カリフォルニア留学から帰ってきたが - さあ、これからどうしよか?
ドラッカー・スクールのMBA留学って言ったって、結局はランキング50位程度の学校で、アメリカでの就職という意味では決して優位な学校ではなかった。私は、いずれにしても一度派遣元の企業に戻るつもりでいたし、その決心は揺らぐことはなかった。今のように企業派遣の留学生が会社を辞めたら、全ての学費を会社に返すというような意味のない制度はなかった時代だった。制度があったとしても、辞めたい人は辞めてしまうだろうから。自分が何をやりたいっていう気持ちがお金には関係ないというシンプルなことをそういう制度を作る人は分かってないんだ。でも、私が派遣元企業に戻ろうと思ったのは、そんな理由ではなくて、自分が何をやりたいのか分かっていない中で辞めて、アメリカで転職したり、日本の外資系みたいなところに行ったところで、失敗するに違いないと思ったからだった。自分を留学に出してくれた会社に戻って、今まで海外留学生をうまく使うことのできていない会社の中で、自分から留学生はこうすれば役に立つんだという道を開くパイオニアになってみたかったし、そうすることで自分のキャリアも見えてくるのではないかと思っただけだ。辞めたり、アメリカに残ればいいというものではない。慎重になりすぎてもいけないが、キャリアについては焦ってはいけない。
アメリカにいる間に、今後どうするかを決めようと思っていた。そのために、自分とは全く違う道を歩んできたアメリカ人の友達や、他の国の友達、日本人とも今後のキャリアについていろいろと話し合った。びっくりしたのは、結構びっくりしたのは、当たり前と言われれば当たり前なのだが、しっかりとした考えを持っている学生が多かったことだ。コンサルで行くと決めているので留学前よりもいいコンサルティングファームに就職する、CPAとしてドイツで働いていたがアメリカの5大会計事務所に転職する、など道がクリアに決まっているのだ。自分が何をやってきたのか、何をやりたいのか分からないままMBA留学をしていることに、今更焦りを覚えてしまった。
そんな中、自分の興味は留学中にとんでもない方向に向かっていった。今までの経歴も関係ないし、知識もない、それがアントレプレナーシップだった。ドラッカー教授も本を書いていたしクラスでもアントレプレナーシップには良く触れていた。ビジネススクールのアントレプレナーシップの教授は、実際に自分で事業を立ち上げた経験をもとに講義をしてくれる教授だった。学生たちの中にも自分で会社を起こして成功、もしくは大失敗しているような人たちもいた。ケーススタディも他のクラスに比べて、ぞくぞくするくらい面白かった。Riskとそれに伴うRewardの振れ幅が他のビジネスと違い過ぎて、一気にその魅力に取りつかれた。これだと思った。でも、自分が今いる会社は大企業だった。私はエネルギー関連の会社の資材調達部門に所属していて、そこから留学していた。ちょうど海外からの調達がだんだんと増えてきていたので、その分野で海外ベンダーを調査して、今後の国際調達計画を立てるような仕事はできると漠然と思っていた。でもそれはアントレプレナーシップとは何も関係がなかった。
そんな中、会社からニュースが飛び込んできた。エネルギー業界も自由化が進んできていて、それに対抗する手段として新しい事業を立ち上げるために新規事業開発の部門ができていた。しかし新規事業のネタを思いつくような人材がいないため、ネタ探し、案件探しのために、ベンチャー企業やベンチャーキャピタルに投資を始めていた。中でも、アメリカのボストンにある大きなプライベートエクイティファンドのベンチャーキャピタル部門の新しいファンドに投資をしたニュースは私の目を引いた。常駐者も一人現地に送り込むらしい。これだ。そして3年後、私はボストンに住んでいた。
と書けば格好いいが、それまでの3年はとーーーっても大変&必死だった。資材調達部門に戻って、海外企業からの国際調達を任されると思っていたのだが、実際は通常の機器の国内の購入を担当することになった。国際調達への移動をお願いする傍ら、私は他の機会も探していた。普通の資材調達の仕事をして1年が過ぎた頃、その頃盛んに行われ始めていた社内公募制で2年間ベンチャー企業に行って仕事をするという募集があった。これは一体何なのだと思ったのだが、よく見てみると新規事業部門での公募であった。会社の中にベンチャー企業での仕事の仕方とか事業の立ち上げについてわかっている社員がほとんどいなかったために、ベンチャー企業に出向させてそこで経験を積ませようと言うものであった。そして2年後に会社に戻ってきて、新規事業の立ち上げに対する貢献を期待されているのだった。この社内公募は、異常に人気が高く、100人以上の応募者があった。選ばれるのは一人。社内公募の話と、その後のベンチャー、ベンチャーキャピタルへ進む話はまた次に書こうと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?