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SS【天国と地獄の心のありかた】


けたたましいサイレンの音が、天国のとある町に響き渡った。


川や広場で遊んでいた子どもたちは顔を見合わせニヤッとする。

一人が「飯だ!」と叫ぶと、みんなで嬉しそうに家の方へ駆け出した。




一方、同じくサイレンの音がけたたましく鳴り響いた地獄のとある町では、人々が「敵襲だ!」と叫び、周囲を警戒しながら丈夫な建物に身を隠した。

まるで何かに怯えるように。





天国にある小高い山には、秋になると多くの人が訪れる。


柿や栗などの秋の味覚をみんなで楽しむためだ。


とれたものは山に入る体力の無い者たちにも配られた。


一方、地獄にある小高い山の入り口には、よそ者が入らぬように触れると感電する柵が設置してある。

どうにか柵を越えて進んだ者は、あちらこちらに仕掛けられた罠で命を落とした。

実った秋の味覚を一部の人間が根こそぎかき集め、飽きるほどむさぼったあと、余った分は法外な値で売りさばいた。


百年に一度のかんばつとなった天国の村では、田畑が乾ききって作物が枯れてしまった。

人々は少ない水や食料をみんなで大切に分けあった。

大人が我慢する分、子どもたちには少しでも多く食べさせた。

みんなで力を合わせて村のあちらこちらに井戸を掘り、飲み水を確保すると、今度は川からの水路を整備した。


一方、百年に一度のかんばつとなった地獄の村では、この先、食料の確保が厳しいと知った村人たちは、暴徒と化して少ない水と食料を奪いあった。

争いの犠牲者が出たことで村の働き手は減り、水の確保はさらに困難になった。



地獄なんていうのは迷信だとぼくは思う。

ただ一つだけ確かなのは、どこに住んでいても、そこにいる人たちの心のあり方一つで、天国にも地獄にもなりえるということ。


誰よりもぼく自身の心のありかたで変わる。

自分の外側に問題の原因を求めるのではなく、自分の内側に機会を見出す。

そんな人でいたいとぼくは思う。

きっとそれが天国への入り口に続いているから。





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