてくれたオーナーは帰国子女であり、22歳の時に日本に帰ってきたらしい。それまではアメリカのクラブに拠点を置き、ベーシストとして音楽にのめり込んでいたと言っていた。クラブミュージックというとパリピを思い浮かべるかもしれないが、本場のクラブはそのようなものだけじゃない。ジャズとかフュージョンとか、そうゆう本当に音楽理論を理解していないとできないようなプロの音楽的なクラブが多い。オーナーはそこの出身なのだ。

つまり難解な音楽理論を理解し、ベースプレイヤーとして活動し、英語も喋れる。おまけに起業して従業員1人あたりにに38万円ほどの給料を支払えるぐらいまでには成功している。俺が面接を受けたバーのことだ。

そんな天才に言われた言葉を、素直に受け止めてしまった。何もできないゴミなのに。

好きなことなら自然に知識を吸収しようとする
でも知識を理解できなかったから何も深められなかった
わからないという状態が我慢できなくて好きなことを嫌いになることで解放された
そして生きるモチベーションがなくなって全て諦めた。
それでも生きていかなければならなかったからとにかく行動力で補った。
とにかくやってみるという生き方しか出来なかった。
それも通用しないとわかった。
でも知識を身につけることはできない。

八方塞がりだ。

あとがき

こんにちは!ひっっっっっさしぶりの投稿です!笑

今回の記事、多分不快に思われた方がほとんどだと思うんですけど、本当にごめんなさい。でも気持ちを全部曝け出すところがここしかなくて🥲

僕、自分が障害者ってことに結構否定的なイメージを抱いてるんですけど、ADHDって結構武器が多いんです。ご存知でしたか?例えばクリエイティビティが高かったり、好きなことに対しての集中力が尋常じゃなく高かったり、リスクを感じにくかったりと、むしろ何かを極めたいと思うのならば最高の武器ですよね!

で!も!僕にはそれが無いんです!!泣泣
おかしくないですか!?ちゃんとADHDっていう診断を受けたのに!

確かに好きなことにも集中力がないというのはそれが本当に好きなことでは無いからなのでしょうけど、クリエイティビティとかないし!めちゃくちゃビビりだし!

って考えると、やっぱADHDにも度合いっていうのがあって、重度のADHDなら苦労するけどその分メリットとして考えられるところも強く出るのだと思います。僕は間違いなく軽度でしょうね笑。初期装備は何もなく、成長できないというハンデを背負った主人公、こんなつまらなそうな物語他にあるのでしょうか!笑

やっぱ身の丈にあった生き方しかできないってことですかね

では👋

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