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#286 Readinessの重要性から考える「学びの土台」の重要性

 Readiness(レディネス)とは学習のために必要な準備状態を意味する心理学用語です。学習の前提となる知識や経験、環境などが整っている状態を指しており「心身の準備性」といわれる場合もあります。レディネスがある学習者は自ら興味を持って学習を進められます。一方、レディネス(必要な準備)を共なわい学習は、効果を上げることが困難とされています。

 例えばまだアルファベットを習ったばかりの英語学習者に難関大学の入試問題を課題として与えても、その学習効果は皆無に等しい。

 何かの行動を行う上で、常に「適切な準備」が必要です。適切な準備が完了していない状態で、その行動を行っても、うまくいく確率は非常に低くなる。最悪の場合、その失敗がトラウマとなってしまうこともあります。

 「適切な準備を欠いた学び」は学校教育の中でもしばしば起こる。私が勤めていた私立中高一貫校もまたその例に漏れない。中学校3年生の段階で、非常に長く抽象的な英文を読ませる訓練をする。そもそも彼らは抽象的な内容を日本語で理解できる力がまだない。そのような内容を学習して2年ちょっとの外国語で読む。普通に考えたら不可能なのですが、「進学校」という冠がそのような無謀なカリキュラム作成に影響を及ぼしているのかもしれない。

 日本(もしかしたら世界でも)では、『早熟』の価値が高く、どんどん難しいことをやればいいという傾向があるようです。

 幼児教育のパイオニア「こぐま会」の代表を務める久野泰可氏は「小学校入学前に大切な学び」として『幼児期にふさわしいものの見方や考え方の基本を身に付け、小学校入学後に始まる教科学習の土台をしっかりと作ること』と『対話』の2つを挙げています。

 同氏は記事の中で

ですから親は、子供がこのように一歩ずつ成長していくプロセスをおろそかにしてはいけないのです。早めに「型」だけを教え込み、子供が時には失敗して後戻りもしながら試行錯誤する体験の機会を奪ってしまうようなことがあれば、子供は自分から知りたい・学びたい・試してみたいといった意欲や好奇心の芽を摘み取られ、無気力になったり、じっくりと考えたりしなくなったりします。行き過ぎた低年齢化が進む中で、こうした弊害はあちこちで起きています。子供と関わる現場の先生たちはすでに実感としてわかっているでしょう。

親のひと言が子供に新しい視点を与えることもある。だから対話は、子供の成長にとって、親のとても大切な役割であることは間違いないでしょう。

 と述べています。私たちは成長しながら様々な体験を通じて知識・技能・思考を獲得していきます。その段階に合わせた「適切な準備」があるからこそ、その課題を乗り越えていけるのではないでしょうか。

 記事の最後で久野氏は

小学校受験を考えている保護者からは、よく「家庭では何をすれば良いですか」と聞かれます。小学校受験では、学校側からの情報もあまり開示されていませんので、多くの方は幼児教室に通うという選択をすることになるでしょう。ですが、この幼児教室の選び方が大変重要です。幼児教室によっては、早いうちから難しいことをやれるようにすることが合格につながるという考えのもと、3歳くらいから過去問を何度も繰り返させるなど、決して幼児期にふさわしいとは言えないような詰め込み型の訓練で小学校受験を突破しようと考えているところもあります。確かにこの方法で受験は突破できるかもしれませんが、合格はその子にとっての人生のゴールではないのです。
 詰め込み型の教育をした結果、子供が燃え尽き症候群のようになり、入学後に学ぶ意欲をなくしてしまうこともあります。小学校受験を考えておられる保護者は、いつもこの考えを心に留めて、子供の発達段階に合った環境を見極めてほしいですね。

と述べています。

 人生100年時代に突入しつつある今、生まれて7歳までの学習スピードなどそんなに大したことはありません。それよりもしっかりとした「土台」を作ること。それは「学び」のための、そして「安心できる家庭」の土台であるべきなのです。


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