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映画鑑賞記録 #4

ご無沙汰してます。ようやく10本映画を見たので、#4の更新です。今回は、かなりいい映画に出会えました。特に新作は、今年ベスト級の作品がチラホラ。最近は、なかなか映画館に足を運べずな生活でしたが、来週からは毎週1本見に行く習慣を作ろうとルームメイトと話しています。とはいえ、いきなり来週何を見ようか、悩み中です。金曜以降なら無条件でシャマランの新作を見ますが、如何せん、見に行く曜日が火曜なもので、、、

今のところ、候補は『シングフォーミー、ライル』『グリッドマン』『The Son』ですね。少し上映時間の問題で、見に行けない可能性大なのですが、一番見たいのは、『シングル8』です。皆さんは何を見に行かれますか?

BLUE GIANT / 立川譲

2023.02.20 #31
★★★★★
原作から大ファンで、ジャズ好きな人間からすると、この映画化はもう、待望中の待望。どう考えたって、テレビアニメより映画の方が合ってる。本作では、原作とは異なる箇所がいくつもあり、たとえば、大という主人公のジャズ成り上がり物語にするのではなく、JASSとしての物語に再構成している点や、勿論そこからくる原作からの改変要素が、まさに入れ替わり立ち替わりメンバーを変えていくジャズの特徴そのままに、ifの物語として、映画に刻んでくれた。また、漫画表現では表現しきれない「音楽」という要素、ライブの躍動感、観客の表情の変化、そういった機微を丁寧に掴み取る様は見事だった。10巻分の漫画を2時間に収めることの難しさは、想像にたやすいが、この作品では、「豆腐屋のおじさん」「玉田に一声かけるおじさん」といったように、本筋とはやや無関係なエピソードを、きっちり盛り込んでいる。これは、大正解で、JASSの物語に再構成したからこその、素晴らしい効果だった。
ライブの躍動感と描いたものの、私は実際のジャズライブを知らない。もっぱらCDで聴くか、YouTubeで過去の演奏を見るかの二択だ。だから、ライブの躍動感なんて、リアルはわからない。けれど、この作品のライブシーンで滂沱の涙を流した。それは、まさしく躍動感を実感したからに他ならず、それってえげつない事だよな、と思う。だって、ライブを知らない人間に、映画でライブを経験させたのだから。3D演奏と2D作画による虚実ないまぜの映像は、次第に舞台を東京の会場から河川敷、カフェ、東北、へと移り変わり、最後には宇宙にまで発展する。大の記憶を辿り、色々な者の感情を伴った記憶がぐわーっと画面に横溢し、それとともに曲はフルボルテージへと上がっていく。そして最後に・・・
アッパレ。今年ベスト級の作品でした。

泣き虫しょったんの奇跡 / 豊田利晃

2023.03.01 #32
★★★★☆
いやぁ、いい作品だった。瀬川先生の件は、将棋の動画や本で知ってはいたが、面白かった。何より、最後の最後で実際のプロ棋士を映画に出すというのは、良かった。日本将棋連盟が協力体制に入ったことで、きっと瀬川以外の描写のための取材に、多くの貢献をもたらしただろう。豊田利晃が、こうも丁寧な映画を作るのかと驚いた。そもそもそんなにぞんざいなイメージはないけれど、もっと「熱量」で押してくる、どちらかというと、「自主制作」の監督みたいなイメージがあった。それが打って変わって、この作品では、「熱量」を「技術」で裏打ちした感覚があって、驚いた。特段変な演出も、こだわりのカットみたいなのもいらず、とにかく適切な構図と適切なカット割、それを適切なテンポで編集してしまえれば、普通に面白い作品になる、と再確認。それが一番難しいんだろうけれど。

アンチャーテッド / ルーベン・フライシャー

2023.03.01 #33
★★★☆☆
軽いノリと思いつきアイデア満載の画面構成が、フライシャーって感じがして良かった。海賊ごっこアクションや、最後のヘリ&帆船のイメージには驚いた。あれ、ゲームと同じ流れなんだろうか。

