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Black Lives (absolutely) Matter ロンドン封鎖日記 #12

アメリカが大荒れですねえ。

ロンドンにもアフリカ系はたくさんいて、僕の友人にもいます。僕の周りであからさまな人種差別を見る事はまあまずありませんが、全体で見るとアメリカ程ではないとはいえやはり似た構造はあり、小さなプロテストも起きています。しかしそれどころではない本家アメリカ。Jokerの時に書いた社会の鬱憤がとうとう表面化した感あります。このままアメリカはMADMAXヒーハー世界に突入していくのか。まあさすがにそれはないと思いたいが。万引き家族やらパラサイトやら、キャピタリズムの呪い・格差社会も時代の潮流ってやつですかね。

奴隷というスーパーハードモードからスタートしたアフリカ系アメリカ人の歴史ですが、様々なブラックリベレーションを経ながら300年・10世代かけてなんとかオバマまで到達しました。しかしそれでもまだまだ道のさ中、社会全体がイコーリティに到達するには程遠い。そんな中で振り子の揺り返しとしてのトランプ登場。更にコロナパニック上乗せどん。

コロナでは黒人がより多く亡くなりました。何故か。それはブルーカラーの労働者が多く、肥満などの生活習慣や健康保険の問題もあったから。それは何故か。貧困層だから。 じゃあそれは何故か。教育や就職などにおいてフェアな機会が与えられていないから。それは何故なのか。貧困層だから。地獄のスパイラルです。そしてその根底には、公民権法が施行されて久しい今も尚、人種差別「意識」の影が見え隠れしています。

あらゆる世界的事変において、最初に煽りを喰らうのは底辺層で、今回のコロナでもそれはずっと言われていました。そこへ更にダメ押しの追い討ち、ロックダウンで(主に貧困層の)多くの人が職を失いました。極まるお先真っ暗感。そんな絶望ストレスMAX状態においてトリガーとなったジョージ・フロイド殺害事件上乗せどん。底辺への重圧が限界突破でついに釜の底が抜けちゃいましたね。ヒーハーってなるのも無理はない。現在大暴れしている人達を、僕は黒人というよりはどちらかというと貧困層という括りで見ています。人種問題は人の意識や経済格差問題とも深く結びついていて、つくづく難しい問題です。

果たしてこの地獄のスパイラルを抜け出す方法はあるのか。

このお題に対して、様々な時代で様々な人達が押したり引いたり色々チャレンジしてきた結果、少しづつゆっくり前進してきました。今の時代、貧困層といっても動画をTwitterで拡散できるくらいの水準ではある訳で、点ではなく線で見ればファクトフルネス的には随分改善してるとも言えます。しかし昔よりはマシと言ったところで貧困には変わりない。ジョージ・フロイドみたいな事件だって未だに無くならない。不満はまだ全然消えません。

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いつの世にも過激派と穏健派がいるもので、黒人公民権運動の歴史にもマルコムXとキング牧師という2大巨塔レジェンドがいます。お互い友人でもあった彼らはX-MENにおけるマグニートーとプロフェッサーXのモデルでもあります。(マーヴェルの数々のヒーロー達を生み出したクリエイターの多くはユダヤ系である事が知られています。彼らは社会におけるマイノリティの苦悩を描き、弱者の味方たるヒーローに反映させています。)マグニートーは破壊的革命を目指し、プロフェッサーXは学校を作って教育的革命を目指します。それぞれ急進的・長期的改革プランとも言えます。それらは問題提起と問題解決のプロセスとしてたぶん両方必要なんだと思います。

マグニートーの感情的な衝動はもちろん理解できるし、啓蒙活動などはどんどんやればいいと思うんですが、暴動までいくと(そりゃインパクトは大きいですが)やはり弊害が大き過ぎて現実的じゃないように思えてしまいます。自分も相手もボロボロになった後で「じゃあお互い仲良くしよう」なんて、ちょっと無理筋です。昭和熱血漫画かよ。とはいえ歴史を見てもヨーロッパ(アメリカもその延長と見れば)は革命好きだし、急進的変化を起こしてきた実績もあるので、僕が「革命とか短絡的過ぎるんじゃね」とか思うのはノンキな日本人だからなのかもしれません。(ちなみに僕はプロフェッサーX寄りなんですが、スペイン人のパートナーがマグニートー寄りなので最近よく口論になります;)

「今すぐ全世界全人類を豹変させる」事ができるのはコロナウイルスくらいのもので、通常可能性としてはほぼゼロです。もちろん自分が今できる事はやりますが、基本的には先人達・自分達の学びをできるだけ多くの若者に伝えて、後の世代に託していくしかできない、つまり世界を変えるには教育しかないと僕は考えます。今回の黒人問題で言えば、教育水準を底上げして、数千数万のオバマをビジネス界や政界に送り込むしかないと思うのです。ウーマンリブにしろゲイリブにしろマイノリティの戦いはアンフェアなアウェー戦が常ですが、そこで腐って破壊行動に出ても、一時的な沈静はあれ結局何も変わらない。それどころか事態悪化のリスクすらあります。どんな高尚な思想が背後にあったとしても、他者を傷つける行動はヘイトを生み軋轢を生むので根本解決に向かいません。不条理への怒りと憎しみはどこかで断ち切らなければそれ以上前に進めない事は、たくさんのアニメが教えてくれてますよ。ビジネス本風に言うならば「双方がWinWinの関係」てやつを見つける必要があるんだと思います。

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アメリカ合衆国というのは、50の国からなる連合国家、EUのようなものです。州ごとに人種や文化も異なり、法律や教育も異なるので、アメリカをひとつの統一意思として見るのは元々無理があります。

リベラルサイドはポリコレやらなんやらやってますが、保守サイドでは今も白人至上主義を「教育」して量産し続けています。科学よりも宗教を重用したり、人種差別や格差構造を維持しようとするエネルギーです。そういう勢力が強い環境下でのマイノリティの戦いは過酷、というかほぼ無理ゲーです。国家としてイコーリティを目指すならば、まずこれをなんとかする必要があります。手始めにその親玉トランプをどうにかできるのか、次の選挙要注目。

一方で、じゃあ黒人側に問題はないのかというと、そっちはそっちで何かできる事があるはずです。ユダヤ系のウルトラオーソドックスのような排他的コミュニティを強行すると、内輪だけのブラザーなカルト集団になりがちだし、それを恐れたり敵視する人も増えます。独自のコミュニティをもつ事は素晴らしいですが、開いて混ざっていく努力ももっと必要なのかもしれません。そしてやはり貧困の中でも教育を受けられるようにする努力。ここをしくじると直滑降でギャング合流です。実際黒人の犯罪率が高い現実があり、警察も注視せざるを得ないという悪循環にもなっています。そこには更に銃社会やドラッグ問題まで絡んできてもう収拾がつきません

そ う だ と し て も!何も変えなきゃ何も変わらない。ゴスペルで毎日神に祈っても、差別ガーって喚いてても変わらない。世界を変えるより自分が変わる方が早いし確実です。オバマもチェンジチェンジ言ってたじゃないですか。あんまり変えられなかったけど。そりゃ一人でパパッとやれるような案件じゃありません。時間かけてみんなでやるしかない。ここまで少しづつ良くなってきたし、この先も良くなっていくと信じて。

キング牧師は「I have a dream」と言い、プロフェッサーXは「Hope is the greatest gift」と言いました。

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とりあえず今願うのは、ヒーハーな人達が鬱憤晴らしにやらかした挙句人死が出て泥沼に突入、というシナリオだけは避けて欲しいという事です。コロナだけでももうみんなお腹一杯なんです。。。


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