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Amazonプライムビデオぶらり旅でハングリー精神を取り戻せ

映像ストーリーミングサービスの登場によって人はハングリー精神を失った。
映画館やレンタルショップに通わずともいつも最高の映画がスマートフォンで気軽に見ることができ、滅茶苦茶面白い新作を時差なく雛鳥の如く享受できる。
お前は映画館に見に行くのにも映画ドットコムやYahoo!映画をわざわざチェックして評価が低いと最初から穿った目で見るようになってしまった。
金曜ロードショーが珍しく最高の映画を放送していても「ネットフリックスにあるからいいや」と見なくなってしまった。ましてやテレビでたまたま流れていた知らない映画などもう見ることはしないだろう。ネットフリックスやHuluに沢山面白い映画があるのに、何故わざわざ面白いかどうかもわからない映画を見る。
人は退化してしまった。モノリスに触れ骨を振り回す以前のモンキーとなってしまった。
我々はハングリー精神を失ってしまったのだ。
ビデオショップでよく知らない映画を手に取ることはないし、見たかった映画があったとしても「もしかしたらNetflixで配信されるかもしれないし」と思考にワンクッションを入れるはずだ。

では映像ストーリーミングサービスは悪だろうか。否である。本来映像ストーリーミングサービスは我々の知覚を広げるモノリスであったはずだ。そこは無限の可能性が広がる荒野であったはずだ。
しかし我々は惰性に任せるままインターネットで面白い映画だけをピックアップしてトップページのサムネイル群の先になにがあるかを知ろうとしなくなってしまった。

そこではじめたのが「Amazonプライムビデオぶらり旅」だ。

Amazonプライムビデオとは?

AmazonプライムビデオはAmazoが送る映像配信サービスである。有料レンタルで映画を見ることができるが、プライム会員になることで一定の数の作品が視聴可能になるサービスである。そのラインナップはオリジナルコンテンツからそこそこ最近の映画など幅広いが、何よりの強みはよくわからない映画が異常に沢山あることである。

「Amazonプライムビデオぶらり旅」はそんなよくわからない映画が異常に沢山あるAmazonプライムビデオというインターネットの荒野で、とくになんの前情報もいれずにたまたま見つけて惹かれた映画を見る行為である。
当然、字幕がまともに翻訳されていないこともあれば、ストーリーが形を成していないこともある。
しかし、それを乗り越えてこそのハングリー精神であるとして今回「Amazonプライムビデオぶらり旅」を決行した。

「Amazonプライムぶらり旅」の条件

・内容を1ミリも知らない映画を見ること
・前情報を一切仕入れないこと(あらすじ等を確認するのは可)
・俳優、映画監督を選考基準にしないこと
・とにかくピンと来た映画を見ること

概念的にはカルマ調整と近いですね。

デビルハンター(2017年)

製作国:不明。多分中国。
上映時間:90分
監督:Mr.jiang
主演: Chen Ming

あらすじ
彼らは中国に対する彼らの邪悪な陰謀を達成することができる前に李と呼ばれる中国の警察大尉と毛沢東のチームと呼ばれる道教のマスターは一緒に日本の悪魔上級役員と彼らの信者を殺します。

感想
誰もがあらすじを読んだ段階で嫌な予感がするだろう。そうです、想像通りこの作品の字幕はGoogle翻訳です。あらすじの時点でもうわからないので簡単に説明すると「邪悪な日本人が日本帝国軍の残したオカルトアイテムを狙って陰謀を巡らしており、それをデビルハンター的なやつらが止めようと奮闘する」話である。
あらすじだけ見ると比較的面白そうに見えるのが言語の悲劇である。我々は映画が総合的な芸術作品であることを忘れてはいけない。
この作品に魅力的なところを挙げるとすれば、妙に味のあるGoogle翻訳だけである。それ以外の魅力的なところを挙げろと言われたら俺はそいつを殴る以外の手段を持たない。
強いて。本当に強いてなんとか魅力的なところを挙げるとすれば、主演のデビルハンターが小泉孝太郎に似ているハンサムだということだけだ。そいつがこの悲劇的な作品で妙な熱演を見せてくれる。家族でも人質にとられているのだろうか。
あながち笑い飛ばせる話ではないのかもしれない。

