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冬の花火 - ロンドン封鎖日記 第2波 #2

また会う日まで、グッドラック。

セカンドロックダウン前夜。平日水曜の夜にも関わらず、突如町中のパブというパブ全てが超満員になりました。皆考える事は同じ、明日から1ヶ月のロックダウンという事で、人恋しさの最後の晩餐に人々が殺到した訳です。「最大6人まで、同居人以外の同伴は不可」という現行規制ももはや知ったこっちゃない。

セカンドロックダウンも基本的にはファーストロックダウンと同じです。不要不急の外出禁止。エッセンシャルワーカー以外は在宅ワーク。生活必需品以外の商店は全てクローズ。飲食系はテイクアウトのみ可。公園での運動などは社会距離を取れば可。唯一違うのは、今回学校は閉鎖になりませんでした。

しかし、今年3〜7月のファーストロックダウンから夏を経たこの2度目のロックダウンは、メンタル的な受け止め方はかなり違います

まず今回は季節が違う事。先月時計が冬時間に切り替わり、現在日没は午後四時半です。11月ともなれば夜は5〜6℃と普通に寒く、夜でも外で延々飲んでられた初夏とは全く違います。

そして今回は皆幾分ロックダウンに慣れている事。ファーストロックダウンは訳もわからないままパニック的に緊急突入したので、皆普通に怯えてました。得体の知れないウイルス感染に恐怖し、家族友人の安否に恐怖し、人とのコンタクトに恐怖し、生活や仕事の先行きに恐怖してました。でも今回は幾らかの経験値を持っています。普通に気をつけていればそうそう感染しない事、感染したとしてもそうそう重症化しない事を知っています。ファーストロックダウンで経験した自主隔離のしんどさを知っています。そしてその後も二転三転しながら現在まで続く規制のあれこれをずっと経験してきています。皆正直心底ウンザリしています

更にそれらを経た現在に至っても状況が少しも改善していない、それどころかむしろ悪化している事。感染状況のみならず、経済的・精神的に消耗しているという事です。この半年で相当数の人々が職を失い人生設計ごとぶち壊されました。休業補填スキームは延長されましたが、トンネル出口の光明も見えず、希望が持てるようなポジティブなニュースも未だほぼありません。

そしてそんなところへトドメのクリスマスがやってくる訳です。年末仕様のTVCMが虚しく流れます。こんなキラキラハッピーメリークリスマスなんてどこの世界にあるんでしょうか。山下達郎で死にたくなる、マライアで無差別殺傷したくなる人みたいな、この絶望感に満ちた状態下で本気で息の根を止めにきそうです。

以上を踏まえて今回のロックダウンがどうなるかというと、皆基本的には一応ルールを遵守しつつも、シリアスに受け取る人は少なそうで、宅飲み往来くらいはもう普通に行われるだろうと思います。じゃなければもうメンタルもちません。その内またデモとか始まるんじゃないでしょうか。

僕も最後の晩餐に友人と飲みに出ましたが、やはり皆背後に陰鬱なモヤモヤを抱えていて、いまいち盛り上がりませんでした。このパブにいる全員がほぼ同じ思いで晩餐に来ている、という奇妙な連帯感だけは、ほんの1ミリ程度ですが一瞬心を楽にしてくれました。なんか一足早いクリスマスイヴみたいな、良いお年を〜みたいな感じで別れて、其々のロックダウン生活に入っていくという…。

自宅で自主隔離しながら、ニュースで米大統領選のグダグダっぷりをぼんやり眺めてたら、ゲシュタルト崩壊みたいな感じで本気で一瞬何がなんだかわからなくなりました。これは本当に現実なんだろうか。どこの世界線に迷い込んだんだ。タチの悪い夢見てるだけなんじゃないかと。加えて年明け早々にはブレグジット。Way too muchてやつですよ。だってこんな事ってある?テクノロジーが素晴らしいSF未来をもたらしてくれる筈だったのに、中世的衆愚ポピュリズムパンデミックとか、なんでこんな事になってんの。なんでこんな頭悪い人ばっかなの。人類マジ進歩しねえ。ドラえもんとか見た事ねーのか。どんだけ素敵な道具を与えようが、猿は自らを焼き尽くす。

そういや外からは何やら花火音がひっきりなしに聞こえてきます。ヤケクソの祝砲かと思ったら、ああそうか、今日はボンファイアナイトか。例年ならカウンシルの花火大会があって、老若男女が公園に繰り出し、MulledWine飲んで、年末気分が盛り上がってくる日ですが、勿論今年はキャンセル。ガイフォークスもロックダウンです。気の毒な地元キッズがノンストップで打ち上げ続ける花火のキラキラと残響が、灰色の霧の夜空に虚しく吸い込まれていきます…。

皆さんハッピーロックダウン。


xx




いつの世も、アーティストという職業はファンやパトロンのサポートがなければ食っていけない茨道〜✨