石井達也

雑誌、CD解説、ウェブなど、音楽についていろいろと書かせてもらっておりますライターです…

石井達也

雑誌、CD解説、ウェブなど、音楽についていろいろと書かせてもらっておりますライターです。そのときどきで感じたことをかるーくゆるーく書き散らかしてまいります。もし気に入っていただけましたなら、ご購入やサポート、フォローなどをよろしくお願いいたします。

最近の記事

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いまのエンタメ評論に思うこととこのブログの方向性

ここ何年か、映画でも音楽でも演劇でもスポーツでも、いわゆる評論と呼ばれる文章で興味をひくものに出合ったことがあるでしょうか? もし出合えたならばそれは読者にとって確実に有益なことです。その評論に賛同するか拒絶するかは関係なく、その評論によって視野がひろがり、感性が磨かれ、その対象に対して自身の考え方を自覚できたのなら、評論はあるべき役割をまっとうしたといえるでしょう。いい評論とは、その評者が自身の考えを述べるのが主目的とはならず、評者の考えをとおして読者の感性や知覚を刺激する

    • Ad-Colorsの舞台『Magic Squib』を観た

      Ad-Colorsの舞台「Magic Squib」を観た。舞台を観るのは数年ぶり。なんの予備知識もないこの舞台に足を運んだのは"なんとなくおもしろそうに思えた"からだ。 演者と観客との距離がかなり近く、演者の強いパワーを浴び、その圧にひたすらひっぱたかれる感覚。生の舞台の醍醐味を数年ぶりに思い出すが、今回はその演出といい、キャストの迫力といい、それがまた格別に感じられた。 物語は主に魔法という不可思議なものを介して、人間が希求する理想と、そこに手を伸ばせば伸ばすほどに入り込

      • 伊豆田洋之のエリック・カルメン誕生日ライヴ

        エリック・カルメンが亡くなってから早5ヶ月。SNSではこれまでたくさんのミュージシャンが哀悼の意を表し、彼の業績を讃え、悲しみに暮れていた。しかしながら自分は彼が亡くなったという実感をまだもてずにいる。訃報はただのニュースに過ぎない。最近ではとかくフェイクニュースなどというものもたくさん散らばっていて、真実が靄の中で見えにくくなっていたりする。彼の訃報もフェイクニュースのひとつなのではないか? 根も葉もないデマなのではないか? いまだにそんなことを考え、訃報を信用しきれないま

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        • 最新作『To Save A Child』からみるエリック・クラプトン

          テレビから流れてきたエリック・クラプトンの新曲「Prayer of a Child」は大きな衝撃だった。いまガザで起こっていることへの思いをストレートにあらわした歌詞。諦念さえ感じさせる曲のムード。エリックの不安感にみちたヴォーカル。それらが混ざり合って見える世界はあまりに痛切で、聴いていると辛くなってくる。 市井の民が無辜の血を流しているガザ。エリックはそこにいる子どもたちに思いを馳せる。あの子は生きているだろうか。はたして無事でいるのだろうか。 過酷な環境におかれた子ど

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        いまのエンタメ評論に思うこととこのブログの方向性

          Fairground Attraction in Japan, Beautiful Happening with Tears

          SNSで見るかぎり、今回の来日公演はその初日から絶賛されている。観た人はそれを表現するにふさわしい言葉が見つからず、"とにかく素晴らしかった"という一言で片付けてしまう、そんな書き込みばかりだ。それはきっと"筆舌に尽くしがたい"ということなのだろう。なにが素晴らしかったのか、といっても、なにもかもが素晴らしかったとしか答えられない。各人がどんな思いで彼らのステージを観て、どんな思いを巡らせているのか、それを想像しながら書き込みのひとつひとつを見るのは楽しいが、ほとんどの人が異

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          Allelujah! Welcome back Fairground Attraction!

          フェアーグラウンド・アトラクションの復活は寝耳に水だった。いまだに再結成するかどうかで話題になるオアシスやトーキング・ヘッズなどと違い、彼らの再結成の可能性を口にする者など誰もいなかった。もし彼らの再結成を望んだとしても、そういった情報は噂レベルでもあがってくることはなかったし、ソロに転じたエディ・リーダーの充実した活躍ぶりからして、フェアーグラウンド・アトラクションが再出発するなど想像すらできないことだった。まさか、再結成するなんてありえない、と。 それだけに、現実となっ

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          ジョン・オーツの自伝から推察するホール&オーツの関係性

          昨秋、ダリル・ホール&ジョン・オーツの関係が悪化していることがセンセーショナルに報道された。なんでも、デュオの権利を管理している合弁会社の株をジョンが独断で売却しようとしたことにダリルが激怒したことが発端とのことで、それ以降、2人の関係は泥沼化、お互いがコンビ解消を口にするようにまでなった。 彼らが人気絶頂だった1980年代にその音楽に親しんでいたファンにとって、今回の騒動はショッキングな報せであり、いたたまれない思いでいっぱいだろう。飛ぶ鳥を落とす勢いだった当時の2人は、

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          現代を映し出したニール・ヤングの感性

