見出し画像

フランスの鳩は何故ぽっちゃりしているのか【フランス留学のススメ】

まるまる太ったピジョン。

通りを歩いていると、首が胴体にうずまった鳩たちが 
ひょこひょこ重そうな身体をひきずりながら歩いている。
平均して日本の鳩の二倍は肥えている印象。

この光景は、エッフェル塔や凱旋門に代表される華の都パリでも、畑が広がるのんびりとした田舎でも、フランスのどこへ行っても見られる。(私調べ)

フランスに暮らし始めた当初、こんな光景をあちこちで目にした私は、

なんでこんなにもフランスには鳩がたくさんいるのだろうか?
そんでもって、飛ぶのに支障をきたすほど丸々と肥えているのは何故?

と疑問を抱いた。

今回は、私の個人的観測からこの謎を解き明かしていきたいと思う。
(初めに断っておくがまったく科学的根拠はない!!!)

まず初めに、鳩に対するイメージ調査をフランス人たちに行った。
「Comment est-ce que tu trouves les pigeons dans les rues? (その辺にいる鳩たちどう思ってるん?)」

友人A「まあ鳩だよね」

”まあ鳩”

いや、そりゃそうなんだけど!!
そういうことを聞いてるんじゃなくって!(笑)

他多数の友人に同じ質問をしてみたが、似たような返答しか返ってこなかった。鳩に対するイメージは日本人が抱くものと大して変わらないのかも。

だが、それでは謎が解決しないので、私は引き続き調査を行った。
(調査というか、ただ日常的に鳩の群れを眺めるようにしただけなのだが)

結果的に鳩の繁殖及び肥大化に貢献していると考えられる要因は以下の通り

1鳩のライバルとなる他の鳥類がいない
2フランス人は鳩に餌を無意識に与えがち
3フランスパンは鳩にとっても世界一

こいつ真面目に何言ってるん?と思われる方もいると思うので、まあ順々に説明していこう。

まず第一に、フランスにはカラスがほとんどいない。スズメもしかり。

なぜ?さあわからん。気候の関係?専門家でもなんでもないのではっきりしたことは言えないのだが、ただ確実に言えることは、街に居る鳥類のなかで、マジョリティを占めているのは間違いなく鳩なのだ。というか鳩以外の鳥をめったに見かけない。

そう、ここフランスでは、鳩が覇権を握っているのである。ゆえに、鳩は他の鳥類との競争なしに餌を独占できるのだ。

第二の理由として、フランス人は外で太陽を浴びながら食事をするのをとことん愛しているという点が挙げられる。

フランスでは街の至る所にベンチがあり、よく晴れた日には、近くのパン屋で買ったサンドイッチやクロワッサンをほおばる人の姿があちらこちらに。
大学のお昼休みでも、屋内に空席があるにもかかわらず、皆、外のベンチに座りたがるのである。とにかくフランス人は日の光を浴びないと生きていけないらしい。

そして当然のごとく、皆パンの欠けらを地面に残して去っていく。
これがわんさか居る鳩たちの餌となる。

人間が去ったベンチには、待ってましたーー!とばかりに鳩が群がり、あっという間に地面が元通り綺麗になる。これもあってかなんでか、フランス人は自分たちが食べた後の掃除をあまりしない傾向にある。(屋内のテーブルはさすがに掃除しろよ、と日本人の私はたまにイライラするのだが)

最後に、フランスは人間にとってはもちろん、鳩にとっても(おそらく)、世界で一番おいしいパンを手に入れることができる場所なのだ。

フランス=美食の国 という定説は誰もがフランスに対して抱く典型的なイメージの一つだろう。この記事を書いている私ももれなく、そんなイメージを胸に抱いて渡仏した。

現地に着いて初めて、「Un croissant s'il vous plaît. (クロワッサン一つください。)」と、少し緊張しながら近所のブーランジェリーで買ったクロワッサンは、

そんな私のミーハーな期待に応えるどころか、上りに上がったハードルを軽々と飛び越え、私の味覚に新たな境地を切り開いてみせたのだ。(おかしな表現だが、本当にそんな体験だった)

もう、ほんとに、信じられないくらい美味しい。なにこれ、今まで食べてたクロワッサンはなんだったの。。。

一口食べ進めるごとに感動し、パン屋の前で一人でぶつぶつと何事かつぶやくアジア人(私)は、現地の人からしてみればさぞ奇妙に映っただろう。

当時の私はそんな他人の目も気にならないほど、フランス産の小麦の豊かな風味、そしてぶわっと香るバター(ふわっとじゃない)の旨味に打ちひしがれ、フランスのパンのレベルの高さに感動したのである。

鳩に人間と同等の味覚があるかは分からないが、私が思うに、フランスの鳩が肥えている最大の要因はここにある気がする。

小麦、バターという糖と脂質の最強コンビ。
こんなもん日常的に食べてたら、自然と肥えるわ。

うん。そりゃそうだ。

(プチ補足として、フランスではパンの食べくずのことをミエットという。ミエットは美味しいパンの証で、ミエットが出ないクロワッサンは彼らにとってクロワッサンではないとまで言うから驚き。そういえば、クロワッサンをパンというカテゴリーに入れると怒り出す輩がいるので、フランス人のパンに対する情熱と口うるささは、また別記事にしたいと思う)

なにはともあれ、生まれ変わったら切実にフランスの鳩になりたい。
なんてったって、こんなにも美味しいパンを無料で心ゆくまで味わえるんだから。そう、フランスは鳩にとって、餌の尽きることない楽園のような場所なのだ。


ということで、こんなところで私の個人的見解を終えたいと思うのだが、
鳩観察を続けていたら、体格以外に新たに気づいたことがある。

フランスの鳩はなぜか、フランス人に似ている。
というのも、日本の鳩と比べて圧倒的にアグレッシブなのだ。

というか、とてつもなく人慣れしている。TDLにいる鳩もなかなか図々しいが、フランスの鳩はそれ以上に人に距離感がバグっている。まったく物怖じしない。お前さんはカラスか!と突っ込みたくなる。

なんとも生意気な表情で人間に近づき、餌が落ちていないかと我々の足元を悠々と徘徊し始める。現地の人も慣れた様子で、誰も鳩の存在を気にしていない様子。

また、仮に人間が足で追い払う素振りを見せても、日本の鳩のように瞬く間に飛び立ったりせず、ゆったりと餌パトロールを続けるのだ。なんたる図太さ

そして人間が立ち去った後は、我先にと残されたミエットに群がり、せっせと地面を突っつきまくる。

犬は飼い主に似るとよく言うが、鳩についても同じことが言えるのだろうか。同じ土地に生きると、性格は自然と似てくるのだろうか。(こんなことを呟いているとフランス人から怒られそうな気がするが)

先日、フランス人の好戦的な性格について記事にしたので、よかったら(^^)


人から動物に至るまで、図太く厚かましいかと思えば、人間味があって、なんだか憎めない。これだから、やっぱりフランスという国は面白い。

留学生活残り4か月、引き続きフランス人とフランスの鳩の謎の生態についてさらに深堀りしていけたらな、と思う。

















この記事が参加している募集

#一度は行きたいあの場所

52,829件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?