大丈夫!子供は変わる 変わることができる!
毎朝の質問攻め
「先生、体操着は、どこに入れたらいいの?」
「お道具箱はどうするの?」
「本はどこに入れるんだっけ?」
「私ね、連絡帳にママが何も書いてくれないの。いいの?」
1年生の始まりの頃、毎朝、こうした質問攻めに合いました。
説明したり、一緒に考えてルールを作ったり、実際にやって見せたりしても、なかなか覚えられないものなのだと思いました。
そして、これでいいのだとも思いました。
これが、「今」はまだ当たり前なのだと。
「虫が怖い」と泣いた子
ある朝、教室に入ると、レミさんが、しくしくと泣いています。
どうしたのかを聞くと、「虫がいて、怖い」とのこと。
一匹のカナブンがレミさんの机の上で、ころんとなって死んでいました。
どこからか入り込んだのでしょう。
心配いらないことを伝え、ティッシュペーパーで取ると、「お墓」を作ってあげることにしました。何人か有志と共に、校庭の隅に埋めました。
レミさんは、すっかり安心しました。
これがきっかけになったわけではないでしょうが、レミさんは一年間、二度と教室で泣きませんでした。生活科で生き物の学習をしてもへっちゃらでした。
音読で泣いていたけれど
ミソラさんは、音読の順番が近付いてくると、もうそれだけで緊張して泣いてしまう子でした。
読めば上手なのですが、大勢の中で読むことに不安を感じてしまうのでしょう。
保護者の方も少なからず心配をしていました。
やがて彼女は、教師を目指す大学生になっていました。
アルバイトで、放課後の児童施設で子供のお世話もするようになっていました。
やがて結婚。子供を一生懸命に育て、張り切って教壇に立ち続けてもいます。
「手の掛かる」子
ランちゃんは、「手の掛かる」子でした。
入学間もない頃は、教室に入れずに靴箱の所で、よく泣いていました。
授業中も、ぼんやりしていることが多く、忘れ物も目立っていました。
何かを言われても素早い反応を返す子ではありませんでした。
そうした表れは、学年が上がってもほとんど変わらず、上学年の担任も、将来を心配するほどでした。
月日が経ち、彼女は家業を継いで、地域を代表する経営者になっていました。
店舗も順調に拡大し、テレビ番組にも取り上げられました。
1年生の頃などの小学校時代を知る人は、口を揃えて言います。
「あの子がね~」
子供は変われる
そうです。子供は変わるのです。
いくらでも変われるのです。
40年以上、教師を続けての実感です。
もし今、「我が子の将来が不安だ」という保護者の方や、学級の子の不甲斐なさにイライラしている教師がいたら、こう伝えるでしょう。
「大丈夫!子供は変われます。だから、信じて一歩一歩、一緒に歩んであげてください」と。
もちろん、時に未来が残酷なことも承知しています。
しかし、子供が「変われる」存在だからこそ、私たちは「頑張れる」のではないでしょうか。