          大別して、ニール・ヤングというアーティストには繊細なシンガー・ソングライターの顔と、狂暴なロッカーの顔がある。そのときどきで変わる彼の顔を見るのもファンの楽しみのひとつだろうが、しかしときとしてそれがあまりにこちらの想像を超え、混乱させられることもしばしばある。ヤングのキャリアもすでに相当な年月を重ねているが、それほどのベテランでありながら保守的になることなく、まだまだ刺激的な作品を突きつけてくるのだからファンもうかうかできない。 最近のヤングは新曲作りよりも過去のマテリア

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          名画『ミスター・アーサー』とクリストファー・クロスの名曲

          映画『ミスター・アーサー』をみた。たしか30何年か前に劇場で一度みている映画なのだが、自分の記憶にある場面はダドリー・ムーアの入浴シーンだけ。いまとなっては、ストーリーも、登場人物も、はてはクリストファー・クロスのあの曲がどこでかかっていたのかさえまったく思い出せないほど印象が薄い映画だった。テーマ曲が大ヒットしたコメディ映画ということでかなり期待してみたものの、思っていたより笑えるシーンもなく、たいしておもしろくなかった、そんなふうに思った記憶が微かに残っている。 が、い

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          策士アル・ヤンコビックの自伝映画

          アル・ヤンコビックの自伝映画がつくられているらしいというニュースが伝わってきたときは興奮した。まさかあのヤンコビックが自伝映画をつくるとは……。いったいどんな映画をつくっているのだろうか? 映画制作の経緯はわからないが、これには興味津々、絶対観たい映画だ。 が、よく考えてみるとその興奮は少しずつ萎んでいった。それが日本で公開されるなんてことはまずないだろうし、仮に観るとしてもそれがソフト化されるのを待ち、手間をかけてアメリカから取り寄せ、スラングだらけであろう英語を英語字幕

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          ジェイムス・テイラーのライヴはすごかった

          これほど不安たっぷりで臨んだライヴというのもない。待ち望んでいたステージとはいえ、はたして最後まで楽しむことができるのだろうか。彼の歌すべてをしっかりと感じとることができるのだろうか。それはなんてことはない、個人的な理由によるものである。 この日のライヴに向けて、最近はずっと、彼の曲を聴くようにしていた。朝昼晩と、まとまった時間があればひたすら彼の歌に耳を傾けた。ところが、忌々しいことに、彼の歌を10分も聴くと必ず睡魔がやってくる。それも十中八九などという確率ではない。それ

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          エリック・カルメンにとって「All By Myself」とはなんであったのか?

          エリック・カルメンが亡くなってから、SNSにあふれるファンのつぶやきをひたすら追いかけている。つぶやきのひとつひとつにあるさびしさと感謝の数々にはそれぞれのファンの思い出と温もりがあって、それらの言葉からはさまざまな思いが去来する。また、自覚することがないまま記憶に刻まれていたメロディが彼の訃報をきっかけにそっと思い出され、そこで初めてエリックという存在を知り、彼を偲んでいる人もいる。エリックのファンを自認しているわけでもない、かつては洋楽をラジオなどで楽しんでいたものの、い

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          エリック・カルメンの思い出

          エリック・カルメンが亡くなってしまった。 これまで、彼が作り、うたってきた音楽に熱狂してきた身として、この報には言葉がつまる。なんともやるせなく、ただたださびしく、いたたまれない感情に覆いつくされる。まだまだ74歳。人生も、音楽も、退くには早すぎる。 最近はその近況を追っておらず、いまの彼がどんな環境で、なにをやっているのかまったくわかっていなかった。十年ほど前、かなりのインターバルを経て、久しぶりの新曲をリリースしたけれども、それ以来、音楽活動のニュースがぱったりと途絶え

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          シェイン・マガウアンに最も近づけた日

          1992年だったか93年だったか、冬にロンドンに行ったときのこと。当時はインターネットなどもなく、旅行前に知ることができる情報はとても限られていて、ライヴやイベントの情報は現地に着いて初めて知ることが多かった。ロンドンに着くと現地の情報誌“タイム・アウト”を買うことは渡英時のルーティンのようなものになっていたが、そのときタイム・アウトを調べていると、ロンドンでシェイン・マガウアンのライヴがあるという文字が目に入った。この情報には心躍った。  ポーグスは大好きなバンドだった。

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          ギルバート・オサリバン 2023年来日公演で感じた熱い現役感

           アーティストの多くは加齢とともに新作リリースのペースが落ちてくる。とりわけ70代ともなると、新曲だけのアルバムリリースは十数年ぶりだとか、或いはそれ以上のインターバルを要することも多く、新曲をつくることを辞めてしまうアーティストも少なくない。ベテランアーティストの活動の軸は、過去のヒット曲で構成されたライヴが主となり、創作は途絶える場合が多い。  そんななか、今年77歳を迎えるギルバート・オサリバンは、精力的なライヴ活動に加え、今もなお、コンスタントなアルバムリリースを続

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          スチュワート・コープランドが語るポリスの遺産

           スチュワート・コープランドが自身の人生を見つめ、過去と現在を行き来するプロジェクトに勤しんでいる。年内に発表されるという自伝本の執筆、ポリス時代の映像をまとめたアーカイヴ作品の製作。そしてその映像作品のための、新解釈となるポリス楽曲のリメイク・アルバムのレコーディングと、非常に精力的に、自身の過去を振り返っている。すでにコープランドは2009年に自伝本を発表しているが、今回は彼自身の日記を基にした、ポリスの活動初期をクローズアップしたものだという。また、映像作品についても、

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