現代を映し出したニール・ヤングの感性
大別して、ニール・ヤングというアーティストには繊細なシンガー・ソングライターの顔と、狂暴なロッカーの顔がある。そのときどきで変わる彼の顔を見るのもファンの楽しみのひとつだろうが、しかしときとしてそれがあまりにこちらの想像を超え、混乱させられることもしばしばある。ヤングのキャリアもすでに相当な年月を重ねているが、それほどのベテランでありながら保守的になることなく、まだまだ刺激的な作品を突きつけてくるのだからファンもうかうかできない。
最近のヤングは新曲作りよりも過去のマテリアルの発掘と再録音に注力しているようだ。過去の未発表ライヴ音源については前々からいろいろな年代のものをコンスタントにリリースしているが、まとまったかたちでの未発表スタジオ音源の発表となると2020年の『Archives Vol.Ⅱ』から本格化している。『Homegrown』『Chrome Dreams』や『Toast』といった、いわゆる"幻のアルバム"の発掘は噂の絶えない謎だらけの伝説の検証ともなるもので、狂喜したファンも少なくないだろう。アルバム単位での音源発掘は一段落したと思われるが、曲単位でいうならまだまだ膨大なマテリアルがあるはずで、それらが陽の目をみるまでしばらくは楽しみが続いていくことだろう。
ここで取り上げるのはそうした充実したアーカイヴ・プロジェクトのもうひとつの流れとなっている既発作品の再録音だ。2023年の『Before and After』での弾き語り再録と、それに続きリリースされた、『Ragged Glory』の再現(意味合いは再録?)ライヴを収めた『Fu##in' Up』なるアルバムは個人的に大きな驚きだった。過去を振り返るヤングの活動は相変わらず精力的だが、この2作は一連のアーカイヴ・プロジェクトのなかでも強い印象を残すアルバムであった。
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