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#40アメリカ・イズ・タイアード

人物、バンド名等説明
・マディソン・スクエア・ガーデン
:ニューヨーク・マンハッタンにあるスポーツアリーナでプロレスの聖地。
・ビートニク:ビート・ジェネレーションという、第二次世界大戦後のアメリカ文学界で異彩を放ったグループや活動。この文学運動の思想などに影響を受けたライフスタイルの者たちをビートニクと呼ぶ。

#40アメリカ・イズ・タイアード

 ニューヨークCBGBでのライブを終え、次の土地は運転手であるベンの地元プロヴィデンスへ行く。プロレス好きな俺とJUNはどうしてもマディソン・スクエア・ガーデンに行きたくて、TRAGEDYの車に乗り、別行動で少しだけ観光した。
 そのときにTRAGEDYの車が故障してしまう。TRAGEDYはニューヨークのような大都会が嫌いなようで、どうやら車もへそを曲げたようだ。「それじゃ」とJUNとふたりでニューヨークの街を歩きながら土産なんぞを買っていたら、迷子になってしまった。モヒカンの日本人ふたりが、ニューヨークで迷子。少し焦ったが、何とか車にたどり着きことなきを得た。携帯電話も持っていないので、車が見つからなかったらどうなったことやら、考えるとギリギリだったようにも思う。

マディソン・スクエア・ガーデン前にて。JUNと俺

 プロヴィデンスは前回のツアーでも来ているし、宿泊先もベンの家ということで、勝手知ったる土地のような懐かしいな気分になる。
 ライブにはメタル系のバンドも出ていたのだが、楽屋に日本人が多いためか、SOUICH曰く、このバメタルンドに、ジョーク的な感じではあるが「このジャップはちゃんと演奏できるのかよ」などと馬鹿にしたように文句をブツブツ言われたらしい。
 それを知った俺たちは目にものを見せてやり、メタルバンドの連中はおとなしくなった。前回から何となく感じていたのことではあるが、ニューヨークより周辺の街の方が、差別的感覚が大きいように思える。ベンや一緒に出演するPUNKバンドにはそんなことはないが、一般的にアジア人を下に見ているように感じることも少なくない。
 ツアーをしていて「ジャップ」という侮蔑的表現の言葉が聞こえてくるのも、ニューヨーク周辺に多い気がする。まぁこれは俺の英語力が拙いために、感じ方がおかしいのかもしれないが、雰囲気というか感覚というか、肌で感じる空気が差別的であるように感じてしまうことが多い。
 確かこのプロヴィデンスのときに、兵士としてイラクか何かの戦争に行った人間が客でいて、SOUICHIが話したところによると、冗談っぽくではあるが「また戦争に行って撃ち殺したいぜ」というような発言をしていたという。
 これは個人的予測なので真実は違うかもしれないが、「アメリカが正義」という洗脳が一般的に浸透していて、顕著に現れるのが大都会に近い街なのかもしれない。まぁそれはどこの国でも同じく、知らないうちに国策が染み込んでいる人間は多いし、日本でも同じだと思っている。
 しかし全力で良いライブをやれば、終わった後に反応が変わるのもアメリカという国で、真剣にこちらを向いてくれるし、話を聞こうと耳を傾けてくれる。

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30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!