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どの子も日記 第4段階 五感を使ってくわしく書く指導はこうすればいい!

日記が苦手な子供に対する段階的な指導方法の紹介を続ける。

前回の「ヒント帳 73」「74」で、

第1段階 読むことと言葉で言うこと
第2段階 「したこと」を書けば十分!
第3段階 「したこと」を5W1Hで書く 【くわしく書く1】
 

まで、進んできた。
(ここまでをお読みになりたい方は、コチラからどうぞ! ↓ ↓ ↓ )

今回は、続く、

第4段階 五感を使って 【くわしく書く2】

である。
いよいよ、「したこと日記」から「見たこと(聞いたこと・ふれたこと・かいだこと・なめたこと)日記」にレベルアップするのだが、前回の終わりに書いたように、五感を使うことで、5W1Hのうちの「⑥どのように」の表現技術が向上することになる。
くわしく見たり、聞いたり、触ったり…をすることで、「⑥どのように」を表す言葉の引き出しが増えるのである。

特に、五感の中で、「見ること」を私は最も重視してきた。
およそどの学習においても、「見ること」は、最も重要な学習技能であろう。理科でも、社会でも、図工でも、すべての学習で、「見ること」は基本である。

では、そんな「見ること」を含めて、どうしたら子供たちが五感を使って書けるようになるか
「五感を使って書きなさい。」と指示するだけでは、もちろんだめだった。

次の四つの方法を用いた。

第4段階 五感を使って 【くわしく書く2】

(1)絵を描かせる

言葉で表現するのが苦手な段階は、「絵」で表現させる。
だから、低学年、特に1年生は、「えにっき」なのだと考えている(ちなみに、私は2年生では、もう「えにっき」は書かせなかった。絵を描きたい子は自由に描くという方法だった。)
子供は絵に描かせることで、「よく見る(見たことを思い出す)」のである。
だから、まず、「見ること」は「絵」で十分である。
やがて、「絵」で表現することに慣れてきたら、例によって子供に「お尋ね」をして、「絵の説明」をさせる。そして、その説明を文字に起こさせるのである。

(2)課題を与えて重点的に取り組ませる

子供が、「見る」「聞く」「触れる」などのことを実際に行う「場」を設定して、書かせる。
私が実践した例を示す。

①教師がしたことを「見せて」書かせる
教室で、教師が短時間に何かを行い、それを「くわしく」書くように課題提示をする。
この指導をすると、一文でも、長くくわしくなる。
5W1H以上の詳しさになる。例えば、こんな感じである。

「先生が、黒板に白いチョークを右手に持って『おはよう』と、ゆっくり書きました。そして、急いで黒板消しを右手に持って、その字をすばやく消しました。ギュッギュッと音がして、白い粉がぱらぱら落ちました。」

「目」を使って書かせることが課題でも、この例のように、「耳」を使う子も出てくることがある。こういう時が、「じゃあ、今度は、『耳』を使って書いてみよう」と、課題を発展させるチャンスになることは、言うまでもない。

こうした教師を見て書くことは、年に数回行えば十分に効果が上がる。子供が「目」を使って書くことを意識するようになるのだ。

ちなみに、この「教師の演示を見せて書かせる」指導について、ある著名な実践家が同じような方法を採っていたことを後日、知った。もちろん、私などより、はるかに優れた指導技術を用いていたが、それでも自分のしていることはそんなに間違っていなかったのだと、安堵したことを覚えている。

②「音」を聞かせて書かせる
手を叩いたり、風船を割ったり、音のなる玩具を使ったりして出した音を、目をつぶらせて「何の音?」と音当てクイズをしながら聞かせ、それを言葉に書かせた。
同じ音でも、多様な表現が生まれる。
人によって、聞こえ方も、それを表す言葉の使い方も異なること。そして、それが素晴らしいこと(もちろん、「おふざけ」は厳禁だが)。」を教える機会にもした。

「音」を聞かせることを、雨の日や風の強い日に行うのも、効果的だった。
教室内がしんとなり、子供たちは耳を澄ませて言葉に「変換」していった。
なお、こうした時は、「聞こえた音」をただ羅列するだけでもいいし、「今日は雨です。こんな音がしました。」などと書き出させてから、聞こえた「音」を書かせてもいいのではないかと考えてやってきた。

子供たちは、「ザーッ」「ドドドド」「ジャジャジャジャ」など、様々な擬音語(擬声語)を書いていくが、「雨がびゅんびゅんふっています。」などと書く子がいたら、擬音語(擬声語)と擬態語の違いを教える絶好のチャンスとなる。

③「触らせて」書かせる
まず、ゲーム感覚で「触れた感覚を言葉にする」ということを教える。
それを、こんなやり方で行った。
中身を見えないようにしたブラックボックスの中に特徴的な手触りの物を入れる。箱の開けておいた穴から、代表の子供に手を入れさせる。そして、その触感を言葉にさせる。子供を替えて何回か繰り返す。そして、種明かしをする。
「触感を言葉にする」ことに子供が興味をもったところで、洋服、鉛筆、机、壁などや、ブラックボックスに入れておいた物を次々と触り、言葉にさせていく。

※なお、「鼻でにおいをかぐ」「舌で舐める」活動は、取り立ててやらせなかった。生徒指導上かつ安全上の配慮をしたつもりである。

④家庭学習における日記の課題にする
「今日の日記は、『耳』を使って書きます。」「今日は、『目』です。」などの課題を出して取り組ませる。経験的に、3年生以上ならば、できる。

⑤「見に」「聞きに」「触れに」行く「たんけん日記」
教室を出て、校舎内や運動場に移動する。日記の題材探しも兼ねて、「面白い」「不思議」「初めて知った」という「見たもの」「聞いた音」「触れた感じ」を次々と言葉にさせていく。
子供は、記録用紙に、たくさんの「触感を詳しく表す言葉」を「集めて」書いた。

⑥会話文を書かせる。
「聞く」の一つとして、会話文を書かせる。慣れれば、1年生でも書くことができる。
「『耳』を使って、会話文を書こう」と課題を提示し、①と同様に、教師が演示したり、代表の子供と実際に短い会話をしたりして、それを写させる。
これも、家庭学習の日記の課題にすると効果的だった。

(3)他の教科などと関連付ける

生活科や理科の学習における動植物の観察時に、日記指導と関連付け、五感を使って記録を書かせる。生活科や理科のねらいにも迫れるので、効果は相乗的である。
「鼻」を使って書かせることも、この時に、行うと良い。

(4)他者の作品を読ませる

これまで何度も述べてきたように、他の子供が五感を使って書いた日記を紹介して読ませる。
「上手だと思うところ」を見つけさせることもした。
私が、「先生の上手だと思うところ」も積極的に明示した。

座席の隣同士で、日記帳を読み合い、付箋などで、「上手だと思うところ」を伝え合うこともよく行った方法である。

以上、五感を使って日記を書く「見たこと日記」の段階における指導の工夫を紹介した。
次回はいよいよ第5段階として、「思ったこと、考えたこと」に入る。

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