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SS【ピンポンダッシュ】
「ピンポーーン!! ピンポーーン!!」
今日も悪ガキたちがやって来た。
ここ最近、一人暮らしの私の家はピンポンダッシュの被害にあっている。
用もないのにチャイムを押して逃げていくしょうもないイタズラだ。
近所では小学生くらいの子どもたちがよく遊んでいる。
以前、その中の一人が走行している車に雪玉を投げているのを見たことがある。
あの子かもしれない。
玄関を開けるとあんのじょう誰も居なかった。
ピンポンダッシュなのだから当然だろう。
逃げ足が速くて姿も見えない。
近所の人の話では、以前ここら辺はたまに不審者が徘徊していて、最近は姿を見なくなったらしい。
私は最近、この中古の家に引っ越して来た。駅や大きな公園から近いわりには安かった。
家が古いし決して広くはない。でも造りはしっかりしているし、二階建てで小さいながら庭もある。
状態が良いのであと数十年は住めるだろう。
私は二階の部屋を寝室にすることにした。
ただこの家には問題もあった。
トイレの窓ガラスが小さく割れていたのと、チャイムが壊れていて、業者に調べてもらうと壁の中の配線が切れているらしく、直すのは大掛かりになってしまからとワイヤレスチャイムを勧められた。
玄関前の壁に両面テープで貼り付けられた送信機のボタンを押すと、家の中の受信機に電波が届き、音や光で知らせてくれる。受信機は階段の上り口にある柱にぶら下げた。
ただ、ピンポンダッシュは感心しない。
ピンポンダッシュが頻繁になってきたので、誰が来たか分かるように監視カメラを設置した。
カメラに映るのは近所の人か宅配の人くらい。
あとは野良猫くらいだ。
しかし数日して私はあることに気づいた。
カメラはチャイムを鳴らす人を確実にとらえる位置に設置してあるというのに、チャイムが鳴っても誰も写っていない時があるのだ。しかもチャイムの音が変わる時もある。
これは不良品だと私は思った。
安いものを選んだのは失敗だったかもしれないと。
その日の晩、そのことを電話で親友に話すと、たまたま親友も同じタイプのチャイムを使っていたらしく、「それはありえない」と言った。
「じゃあ何?」と聞く私に、親友は思いがけないことを口にした。
「今日はずっと一人だった?」
「え? 何が?」
「だから今日一日、家に一人で居た?」
「今日はずっと家に居たし一人だったよ。何でそんなこと聞くの?」
「玄関の外の送信機のボタンを押せば、家の中の受信機から音が出るよね」
「そりゃそうでしょ。ワイヤレスなんだもの」
「でもね、チャイムの音を変えるには、絶対に家の中にある受信機の方で操作する必要があるんだよ」
「え? それって・・・・・・ねえ、どうしよう・・・・・・誰かが階段をのぼってくる」
終
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