見出し画像

#37 ガイジン体験

人物、バンド名等説明
・ テネシー州メンフィス
:ミシシッピ川に面したテネシー州第2の都市。19世紀に奴隷市が開かれた歴史を持ち、人口の約6割をアフリカ系アメリカ人が占める。
・ ミシシッピ州ルイスビル:ミシシッピ州中央に位置するミシシッピ州ウィンストン群の最大都市。人種差別の激しい土地でもある。
・ JUN: WARHEADのボーカル。
・ KKK:クー・クラックス・クラン。アメリカの白人至上主義秘密結社。主にアフリカ系アメリカ人、アジア人、ヒスパニック、ユダヤ人などの他の人種に対し異を唱え、カトリックや同性愛者の権利運動やフェミニズミに対しても反対する差別・排外主義の団体。
・ AC/DC:1973年にオーストラリアのシドニーで結成されたハードロックバンド。
・ ヴィーガン:生きていく上で極力、肉や魚介類、乳製品や蜂蜜などの動物性のものを食べない、身につけない、動物実験された製品を使用しないことによって、動物の権利を守る人々。人間の解放のためには、人間と同じく感情や苦痛を持つ家畜や実験動物など、人間の欲望のために生命を奪われる動物の解放が必須だという考え。
・ Dear Cops: BASTARDのアルバム「WIND OF PAIN」に収録。

#37 ガイジン体験

 テキサスが終わった後は、アメリカ南部の中心部に近いテネシー州メンフィスやミシシッピ州ルイスビルでのライブだ。初めて行くアメリカの地域だが、テネシーはTRAGEDYのビリーの地元だという。テキサス州オースティンから車で10時間ほどの場所だ。この辺の州は公共の場の飲酒にかなり厳しくすぐに逮捕されるようなので、車の中でも常に飲んでいるWARHEADのJUNは、隠して飲むように入念に注意されていた。それでも飲んでいたが。
 かなり田舎の牧歌的な雰囲気なのだが、映画などで知る限りKKKなどの白人至上主義が盛んな地域で、人種差別が如実な地域なのではないかという不安もあった。

 田舎ということもあって、メンフィスでの観客は100人いるかいないかぐらいの感じだ。会場は広めで、この人数でもかなりの動員だという。ルイスビルではもっと広い会場のオールエイジショーで、昼からやっているライブで観客も200人以上いたので、メンフィスの方が田舎のように思えた。
 TRAGEDYのアメリカでの観客動員数は凄まじい。どこでも300人は当たり前で、大きな街ではかなり広い会場でも超満員になる。どの街でもTRAGEDYが来ることを楽しみにしている観客がたくさんいて、オーガナイザーの扱いも前回来たアメリカツアーのときとは雲泥の差がある。
 メンバーが言っていたところでは、ツアーをやっていれば食うには困らない収入はあるとのことだった。しかし、基本的にオールエイジショーが多いTRAGEDYのライブは、入場料も安い。6~8ドルで、オールエイジショーではない場合には10ドル程度のときもあったと思うが、当時の日本円で千円前後というチケット代は破格だ。 
 後年だったと思うが、「CHAOS IN TEJAS」でもTRAGEDYが出演する日だけは入場料が安かった。TRAGEDYのアメリカでの影響力は大きく、聞くところによればハリウッド映画から主題歌のオファーがきて断ったこともあるという、超大物バンドといえる存在だ。

ここから先は

2,718字 / 1画像
この記事のみ ¥ 100

30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!