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日本ドラマ「大地の子」

主演:仲代達矢、上川隆也、宇津井健、田中好子、朱旭、蒋雯丽、盖丽丽
1996年 全11話 (アンコール版)
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★★★♾️♾️♾️
(写真:見出し=NHKオンデマンドより、文中挿入写真=全て百度百科より)

平成7年(1995)に放送した、山崎豊子原作、日中共同制作のスペシャルドラマ。太平洋戦争の敗戦によって、満州で残留孤児となった主人公・陸一心(中国名)が、中国人養父母への愛情と日本の実父との愛憎に揺れながらも、文化大革命の荒波を越え、日中共同の製鉄プラント事業を完成させるまでの物語。

NHKオンデマンドより

今更と言われるかもしれないが、放送当時は未視聴で、原作を読んでいて、ずっと観たかったドラマ。1995〜1997年ごろは、一番ドラマなどを観ていなかった時期なのだが、今考えてみると、ちょうど仕事を変えたり、引っ越したりして、そういえばとても忙しい時期だった。しかし、原作の文庫本はおそらくこの時期に買って読んだのではないかと思う。本屋で割と目立つところで手にしたのを覚えているからだ。

そして2年ほど前、文庫本を処分してしまったので、Kindle版を再購入。あっという間に読んでしまい、是非ともドラマも観なければと思い、視聴した次第である。

終戦から80年代の中国を舞台としたの壮大なスケールのドラマ

原作を読んでいる方も多いと思うので、あらすじは省略。というか、山崎豊子氏の小説のあらすじを数行で表現なんてとても無理な話である。たぶんAIアシスタントちゃんでも無理(笑)。
しかし、原作やドラマを知らない方の参考に、ちょっと説明を入れておこう。

本作でメインとなるテーマは中国残留孤児、そして日本の協力により立ち上げられる中国の国営製鉄所
このような文化大革命も含めた歴史背景の中で、満州に長野県から家族と集団移住した少年松本勝男、後に中国人に拾われて陸一心という名になった一人の男性(上川隆也演)の過酷な運命を描いた物語である。

以下、個人的に色々と印象に残ったり、思ったことを挙げてみたい。

労働改造所に送られた一心が何年も過ごすことになる内蒙古。まさに大地が感じられる数々のシーンが良かった。

半分以上が中国語セリフ

ロケのほとんどが中国本土で行われているため、セリフの80%が中国語。今なら中国ドラマをだいぶ観ているので、全く違和感なく観られたが、昔だったら戸惑う部分もあったかもしれない。ちょっとした日本語字幕になっていない部分も聞き取れたりして、嬉しくもなったりした。

上川隆也は本作がドラマデビューだったそうだが、この中国語でのセリフは大変だったことだろう。発音に関しては皆東北訛りが入っているらしいが、私自身にはそこまでの聞き分けはもちろんつかなかった。

毎エピソード涙😭

ストーリーがわかっているというのもあったからか、「あー、これあのシーンだ!」と思い出し、もうそこからうるうる。。。原作の小説の方でもとにかく色々なシーンが悲惨なのだが、やはりここは映像、そして何よりもキャストたちの演技によって泣かされた。

毎回涙を流していたのだが、一番泣いたのは妹のあつ子に再会するシーンと、最後の製鉄所の火入れ式だろうか。自分もまさに体験したかのように、そこに辿り着くまでの様々な思い出が蘇り、感無量であった。

残留孤児

私には実は、母親が残留孤児だったという友人がいる。ちょうどこの原作を読んだ後、すぐにいろいろと彼女に質問したのを思い出した。
彼女の母親はとてもラッキーな方だったそうで、日本に帰国してしまった親と中国の里親がお互いに連絡先を交換していたため、日中国交が回復してすぐに連絡がついたそうだ。なので母親は末っ子の、当時中学生だった友人だけを連れてとりあえず帰国。
その後日本で居住権を得て、中国人の夫や上の子供達を呼び寄せたらしい。