フェイブルマンズ / スティーブン・スピルバーグ

2023.03.04 #34
★★★★☆
スピルバーグ自身の自伝的物語を映画化!と言われ、これは絶対に見なくては、都マークしていたのだが、見てみると、意外なほどに「映画」という要素は希薄で、それよりも歪な家族関係や夫婦関係を中心に描かれる。
劇中劇のどれもが、普通に考えて学生がお遊びで作る映画のレベルを超えていて、めちゃくちゃ面白かった。銃撃戦の閃光を、フィルムに穴を開けて表現するという手法や、戦争描写の砂埃の出し方、血糊の出し方など、普通に今の自主映画制作をしている層がかなり参考になると思われる。とはいえ、こんな風に映画を作る人間なんて、悲しいかな、いないのだけれど。
劇中で主人公は、「見ること」の恐怖を味わうわけだが、見る/見られるという映画の基本構造を、もっと深く、強く意識させていくのかと思いきや、あくまで主題は「家族」に持ってくるという、なんともスピちゃんらしい映画だった。とはいえ、この作品では、「視線」というのが非常に重大な何かであって、不倫関係になっていく二人が代表的で、それを横で見る父、そして祖母、娘、サムの視線が、非常に丁寧に描かれ続ける。
ラストのフォードとのあの有名なくだりのシーケンスは、いささか強引な幕引きに思えたが、確かに考えてみると、あそこから描くことなんて何もなくて。じゃあ全部すっ飛ばして、これで終わっちまうという潔い幕引き、そこに最後の味付けでカメラの視線で追えるというのは、なんか、いいなぁと思った。
感想は全然まとまってないけれど、とにかくいいなぁと思った。

漁港の肉子ちゃん / 渡辺歩

2023.03.13 #35
★★★★★
いい映画だった。何より劇中のご飯が美味しそうで、それを食べる肉子ちゃんの芝居が、本当に美味しそうで、それがよかった。アニメーションにおける芝居って、きっと実写のそれとは大きくは違わなくて、例えば二宮くんのチック症の扱い方にしても、肉子ちゃんの明らかに何かを抱えている設定にしても、語りじゃなくて、「動き」でキャラクターを演じさせる。やっぱりそれは、変わらないんだなと感じた。ダメな奴らはいっぱい出てくるし、きっとダメなやつは周りから馬鹿にされたり、無視されたり、陰口を言われたりしてるんだろう。でも、この映画にはそれはいらないんだよって、監督ないしは脚本家が意図的に、それを描いていない。何か重大なものを抱えたものたちが、周りから肯定される物語だ。二宮のチックを誰も笑わないし、肉子ちゃんを愚かだとは言わない。キクコの母も、許されざる母だが、肉子は肩を持ち続ける。こんなに優しい物語は、久しぶりに見た気がする。私もこの世界に行きたい。

ちょっと思い出しただけ / 松居大悟

2023.03.14 #36
★☆☆☆☆
よかった点は、ホテルで男を見つめながらたばこを吸う直前の伊藤さんの顔。こんなに面白くない映画で、よく自分の恋愛なんて思い出せるもんだな。それは単に映画が退屈で、考える余地があるから、目の前の恋愛風に流されて、雰囲気に流されて、思い出した気になってるだけじゃないのか。お前らが見てきた。やってきた恋愛って、こんなもんなの? ジャームッシュをこういう映画に出して、消費しないでくれ。最後にニューヨークの屋敷と子供できてチャンチャンって、何だそれ。120分風呂敷広げて、最後にチャチャっとまとめたつもりか? 中身ぐちゃぐちゃだよ。

ちひろさん / 今泉力哉

2023.03.18 #37
★★★☆☆
超がつくほど、苦手意識のある今泉力哉作品を、懲りずに鑑賞。飛ぶ鳥を落とす勢いの監督が、今回描くのは、元風俗嬢のお弁当屋さん日記。ミニマルでシンプルで、まさしく今泉力哉印の映画。
私は率直に、この映画が好きになった。中身はいつもと変わらぬダラダラとした日常。90分の物語を今回は130分にしている。映画として大罪だ。私はこの作品の例えばキャラクターの豊かさだとか、日常の気づきだとか、よく言われるそういう部分に惹かれたわけじゃない。惹かれたのは、この監督が一貫して、何かを抱える者に向ける視線の優しさである。どう考えたって何かを抱えている登場人物たちが、何を抱えているかなんて口にもせず、何かを抱えた者同士で生きていく。そういう映画だと思ったから、惹かれた。
この作品では、「風俗嬢がこんなに優しく女神様のように描かれているのが気持ち悪い」と、やや叩かれているが、それはこの作品の根ではない。風俗嬢というのは記号で、それはシングルマザーとかと同じで、抱える者の代名詞な訳で、私はそういう魂胆が見え隠れする彼のフィルモグラフィーに辟易してきたが、それでも、そういうものを描きたいと思うのが作家だろうし、監督なんだと思う。
とにかく、冗長で退屈で、何度か見るのを途中で止めようかと思ったけれど、「違う星から来たんだから」と、”星”の話題が出たあたりから、グッと物語が展開して、魅力的になった。
見ていて、この監督は、ハワードホークスの、物語には全く関係ない、突如訪れるあの牧歌的なシーンが好きなんだろうな、と思った。ジョン・フォードが急に優しさを持ちながら、開拓者たちを火の回りに囲ませ、歌を歌わせる、ああいうシーンが好きなんだろうなと思った。そういうシーンを詰め込んだ映画、と言っていいのだろうか、とにかくこの映画はそういうものを志向しているように思う。
それはきっと、ずっと以前からそうなんだろうけど、私はこの作品で初めて、今泉力哉監督の星を知った気がする。そして、その星は、どことなく私の星にも似ているような気がする。

