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なぜ、自分をオタクだと言いたがる若者が増えているのか|『新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動』


なぜ、若者は自らを「オタク」と言うのか。

最近でこそ、何となく「そう言っても虐げられる世の中じゃないんだな」とわかってはきたが、最初の頃は心底驚いた。

この本は、著者がオタクを4世代にわけて、特に刊行当時(2015年)の若者だった第4世代を分析した著書である。

ちなみに、オタクの世代の分け方は下記の通り。

オタク第一世代──教養主義で選民意識が高い
1970年代中期から80年代前半にかけて、日本にアニメブームが起きました。このブームを青年期 に担っていたのがオタク第一世代です
(中略)
オタク第一世代の特徴は、とにかく博識であるということ。そして、ある種の選民意識が高いということだと言われています。

『新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動』

オタク第二世代──オタク文化に対する誇りと鬱屈
第二世代のオタクは、多感な時期に直接的な迫害を受けた世代でもあると言われています。1988年から88年にかけて起きた東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件の犯人、宮崎勤のオタク像がマスコミによって社会に知られることとなり、オタクの典型的な外見的特徴(身なりに気を遣わない)内面的特徴(根暗、社交性に欠ける)が定着してしまったからです。

『新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動』

オタク第三世代 ──ネットの活用と所有欲の減退
現在の20代後半から30歳前後にあたる第三世代は、ゼロ年代を10代で過ごしました。ゼロ年代に遠からず関連するオタクジャンルとしてライトノベルが勢いを増してきました。
(中略)
オタク第三世代の特徴としてまず大き 世代にみられたような教養主義がだいぶ薄れてきたことです。
(中略)
一般メディアで定型化されたオタク像を押し付けられていたのも第三世代です。2000年代初頭に秋葉原に誕生したメイド喫茶、 『電車男』ブーム(2004年)は、当時マスコミがオタクを説明するのによく利用された現象でした。
(中略)
第三世代オタクたちがゼロ年代後半以降、何にお金を使い始めたかというと、イベントやライブといった『体験型消費』です。

『新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動』

オタク第四世代 ──ライト化とリア充化
本書で主に取り上げている現代の若者オタク、現在の10代後半から20代前半が占める第四世代の特徴を考える時、2000年代半ばごろから始まった秋葉原電気街の再開発は無視できません。
(中略)
秋葉原は どんどん〝綺麗な〟街になり、観光地化が進み、訪れるオタクのライト化に拍車をかけたとも言えるで しょう。
(中略)
2005~6年くらいの時期から、オタクは「生き様」ではなく、「キャラ」「ファッション」になっていきました。

『新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動』

本書で「第4世代」と呼ばれるオタクには、本来の意味に近い「オタク」と、いわゆる「エセオタク」が存在する。

なぜ、本来であれば良い意味ではない「オタク」を装い、自称するまでになるのか。

「オタク」と呼ばれる、あるいは自称する人のなかに、このような超勝ち組が多く現れている、という事象自体は大変興味深いと思います。スクールカーストの下位にいるイメージのあった旧来のオタク像が頭にある人にとっては、想像できない事例が増えているのです。
オタクとは今や、一生ついて回るような「タイプ」でもなければ、パーソナリティの根幹をなす「アイデンティティ」でもなくなっており、手軽で着脱可能な消費の対象ともなる「キャラ」になっています。

『新・オタク経済 3兆円市場の地殻大変動』

それは、SNSを含む自己アピールのアイコンとして「オタク」が有効なものであること。
特に、“意外性”という面で大きく作用し、また、多くの時間をかけなくても「●●オタク」と名乗ることで少ない時間でそれを名乗れる手軽さも、要因の1つだと言う。

時代が変われば感覚も変わる。
市場の動きとしても興味深い1冊です。


数々の流行語を生み出した著者の書籍


著者は 原田曜平。

前述の通り、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー等を経て、現在はマーケティングアナリストとして活躍している。

尚、2013年「さとり世代」

2014年「マイルドヤンキー」

がユーキャン新語・流行語大賞にノミネート。「伊達マスク」という言葉の生みの親でもあり、様々な流行語を作り出している。

「Z世代」は2021年のユーキャン「新語・流行語大賞」のトップ10に選出された。

上記の本は未読だが、先日感想を書いた『それ、なんで流行ってるの?』も原田曜平の著書である。

出版社は 朝日新聞出版

掲載誌・レーベルは 朝日新書

発売は 2015年09月


結論から言うと、この情報ももう古い

らしい。
と、言うのも、著者は違うが

で、「今の若者はもうオタクは名乗らない」という話があった。

本書では、自己アピールのアイコンの1つである「オタク」もSNSで「オタク」を自称しても、すぐに自分より詳しい「オタク」が現れてしまい、アイコンとして意味を成さなくなってしまうからだそうだ。

今は「推し」と言うそうだ。
そういえば、「推し活」という謎現象もあった。

ただ、この辺は「アイデンティティの融合」とか、(いわゆる、自分の属性をどこかへ置き、価値を高めようとする行為)その辺も相まってくるのでややこしそうだ。

本書では、何か明確な答えが出ている訳では無い。
あくまで著者は分析と、それに基づいたビジネスを思い描いているだけに留めている。

ただ、関連書籍も含めて、私たちが思っている以上にSNSが生まれる前と、後の世代では感覚も、見えているものも、全く違うのだ、というのは認めざるを得ない。

私のような(ちなみに、私はオタクではないけど、オタク第2世代に当たる年齢)「自分が好きだ、ってだけじゃダメなの?」というのは根本的な意味では変わらないけれど、時代の感覚で言えば「違う」のだろう。


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