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【連載小説】「好きが言えない3 ~凸凹コンビの物語~」#最終回 ここから、はじまる

⚾【前回のお話 #18 ダッシュ!

ここまでのあらすじ

二週間の活動停止処分を受けた野球部。
しかし部長の路教は大津とともに、個人練習という形で「部活動」を継続する。

自主練習を開始して少しした頃、野次馬の中に三浦の姿を見つけた。
一緒にまた野球をやろう。
部長の誘いに三浦は最後の抵抗をする。

そばにいた大津が、三浦の投げた必死に球を追いかけキャッチする。
その姿を見た三浦はもう一度野球をやろうと決め、部に戻ったのだった。


19 エピローグ

 今年の夏は例年以上に暑い日が続いている。

 県大会決勝戦。
 一対零でわずかにリードを守るK高だが、疲れを見せる本郷センパイのボール球が続き、九回裏にしてツーアウト満塁。
 長打が出れば逆転負けを喫する局面を迎えている。

「祐輔。もう一踏ん張りだ。
 後アウト一つで決まる。
 打たれてもいい。
 野手陣が必ず捕るから落ち着いて投げろよ。
 押し出しだけは無しで頼むぜ」

「ああ……そうだな」

 最後のタイムを取ったとき、部長の言葉に答えた本郷センパイの声は弱々しかった。
 炎天下でひとり、ずっと投げ続けてきたのだから無理もない。

 後アウト一つ。

 その壁がいかに高いかはみんなが理解している。
 タフな本郷センパイでもこの重圧に耐えきれるかどうかは微妙と言えそうだ。

「大津……。真ん中、投げてもいい?」
 本郷センパイが言った。
 おれはキャッチャーとして冷静に発言する。

「……打たせるつもりですか?」

「部長の言うとおりにしよう。
 ……もう、仲間を信じるっきゃない」

 抑える自信はない、と宣言したも同然だった。
 疲労が限界に達していると判断する。

「……OK。おれも野手を信じましょう」
  
 こうして定位置に戻ったおれたち。
 部長が持ち前のでかい声で「みんなで祐輔を支えよう!」と鼓舞すると、野手陣からいい返事が戻ってきた。
 本郷センパイの表情からやや硬さがとれたように見えた。

 センパイ、いいとこ投げてくださいよ?

 祈るように対面し、ミットを構える。
 センパイは何度も深呼吸をし、タイミングを計る。
 バッターが構えたのを確認するとモーションに入った。

 腕が振れる。
 バットが動き、球をとらえる。
 ミットが空をつかむ。

 球はまっすぐ正面高くに飛んでいく。
 向かう先には、センターの三浦がいる。
 その俊足が、悲鳴と歓声の中を駆け抜けていく。
 ホームラン級の長打。それをひとり追う、三浦。

 頼む! 捕ってくれ……!

 やつが振り向きざまに腕を伸ばす。
 フェンスがすぐそばまで迫る。

 もしかして、超えるか……?!

 ホームランを覚悟したとき、やつはフェンスに足をかけ、飛び上がった。
 球は、グローブに収まった。

 飛び跳ねながらこちらへ駆けてくる三浦の表情は満面の笑みだ。
 おれたちも本郷センパイの周りに集まって喜びを分かち合う。

「ありがとう、みんな、ありがとう!」

 誰の声かわからなかったが、確かにそう聞こえた。
 それはここにいる全員の内なる声だったのかもしれない。

 見てる? ばあちゃん。
 いつかハヤトとおれの区別がつかなくなっちゃったとしても、おれは野球を続けるよ。
 そのくらい、今は楽しい。
 ここで仲間と一緒にいられることが。
 一心不乱に走れることが。

 試合終了のサイレンが鳴り響く。
 決勝戦は終わっても、甲子園が待っている。
 おれたちの夏は、これから、始まる。
 

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