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韓国ドラマ「紙の月」(&原作小説)

主演:キム・ソヒョン、ユソン、ソ・ヨンヒ、イ・シウ
2023年 全10話
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★☆☆
(写真=韓国のサイトより)
原作小説『紙の月』 角田光代 2012年
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★

さてさて、こちらは昨年予告が出た時からずっと楽しみにしていたドラマ。原作は角田光代の同名の小説、2014年の原田知世主演のドラマ版を観ていたので(宮沢りえの映画版を観たかが思い出せない。。。)、絶対に観ようと思っていた。

しかし、いつものことながら、日本版ドラマが面白かったというのは覚えているのだが、ストーリーがあまりよく思い出せない。原作小説も読んだのか覚えていなかったが、Kindle版で購入してみたら未読だったので、本とドラマを同時進行で視聴&読書。

真面目で貞淑な妻が銀行で横領を働くまで

キム・ソヒョン演じる専業主婦のユ・イファ(原作:梅澤梨花)は、なんとなくモノトーンな味気ない毎日を過ごしている。コン・ジョンファン演じるSHグループの部長の夫チェ・ギヒョン(原作:梅澤正文)は給料もいいし、生活には困っていないが、二人の間には子供ができなかった。
何かをしたいと思ったイファは、貯蓄銀行の契約社員として働くようになり、少しずつ自信を取り戻していく。営業職でVIP顧客の自宅を回るようになるが、そこで顧客の一人の孫である、イ・シウ演じる大学生ユン・ミンジェ(原作:平林光太)という青年と出会う。映画監督になるのを夢見る彼がお金に困っているのを知り。。。。彼女の生活は一変してしまう。

前半は良かったが、盛り込みすぎ

前半は、「ああ、そうそう、こんなシーンあったわ!」なんて原田知世や、満島真之介のシーンなんかを思い出していたが、途中からなんとなくあれ?と感じ、原作小説も読んでみた次第。

本作は全体的に、出てくる家や洋服なども、よりハイソな感じに仕上げられている。時代設定も2016年になっているし、銀行自体はそんなに変わってないだろうが、日本ドラマで見た雰囲気とは色々と違っていた。

ストーリーはもちろん、銀行で働くようになったイファと、大学生ミンジェが中心となっているが、イファの親友であるカン・ソンヨン(ソ・ヨンヒ演)とリュ・ガウル(ユソン演)たちのそれぞれの家庭の問題も盛り込まれている。

しかし、この親友たちのストーリーも、それぞれの事情があり、よく描かれてはいるのだが、うーん、ここまで必要?って部分もある。
節約魔のソンヨン、浪費家のガウル、と対照的な存在はいいのだが、他の女性像も出てきて、なんだか韓国らしいマウントの取り合いみたいな部分もあり、これはなくても良かったかな、とも思ったり。

また、イファの夫も、日本版で見たときは「嫌なヤツ」ぐらいの印象しか残っていなかったが、本作では彼の仕事における上司とも関係性なども描かれ、これははっきり言って要らなかった。

あと、原作小説と比べて思いっきり膨らませてあるのは、イファの同僚ルリのストーリー。彼女が銀行から破損紙幣を持ち出すところから、色々と展開していくのであるが、破損紙幣は原作小説では出てこないので、これはなかなかうまく取り入れたと思う。しかし混乱した展開で、うーん、ルリのストーリーもここまでは要らなかったかな。

とにかく後半以降は、他の登場人物のストーリーで使われており、イファ自身の切羽詰まった状況などがなおざりにされていると感じた。これは特に、原作小説を読んでからはなおさらにそう感じた。横領なんかしなくてもいいんじゃないの?ってぐらい、余裕のある雰囲気なのである。

原田知世のドラマ版は動画が見つからなかったので、宮沢りえの映画版の予告編をどうぞ。


原作小説との違い

日本ドラマ版はよく覚えていないのだが、ある程度原作小説に忠実だったのではないかと思う。
ここでいくつか、原作との違いを挙げてみたい。これは別にどちらがいい、悪い、という意味で書くのではなく、自分的なメモである。

(1)イファ(梨花)の仕事

原作では銀行でパートタイムで仕事を始める。そして、成績がいいので上司からも勧められ、資格をとってフルタイマー、さらには正社員になる。
一方、本作のイファは普通に社員として営業職を始める。これはおそらく韓国と日本のシステムの違いだろう。成績がいいので彼女は銀行の「プライベートバンク」部門に昇格する。これは当時の日本ではないので、時代に合わせたものと言える。

(2)夫の仕事

これはちょっと異なった。原作で正文は上海に海外転勤となり、単身赴任する。本作のギヒョンには海外転勤の話は出るものの、実際にはまだ行っていない。
夫の単身赴任は、梨花が大胆な行動に出る重要なきっかけとなるが、本作ではギヒョンは忙しいというだけなので、なんとなくインパクトが薄かった。

(3)ミンジェ(光太)と映画

本作のミンジェは映画監督になるが、原作の光太ははっきりと言及がないものの、映画の道を諦めるっぽい。
しかも、梨花は光太に関する別のことでさらにお金を使い込む。光太は実は別の女性と付き合っており、梨花はそれを探偵に大枚を叩いて探らせる。
こんなところも、彼女の切羽詰まった状況が描かれていた。

構成が全く違う

しかし、大きな違いはなんと言っても物語の構成。
原作では梨花が指名手配されてから、数人の付き合いのあった友人たちが過去の彼女を回想し、現在の自分の「お金」にまつわる状況を考えていくという形である。

しかし、本作では友人たちが「親友」として登場し、それぞれの「お金」に関する概念が描かれている。しかも、それだけではなく、浮気、不倫、貞操のテーマも入ってきちゃって、この辺も後半はちょっと混乱気味なのである。

お金の扱いとしては、破損紙幣やマネーロンダリングが取り上げられていたのは悪くはないが、この辺りの展開は原作にはない。

💰💰💰💰💰

本作はキャストは秀逸だし、ドラマとしての展開も悪くはないが、原作小説や原田知世版が良かったという感想を持っている人には、満足度が低いかもしれない。
実際、私より一足先に本作を視聴した韓流オタク友も、「原田知世の方が面白かったよ」という感想だったので、私だけがそう感じたのではないようだが、全10話と見やすい長さではあるので、サスペンスドラマが好きな人にはいいかもしれない。

原作小説は今読んでも面白いので、オススメ!

こちらが予告編。



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