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京から旅へ/身延山「久遠寺」③思親閣(ししんかく)

久遠寺・奥の院「思親閣」がある、身延山の頂上までは、
ロープウェイに乗って、約7分で到着する。

“眺望絶景! 紅葉の身延山ロープウェイ”と云う、
ツアーの宣伝文句が、虚しい「言の葉」になり、寒々と散っている。
それ程、新聞広告と今回の紅葉は、ギャップがある。
が、
思えば、広告は白黒だし “この日” に来た、自分が悪いと、
また反省し、窓外にレンズも向けず、ボンヤリ揺れていく。

しかし、約7分後。そんなモヤモヤは一掃される。

標高1153mの展望台から見る、眺望は、とても素晴らしい。
山々を見渡す限りに広げて、大パノラマを展開。心が動く。

青空を背景に、富士も、くっきりと映しだされ、神々しい。

頭を雲の上に出し♪、四方の山を見降ろして♪、と、小学校で
歌ったまんまである。思わず “この日” に感謝し、合掌。

我ながら、ホンマにゲンキンなもんである。

            ◆ ◆ ◆

奥の院「思親閣」は、展望台から歩いて3分程の所にある。

日蓮上人が、故郷の千葉県小湊の両親を偲んで、山を登り、
その方向へ向かい空を拝し、追慕されたた地と云われてれてる。

今でも、下から登り、日の出を拝する人も多く、三門から
は徒歩で五十丁、約5.5km。約2時間半かかると聞く。

私も以前、お誘いを受けたが、事故で腰を痛めて断念した。
だが、この眺望を知ると、また、訪れたい、と気持ちが動きだす。

参道の石段を登り、金で「思親閣」と彫られた額の掛かった
門をくぐり、中へ入って、お参りをしようとした時‥

おもむろに、妻より、「はい、これ」っと、一枚の写真を渡された。

私の故郷の父と母が、仲良く写った、金婚式の写真である。
金屏風の前に正装で並び、花束を持つ、二人の笑顔が眩しい。

父の家の宗派は日蓮宗で、母は日蓮宗のお寺の娘であった。

私自身は、三男で家を出ていて、宗派の関係性は薄いが、
父や母にとっては、日蓮宗の本山を訪れるのは、嬉しい事
だろうと思い、写真立てからはずし、持ってきたと云う。

ありがとう。妻の気持ちに心から感謝し、遺影を目の前に、
両手でかざし、周りの景色を、亡き父と母に見てもらう。

左右にゆっくりと、繰り返し、パノラマ写真を撮る時のように、
両手を平行に動かし、心の中で、南無‥。 手を合わす。

思いがけず、良い追善供養ができた。と、深く、深く

“この日” に 感謝し、私は「思親閣」を後にした。

(2013年11月27日 記)

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