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SS【大噴火タイプ】
多くの人たちはどんなに腹が立っても、一線を越えることは稀である。
その後に自分が払うであろう代償を考え、ブレーキをかけるからだ。
ブレーキの効かない車など街を走れないように、怒りのブレーキの効かない人間は、周囲を不快にするだけではなく、その身を滅ぼす。
ぼくの彼女もそんな怒りのブレーキの効かない人間の一人だ。
ぼくが身をていして止めないと、取り返しのつかない所まで行ってしまいそうな勢いで怒る。
そんな彼女となぜ付き合おうと思ったかといえば、専属で制御する人間が必要だと思ったからだ。
つまりボランティア精神だ。
彼女はぼくと居ると穏やかに過ごせるという。
彼女の前で怒っている姿を見せたことが無いからかもしれない。
ぼくは争いごとが大嫌いで、滅多に怒らない。
ぼくが怒るのはよほどのことだ。
ある日、ぼくが予定よりかなり早く仕事から帰ってくると、彼女が男を連れ込んで、ぼくが朝作っておいたカレーを二人で食べていた。
二人とも下着姿で、食べる直前までしていたことは容易に想像できた。
気がつくとぼくは一人でカレーを食べていた。
重労働になるから、しっかり食べておかないと力が入らない。
鈍器で撲殺した二人を誰も居ない場所まで運んで埋めなければならない。
ぼくは彼女には黙っていたが、怒りを処理できない一番タチの悪いタイプだ。
普段は怒らないが表に出さないだけで、その怒りのマグマは人知れず溜まり続ける。
それは少しずつ地表に近づき、いつかは大噴火を起こす。
後悔した時には遅いのだ。
だから怒りを小出しにして大きな噴火にならない彼女がうらやましかった。
彼女が懲りずに何回も浮気しなければ、こんなことにはならなかっただろう。
次はもっと一途な子を探すとしよう。
終
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