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韓国映画「幼い依頼人」

主演:イ・ドンフィ、ユソン、チェ・ミョンビン、イ・ジュウォン
2019年 114分
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★☆
(写真=クロックワークス公式サイトより)

本当は重い韓国映画は当分観たくなかったんだけど、ちょっと前にこちらのパターソン栄子さんの記事↓を読んで気になっていたし、アマプラでは配信終了ということで、急いで視聴。

2013年に起こった実話を元に

ロースクールを卒業して出世の道を突き進むはずだったジョンヨプ(イ・ドンフィ演)は何度も就職に失敗し、姉の勧めで臨時に児童福祉館に就職する。ある日、継母ジスク(ユソン演)から虐待を受けている“ダビン”姉弟に出会うが、さほど深刻に考えていなかった彼は、また来るという言葉だけを残して去る。数日後、法律事務所に就職したジョンヨプは電話を受けダビン(チェ・ミョンビン演)の鼓膜が破れたことを知る。ジョンヨプは継母からダビンを引き離そうとするが、かえって誘拐犯扱いをされ、その後弟ミンジュン(イ・ジュウォン演)の死に加え殺人の被疑者とされたダビンを見て衝撃を受ける。何もかも間違った方向に進んでしまったと感じたジョンヨプは、真実を明かすため、ついにダビンの弁護士になることを決心する。(クロックワークス公式サイトより)

マフィアよりタチの悪い親の虐待

最初、本作のタイトルを見た時、私は1994年のアメリカ映画「ザ・クライエント 依頼人」のリメイクかと思い懐かしい〜ってなって調べたら全然違うし(汗)。当時ジョン・グリシャムにハマっていたので、これは原作も映画も大好きであった。アメリカ映画の方は(ちょっともう記憶が怪しいんだけど)、マフィアの秘密を知ってしまった少年が母親と弟を守るために、弁護士に助けを乞う物語であるが、まずここで弁護士を訪ねるという知識があるところが、アメリカは違うのかもしれない。

本作のダビンは警察に助けを求める。担任の教師にも助けを求める。しかし警察は形ばかりの質問をし、後は”児童福祉館”にケースを回しただけ。しかしそこでも、形ばかりの家庭訪問をし、質問をするが、母親が”一見普通”に見えればそれ以上は深入りはしない。
その”一見普通”と”現実”との狭間に落とされてしまった子供たちの悲劇であるが、継母のジスクは外面は良く、警察も福祉士たちも何もできないのである。彼女の体罰も「躾、教育のため」と言われてしまえば、他人は口を挟めない。マフィアの悪巧みより、明らかにタチが悪いのである。

大人はみんな同じ

ジョンユプも最初のうちは子供達に付き合って、ハンバーガーを食べに行ったり(小学生の頃私も行ったなぁ、ロッテリア!)、動物園に連れていってやったりする。しかし、ソウルの大手弁護士事務所で仕事が見つかると、手のひらを返したように、子供たちを相手にしない。ダビンはジョンユプだけは自分たちを助けてくれると信じていたが、結局他の大人と同じであった。

同じアパートの建物に住む隣人たちも同様。担任の先生も見て見ぬ振り。
本作は児童虐待を扱っているが、テーマとなっているのは、もしかしたら気付かぬうちに”傍観者”になっているだけなのかもしれない私たち大人への批判が根底にあると言っていいだろう。

”傍観者”とは「その物事に関係のない立場(当事者ではないという立場)や態度で見ている人物」という定義のようだが、大人はもう少し、「自分に無関係な事で、人のしりにくっついて、面白半分に騒ぎ回る」野次馬根性もときには出した方がいいのかもしれない。

子供が裁判などしなくて済む社会に

本作もテーマからして重いものだと分かっていたし、もしかしてエンディングに韓国お得意のとんでもないどんでん返しがあったらどうしようなどと心配していたが、最後に一抹の希望があって良かった。

なお、アメリカ、そして韓国ではこのように子供が依頼人になって実際に裁判にすることが可能なようだが、日本は?
日本では下記のサイトによると「子供も弁護士をつけられる」援助制度があるらしい。虐待のような本作のケースはまさに、これを適用できるケースと言えるだろう。法の制度が整うのは喜ぶべきことだが、まず何よりも、子供たちがこんな制度を利用しなくて済む、利用する必要のない社会になるよう願うばかりである。そのためには傍観者であることをやめる勇気も必要だろう。
「傍観者は有罪か、無罪か?」
そんな問いかけがぐさりときた作品であった。
あー、落ち込んだので、アニメーションの細胞ちゃんたちに元気づけてもらおっと。

こちらが予告編。


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