スポットライト / トーマス・マッカーシー

2023.03.20 #38
★★★★☆
「お仕事映画」を見たい気分だったので、ネットで調べると真っ先にヒット。そういえば、高校生の頃、よく話題に上がっていた作品だ。なんとなく、堅苦しそうで避けていたのだが、思わず見入ってしまった。
キリスト教会(カトリック教会)の、神父による少年少女への性的虐待と、それに対する組織的隠滅行為にまつわる大スクープに挑む新聞社の物語。今なお、全世界的に問題が解決されきっていない、それこそ喫緊の社会事件だ。
この映画を見て、まず真っ先に思うのは、職業的運動の豊かさである。歩く、走る、書く、見る、座る、こういう基本的な動作全てに”新聞記者”のDNAが如き、運動が活写されていた。それはそれは、見事なまでに、登場人物たちが記者なのだ。それはきっと、俳優が、というよりは演出が、という方が正しい。その証拠に、どの登場人物たちも記者に見えるのだ。普通、10人の俳優に芝居させれば、1人くらいはなんだよそれ、という芝居をするものだが、この作品では全然そうじゃない。つまり、やっぱり、この監督の芝居の演出が見事なんだと思う。俳優の表情や喋り方じゃなくて、歩き方、座り方、立ち位置や目線の向き、そういうもので、キャラクターを演出している。すごい。
それらの運動を丁寧に切り取り、テンポを損なうことなく、必要な部分では長く、ゆったりと、ささっと済ませるべきカットは、バッサリカットする、この編集の技術もピカイチだった。編集にとって、ラストカットというのはせめぎ合いなのだと思う。多くの映画では、冗長なエンディングが待っているが、この作品では、ロビーの「スポットライト」と、受話器を受けたその瞬間に映画が終わる。
過不足ない、というのは驚嘆すべき技術の結晶の上に成立する。
ただし、冒頭から話の筋に向かうまでが、やや退屈で、120分を切れる映画だったと感じたので、星4つとしている。だから何だという感じだが。

テラフォーマーズ / 三池崇史

2023.03.22 #39
★★★★☆
再見。ルームメイトの小林くんが、中島かずきファンだというのに、テラフォーマーズは見ていないというから、最後に見ろ!と鑑賞。これほどのいわゆる「スター」を起用しながら、糸も容易く武井咲をぶっ殺す爽快さ。ゴキブリとの切り返しにハッとし、次の瞬間には死んでいる、素晴らしい。ドラマパート、例えば小栗旬の部分や、どうでもいい痴話喧嘩みたいなのは、確かにかったるいのだが、それでも余りある真剣にふざけた画面が勝利。山下智久を完全にバッタにした時は、なんだか無性に幸せだった。三池崇史の前に、有名無名なんてない、皆一様にぶっ殺される対象なんだ、という幸福感。もっとはっちゃけていい。

夜明けまでバス停で / 高橋伴明

2023.03.31 #40
★★★★★
脚本家がSNSで、企画を作っている時、この事件が起きて、「これは私なんだ」と思ったとのこと。これは私なんだ、という感覚は、物語映画の到達点だと思う。作り手が、まず真っ先にそう思っていること、それはどこまで行っても正しさしかないと思う。
さて、本作は私の大好きな高橋伴明監督の新作。『赤い玉、』は、お世辞にも好きな作品とは言えず、そこから若干追えなくなった感覚でいたが、やっぱりバンメイさんはすごい。あっぱれ高橋伴明。
コロナウイルスが猛威を振るい、アルバイト先を失った主人公が、あれよあれよという間に家を失い、ホームレスになり、という映画。白眉なのは、ホームレスたちの描写で、鳥肌がたった。私は数回、大阪の三角公園に炊き出しに行った経験があるが、本当にこんな感じなのだ。取材、お見事。というか、あれは取材だけの力じゃないと思う。そういう存在として、以外にも、しっかりキャラクターの確立に作用しているのがすごいと思った。
コロナ禍を舞台にした映画は五万と作られたし、リモート映画とか、色々と誕生したけれど、結局のところ元鞘に戻るわけで、この映画はコロナ禍を描いた劇映画として、最高傑作だと思えるほどによかった。切実に、この主人公はもしかしたら自分だったかもしれないと怖くなるし、この先もまだ全然ある未来だよな、と感じた。そういう重苦しさだけじゃなくて、根岸季衣や下元史朗といった面々演じる些細なエピソードにほっこりしたり、柄本明と爆弾を作って、シン仮面ライダー顔負けの歩く描写があったり、よかった。苦しさだけじゃない、苦悩の中に拍子抜けするような「ばか」をやるというのは、本当に巨匠のなせる技だと思う。一歩間違えれば、全ての物語が瓦解しかねないシーンを、これほど真剣に、ワクワクさせながら描けるなんて、マジでこんな監督になりたい。

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