ザ・サイキック(2017年)

製作国:カナダ
上映時間:77分
監督:ジェームズ・マーク
主演:クリス・マーク

あらすじ
叔父と二人で暮らす高校生のディヴィット。過去を思い出せず精神的な問題を抱える彼は、時折見える幻想に悩まされていた。ある日の授業中、武装した軍隊が教室に押し入る。銃口を突き付けられ恐怖にさらされた彼は突如超人的な能力を発し、部隊を一網打尽する。

感想
中学生の妄想を実写化すればとんでもない作品になるのではないかと一度でも考えたことがある人がいたら、それは悲劇であることを知ってほしい。『ザ・サイキック』は中学生男子の妄想をそっくりそのまま実写化した作品だ。
精神に問題を抱える少年。教室に乱入する特殊部隊。少年少女の逃避行。エヴァっぽい会議室。まさにこの映画は中学生男子の妄想を全て実現した奇跡の実写化と言って差し支えない。
最初から最後まで徹底した中学生男子の妄想っぷりは尊敬の念を覚える程だ。実際に中学生男子の脳から映像を直接出力しているんじゃないだろうか?そんな気すらしてくる。
では面白いのかと言われたら所詮は中学生男子の妄想。ペラッペラである。全然面白くない。ペラッペラ。
しかし唯一この作品を駄作たらしめていない要素がある。それがガチすぎる格闘アクションだ。
本作のアクションは超一流である。後から調べたことなのだがどうやらこの作品はエクストリーム・マーシャルアーツ(XMA)を扱うスタントチーム「2XTREME」が主導で撮影した作品なのだそうだ。
その格闘アクションは完全にガチであり、超絶ジャーマンや高速剣劇、最終的には蹴り技の王様”ガイバーキック”を拝むことができる。
格闘アクションが大好きであり日常的にドニー・イェンとかスコット・アドキンスを摂取している自分としては完全に当たりの作品である。
ストーリーもデビルハンターに比べればそこそこ面白いし字幕もまともだ。
見て良かった。

モータルフール(2008年)

製作国:不明
上映時間:81分
監督:Phil Moore
主演:Sarah Campbell-Lambert

あらすじ
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」の現代的な再考は、これは片思いの愛と変態の性的指向のコメディーです。実存主義のサイエンスフィクションセックスフェース - バードが意図したとおり。

感想
このあらすじを理解できたという人がいたら挙手してください。挙手したやつから帰れ。
じゃあ見た人があらすじを解説してくださいと言われても、俺にはどうすることもできない。
料理しているシーンがあって、丸鶏のローストチキンの隙間から別次元を覗くことが可能だとしてそれをどう説明する?あるいは心をいじられたゲイ二人に追いかけられている不可視の人間が道に敷き詰められた大量のバナナに滑ってベッドインした瞬間をどう解説する?
人には限度というものがある。そっとしておいてくれ。

レディ・フォックス 裏切りのトリガー(2015)

製作国:アメリカ
上映時間:70分
監督:クリス・R・ノタリル
主演:マンディ・エヴァンス

あらすじ
精神的にヤバいフォックス、元ドラッグ中毒者のテス、アーティストをしていたヤングブラッド、運転手役のシムズ。個性なバックグランドを持つ4人からなる女強盗団は数々の獲物をモノにしてきた。しかし、仲間内に密告者がいるらしい。誰が裏切り者なのか、お互い疑心暗鬼になっていく!?

