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京から旅へ/インド仏跡巡礼(26)ラージギル/王の因果②牢獄跡地

釈尊(ブッダ)とビンビサーラ王の、もう一つの因果な物語。

「王舎城の悲劇」と呼ばれる、この物語には王と釈尊(ブッダ)
の他に、新たに、三人の登場人物が出てくる。

ビンビサーラ王の息子、アジャータシャトル王子と釈尊(ブッダ)
の従兄で弟子のデーヴァダッタ、そしてヴァイデーヒ―王妃だ。

始まりは、アジャータシャトル王子の“出生の秘密”である。

ビンビサーラ王は、王妃との間に子供ができず悩んでいた。

そんな或る日、占師に相談すると、今、山中で修行中の仙人
が老衰で亡くなった後、彼は、生前の功徳のおかげで、今度
は、王子になって生れてくるだろうと、予言を受けた。

占いを信じ、王は仙人が亡くなるのを待つが、ピンピンで死ぬ
気配など全く無い。痺れを切らし、王は仙人を殺してしまう。

間もなく王妃は懐妊するが、占師によると、胎児は殺された仙人
の怨念を持っていて、この子は将来、王を殺すだろうと予言する。

王は堕胎も考えたが、釈尊(ブッダ)に止められ、王子は誕生する。

何も知らず王子は成長するが、その出生の秘密を釈尊(ブッダ)の
従兄で弟子のデーヴァダッタが王子に漏らし、悲劇となっていく。

デーヴァダッタは、仏教教団として拡大する、組織を管理する為に、
より厳しい戒律にするべきだと、釈尊(ブッダ)に進言をするのだが、
釈尊(ブッダ)は、「その必要は無い」と、多くの人前できつく断る。

釈尊(ブッダ)に受入れられず、恨みを抱いたデーヴァダッタは、
教団の乗っ取りを画策し、アジャータシャトル王子に近づく。

王子には、釈尊(ブッダ)を庇護するビンビサーラ王の存在を無く
する為に、出生の秘密を漏らして、王位の略奪をそそのかし、
自分は釈尊を暗殺して、教団のトップになる事を計画する。

デーヴァダッタによる、釈尊暗殺計画はことごとく失敗するが、
王子は王に反旗を翻し、勝利して、王を牢獄に幽閉してしまう。

食事を与えず、餓死するのを待つが、不思議に王は生き続ける。

ヴァイデーヒ―王妃が毎晩、自分の身体に蜂蜜を塗り、足飾りに
水を隠し、見張りの目を盗んで、王に与えていたからだ。

それを知った王子は怒り狂い、母も牢獄に閉じ込めてしまう。
やがて王は餓死して、この悲劇は、幕を閉じる。

そんな、牢獄の跡地が目の前にある。

約70メートル四方の低い、石塁が遺っているだけである。
草だけ生えた地面に、はりつくように、茶色い石が積まれている。

釈尊(ブッダ)に帰依し、仏教の発展に貢献した、名君と呼ばれた
ビンビサーラ王が此処で、非業の死を遂げたとは、思えないほど
アッケラカンとした、なんにもない場所である。


ビンビサーラ王の悲劇の元は、仙人を殺したことに、原因がある。
結果、仙人の恨みを持つ王子が生まれ、殺される可能性ができた。

そこにもう一つ、釈尊(ブッダ)と、恨みを抱くデーヴァダッタの因果が
絡み合い、王の悲劇が、現実となってしまう。

王が仙人を殺さねば、釈尊がデーヴァダッタの進言を断らなければ、
恨みは生れず、王の殺害と云う、「結果」も無かったかも知れない。

因果応報、全ての「結果」には、「原因」がある。とは云うが‥

将来、不幸な「結果」を招く、「原因」を思わず作るのが、人であり、
様々な因果が折り重なり、予想外の「結果」を生んでしまうのが、
人の世の常、と云うものであろう。

そして、「あぁ、あの時、こうすれば良かった」と、後悔するのが、
我が、凡夫の“凡夫たる、証し”と、云えなくもないが‥

インド仏跡巡礼(27)へ、続く
 
(2014年8月30日 記)

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