社長への応援歌

昔、ある人がこんなことを言ってました。

「社長というのはひとつ職種だ。パートもひとつの職種。だから本来は上も下もない。どちらの職種も会社には必要であり、それぞれが自分のできることを精一杯やればいい」

たしかに。こう考えるととてもわかりやすいですね。

ところが。

世の社長たちの中にはこうは思ってない人もいるようで。

「俺が雇ってやってる」
「お前を拾ってやったのは俺だ」
「ここで働きたいのなら俺の言うことを聞け」

などなど。簡単に言うとバカにしてるんですよね。「俺が上、能力も何もかもお前らより上」と。だから「搾取してやろう」という思考が生まれるのだと思います。

例えば残業代は1分単位で支給が当たり前。これが法律です。（月合計で出た30分は切り捨ててもいい）

「始業前に30分早くして準備しろ」ならばこれも時間外となり残業代が発生します。
「帰りにあの会社に寄って書類届けてくれ」も、「終わってから掃除しろ」も、美容師の「残って練習しろ」も、飲食業の「仕入れに行って来い」も、全て労働時間であり時間外手当の対象になります。

有給については、有給休暇取得日数が10日以上の労働者には、基準日から1年以内に5日以上の有給休暇の取得が義務付けられています。
違反すると、違反者1人につき30万円以下の罰金が使用者に科されます。

残業代にしろ有給にしろ、社員の権利を取り上げたら、それは搾取です。感覚的には窃盗と同じです。
社員に払うはずだった3万円の残業代を社員に渡さず会社の金庫に入れたら、そりゃあ犯罪でしょう。

僕たちが若い頃は全然違いました。
サービス残業当たり前、有給取ったら「やる気がない」と言われ、休日もタイムカードを押さずに出勤してました。「24時間働けますか」などと言われていた時代、これが当たり前だったので疑うこともなかったです。

しかし。

時代は変わりました。

労働基準法を守らないのは違法行為です。飲酒運転をしてはいけないのと同じように、法律でルールが決まっていることです。

だけどまだ、令和になってもわかってない社長がいる。

「労働基準法なんか守ってたら、つぶれるよ！」という社長もいましたが、だったらつぶれた方がいい。違法行為で利益出してるならやってることはヤ◯ザと同じ。社員の権利を搾取しないと成り立たない事業なら、それは「お前はもう死んでいる」ですよ。

こうしたケースは僕が見てきた範囲では「中小企業だから」ではありません。大企業でも現場ではこうした感覚で労働基準法違反が行われていることがあります。

部長から「お前の支店、人件費高いぞ」と言われる。すると支店長は考える。売上維持のためには労働時間は減らせない、となれば、自分の労働時間を捧げるか、部下の残業代をカットするか、あるいはその両方をします。

大企業でこうした労働問題が起きるとしばしば社長は「知らなかった」と答えますが、ホントにそうかもしれません。現場が勝手にやってること。そう、これが忖度。日本の美しい文化なのです。だから社長が許されるというわけではありませんけれど。

まあ、しかし。こんな会社でも運だけで生き残ってるところもたくさんあるんですよ。「ここは訴訟起こされたら一発倒産だろうな」という会社、いくつか知ってますが。綱渡りの天才みたいな人がいるものです。うらやましい限りです。

でも、この先はどうでしょうね。

ちょっと風が吹けば一気に谷底へ、かもしれません。

僕の知り合いの社長にも「社員が労基に訴えた」と言った人、実際にいます。会社の実態なんて、今はカジュアルにSNSで拡散されますよ。

いやー、社長って大変ですね。
どこまでいっても安心なんかできない。リスクや責任ばかり。社長なんてなるもんじゃない。独立なんてするもんじゃない。

と僕は個人的には思っているのですが。

それでも社長はになりたい人のために、そんな人を応援したいなと思い、替え歌を作りました。

社長。人を雇うなら、どこから突っ込まれても問題ないよう、人事、労務、その他諸々の労働基準法遵守等、ちゃんとしましょうね。

聴いてください。

『社長へ提言』

お前が社長になる前に
言っておきたいことがある
かなり厳しい話もするが
これが法律だ
聞いておけ

始業前に早出させるな
終業あとに仕事させるな
36協定結べ、就業規則読め
できる範囲でとか、言い訳するな

忘れてくれるな、労務もできない男が
会社を守れるはずなどないってことを
お前にはお前にしかできないこともあるけど
それ以外も勉強して
黙って法律遵守しろ


お前の仕事と部下の仕事
どちらも同じだ、大切にしろ
社員教育、かしこくこなせ
たやすいはずだ、愛すればいい

部下の陰口、言うな聞くな
それからつまらぬ嫉妬はするな
部下は訴訟はしない
たぶんしないと思う
しないんじゃないかな
ま、ちょっと覚悟はしておけ

会社は社員とみんなで育てるもので
どちらかが苦労して、
つくろうものではないはず
お前はこの会社の代表取締役なのだから
帰るところはないと思え
今日から会社がお前の家

社員が育って、年をとったら
ずっと社長に居座ってはいけない
たとえわずか相談役でも
会社に長く居座ってはいけない

何もいらない
取締役会で、涙のしずく、二つ以上こぼせ
あなたのおかげで
いい会社になったと
部下が言うから
必ず言うから

忘れてくれるな
お前が愛する会社の
愛する会社の社長はお前、ひとり

忘れてくれるな
お前が愛する会社の
愛する会社の社長はお前、ただ、ひとり

ららららー
ららららー

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