感想
センスのないアホが考えたレザボア・ドッグス

ナラーバーニンフ(2012年)

製作国:オーストラリア
上映時間:66分
監督:Mathew J. Wilkinson
主演:Jessica Sterling,Mathew J. Wilkinson

あらすじ
彼らを発見するためだけにNullarbor Plainに沿って外出する2人のWater Australiaの従業員が、神話上の生き物Nullarbor Nymphに捕まっているのを追った。

感想
クソ映画をこき下ろす駄文にうんざりしていた方に朗報だ。『ナラーバーニンフ』は多くの人にとってそこそこ楽しめる映画であったことを宣言しておこう。
確かに多くのGoogle翻訳映画同様前半は退屈であり、もう少しなにか有意義なことに時間を費やすべきではないかと自問自答するはめになる。
しかしオーストラリアの妖精「ナラーバーニンフ」が出現する後半からは物語がそこそこ盛り上がり、そこそこ楽しめようになる。
ナラーバーニンフはオーストラリアの都市伝説で広大なナラボー平原に出没するとされる妖精だ。その姿はカンガルーの皮を身を纏う半裸で巨乳のセクシーな女性で、まるで男の「こんなのがいたらいいなあ」という儚い妄想が具現化したような存在だ。
それもそのはず。今現在ナラーバーニンフは町おこしのためのデマカセであることが判明している。ナラーバーニンフは実在しないのだ。儚い夢であった。
しかし、もしナラーバーニンフが実在したら?
映画『ナラーバーニンフ』の主題はそこにある。
ナラーバーニンフの実在する世界をモキュメンタリーと劇映画を混ぜ合わせた独特の手法で描き出している。
しかも本作のナラーバーニンフの主食は男の陰茎である。男を捕まえては器用な手つきでズボンをずり下ろし股間を貪り食う。男の夢と希望を恐怖と絶望に塗り替えた存在なのだ。
前半はナラーバーニンフの存在の是非を問うインタビュー映像のつなぎ合わせを見せ、後半からナラーバーニンフに襲われる三人の男の恐怖を描き出す。
モキュメンタリーと劇映画を混ぜ合わせた独特すぎる手法には常識的な映画に浸かりきった者にとって抵抗を覚えるかもしれない。だがナラーバーニンフを見るという発想に至った時点で常識がないのでさっさと残りの理性を捨て去るべきだ。
そうすれば普通の映画じゃお目にかかれない映像の連発を見ることができる。
あなたは窓にはりついた二つのおっぱいに恐怖したことがあるだろうか?あるいは椅子に縛られた全裸の男性が陰茎を振り回しながら荒野を全力疾走する姿を見たことがあるだろうか。当然モザイクなんかない。常識を捨てろ。丸出しの陰茎だ。
この映画において女性のトップレスが映る時間より男性の陰茎が丸々映る時間のほうが明らかに長い。後で調べたことによるとその陰茎は監督のものらしい。これだけで監督がこの映画にかける凄まじい情熱がわかる(ちなみに監督はチャニング・テイタム似のハンサムです)。
この映画の盛り上がりはナラーバーニンフに対抗してパンツをDIYするシーンに集約されている。このシーンを見ただけであなたは「まあこの映画を見てよかったかも」と思うに違いない。
ありがとうナラーバーニンフ。ありがとう監督。モータルフールですら写さなかったあなたの陰茎に乾杯。
普通だったら知りえないことや見ることのないようなものを体験できるのがプライムビデオぶらり旅。
皆もナラーバーニンフを見て知見を広めよう。

まとめ

俺は映画『デビルマン』を見たことがないし今後も見るつもりはない。
断っておくと、「プライムビデオぶらり旅」はわざわざクソ映画を見る行為ではない。地図のない荒野を踏破する。未知への挑戦それこそが「プライムビデオぶらり旅」なのだ。
正直全然面白くない映画を見ている時は無性に腹が立ったし、あと一週間これを続けろと言われていたら人を殴っていた。
「まあ見て良かったかな?」程度の感想を得られたのは2本だけだし、最終的にはGoogle翻訳にも慣れてしまいなんの面白みもないクソの文字列と化していた。
ほんとうに最悪の体験だった。はっきり言うが、面白くない映画を見て無為に時間を過ごすのは緩やかな自殺だ。プライムビデオのホームにある「おすすめ映画」を見た方が5億倍充実した時間を過ごせる。
でも最終的にはやってよかったと思う。かつての猛者ならば誰もが持っていたハングリー精神を取り戻した。はやくまともな文字列の映画が見たい。俺は今痩せたピットブル並みにハングリーだ。かかってこい。
みんなもはじめようプライムビデオぶらり旅。そして俺と同じ地獄を味わってくれると嬉しいです。

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