昔、テレビで残留孤児のニュースを見たのも思い出したが、彼らの背景には様々なドラマがあったという面を、本作では見せてくれた。

中国の鉄鋼産業史

今回視聴するにあたって、最も興味があったのは製鉄プラント建設の部分。というのも、先日この部分の続編ともなりそうな中国ドラマを視聴したばかりだからだ。

本作では政府が国営製鉄所を本格的に稼働させる部分にあたるが、上記のドラマでは、一応最初の役目を終えた国営製鉄所が廃炉になり、経済発展を見据えた民間の製鉄所誕生の物語になっている。

キャストが素晴らしい

日本人キャストについてはもう何も語る必要がないほど大物ばかりなので、ここではあえて書く必要もないだろう。
なので、とても良かった中国人キャストについてちょこっと触れたい。

陸徳志 -- 朱旭チュウシュイ演じる陸一心の父親

もう彼の演技には毎エピソード泣かされた。小学校教師という役で人徳もあり、その優しさが滲み出てくる演技にはもうほろほろ。。。一心を連れて逃げる際の国境(省の境?)通過のシーン、冤罪を晴らすためにお役所に通う姿には彼以外の適役はいないのではないかというほど素晴らしかった。

1952年瀋陽市出身、2018年に88歳で他界。

江月梅 -- 蒋雯丽ジャンウェンリー演じる陸一心の妻

巡回医療隊の看護師として定期的に地方を回っている月梅は一心にとって日本の家族と出会う鍵になる人物でもある。自身も父が文革で逮捕されたため、一心の運命も他人事とは思えず、彼のことを支える健気な演技がとても良かった。

1966年安徽省出身、現在では演劇科の教師なども務めているらしい。

趙丹青 -- 盖丽丽ガイリーリー演じる陸一心の大学時代の恋人

結婚まで考えていたものの、一心が日本人と知り、彼を捨てた丹青。製鉄所建設の際に再会するものの、自身の結婚生活が幸せでないため、一心との再会に心が揺れる。しかし、それが一心には思わぬ悲劇を招くこととなってしまった。
単なるわがまま娘かと思っていたら、出番は少ないものの、後半の彼女の演技にはグッときた。

1967年山東省出身、ここ数年はあまり映画やドラマなどには出演していないよう。

現在リメイクを作る意味があるか

2022年に佐藤健主演でTBSでリメイクする企画があったようだが、中止になった模様。なぜそういう企画が持ち上がったのか知らないが、わざわざ作る意味はあるのか?この時代の歴史に再び焦点を当てるため?
きちんと制作しようと思ったら、中国側の多大な協力が必要だが、断られたか?

時期的にコロナ禍ということもあり、撮影が困難になるという理由もあっただろうが、出演打診された俳優たちも軒並み“NG”を出したらしい。本作を見たら、いかに撮影が大変かというのがわかるし、本作以上のものを作れるかというプレッシャーもあると思うので、まあ、俳優たちの断る気持ちもわからなくもない。

ならば本作をまた再放送すればいい。本作も小説・ドラマ共に山崎豊子氏の中国側への熱心な働きかけがあったからこそ実現したので、それをそのまま古くなったからと葬ってしまうには余りにも勿体無い作品である。

現在では様々な技術もあるので、最近公開されているいくつかの映画作品のように、デジタルリマスターなどしてもいいのではないか。
民放とNHKという壁はあるかもしれないが、日本ドラマの代表作として、また多くの人の目に触れて欲しいと思うが、どうだろう。

本作は現在NHKオンデマンドで配信中(要サブスク、または単品レンタル可能)。ただ、2023年11月30日で配信終了となるようなので、原作を読んだ方も、そうでない方も、興味ある方はぜひ観てほしい。個人的オススメ度は初めて「♾️」(無限)をつけたくらい。WOWOW版『沈まぬ太陽』と並んで山崎豊子氏原作の実写化ドラマとして傑作であると言っても過言ではないだろう。

最後に一心が日本の父親と旅する長江三峡。私もいずれ行ってみたい。

本作、およびドイツのドラマについて言及なさっているNao Naoさんのとても素敵な記事を見つけたのでリンク。