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〜 金魚 Vol.2 〜





物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪


〜 金魚 〜

帰り道は、楽しくてしょうがない
それもそのはず、学校の授業が終わり帰れるのだから
寄り道はダメだって言うけれど、通り道にあるのだから仕方ない
大学生になった私は電車通学をしている
のだが、世間で言う街の中心地を抜けて通っている
美味しそうなお店や、流行りのお店、洋服を見に行こうと思えば、ちょっと歩けば見に行ける
誘惑だらけの帰り道は、私にとって楽園のようなものだった
このまま家に帰らずに、ずっと遊んでいたい
そんな気持ちのまま、夜も遅くまで遊ぶことも多かった
『今日は、どこに行く?』
『カラオケ行こうよ♪』
駅に着くなり私達が向かったのはカラオケ
『とりあえず3時間!』
『いいねぇ♪』
毎日話す友達との会話も飽きることなく、今日も遅くまで遊びまくる
そんな事をして過ごす毎日は、今となってはいい思い出になっていると思う
しかし、目の前にいる娘を見ながら、そうはならないで欲しいなと思う私は、自分の母にごめんね、と言いに行かなければいけないかもしれない
·
学校から帰って来るなり、遊びに出掛けようとする娘
もちろん手には携帯電話
『ママ?何時まで遊んできてもいい?』
『そうねぇ。18時には帰ってきてくれると嬉しいな?』
『じゃあ、18時に帰ってくるね』
『何かあれば電話してよ?』
『分かってる!』
そう言って、中学2年生になる娘は遊びに出掛ける
携帯電話を手にするなんて、私が中学の頃には考えられない
時代は変わっていくものである
『さっ。買い物でも行くか』
夕飯の支度をするべく、私は車で買い物へと出掛ける
車の中では自分の好きな曲を聴いて、歌いながらスーパーへ向かう
『ママうるさい』
先日、娘に言われた言葉が頭をよぎる
娘を習い事に送る道中、ちょっとテンションを上げていたら、厳しい一言を頂いたのだった
とかいう娘もノリノリで聴いてたのは言わないでおこう
最近、ところどころ娘に自分を重ねて見てしまう
大きくなったなぁ。
しみじみと思う私は、自分の母を思い出す
母も同じように感じていたのだろうか
母になってみて分かることも多いのは確かだ
ふぅ。と一息ついた私は、右にハンドルを切っていく
·
夕飯の支度を終え、後は娘の帰りを待つばかり
ふと時計を見ると18時を回っている
どうしたのだろう。いつもなら、もう帰ってきていてもいいはず
いつもより遅いと感じる私は、娘の安否を気にするようになっていた
心配性の私は、良からぬ事態が起こるのではないか、今か今かと帰りを待つ
20分過ぎても帰ってこないし連絡がない
私は、居ても立っても居られず自転車で近くを探し回る
どこ?もしかして事故に巻き込まれた?
最悪の事を考えながら走る私は、目の前に見たことのある影に気が付く
近くに行くと聞き慣れた声がする
『あれ?ママどしたの?』
『どしたのじゃないよ!ママ心配して探してたの』
そう言って溢れる涙を拭う
『なんで泣くの』
『だって、ちゃんと元気で見つかったから良かったなって』
『・・・ごめん』
頬を伝う涙を拭きながら、私は娘を抱き締めた
娘を抱き締めながら私は思い出す
私の帰りが遅いと、鬼の形相で怒り狂う母の事を
『ふっ』
『笑ってんの?ママ』
『笑ってないよ。ふふ。ママもね、帰りが遅かった事があったんだけど、その時は、いつもおばあちゃん鬼になってたなぁって事を思い出してた』
『おばあちゃん怒るの?』
『めっちゃ怒ってた』
『ママは私には怒らないの?』
『んー。そうだなぁ。ママは怒るよりも心配で泣いちゃうもん』
そう言って娘の目を見ながら私はにっこり笑う
『でも、おばあちゃんが怒る理由も、ママになって分かったよ』
『え?じゃあ怒るの?』
『はは。ママは心配して泣いちゃうから、ちゃんと帰って来てね?』
『ごめんなさい』
『金魚』を付けている娘の頭をポンポンを軽く叩き、ゆっくりと家路へと帰る
·
きっと母も同じ気持ちだったのだろう
不安で心配で、しょうがなかったのだと
気持ちが抑えられず、ありったけの想いを私にぶつけていたのだろう
私の場合は、泣いてしまうくらい心配なのだが、母は怒りになって私に届けていたのだろう
その時は分からなくても、自分が母になって気が付く
昔の私に反省もしつつ、待ってくれていた母の気持ちを静かに受け入れた
今度会う時に〈ごめん〉て言ってみようかな、と
·

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