見出し画像

夜明けの一本杉 Vol.1 ~高澤ろうそく~

初めまして!一本杉通り振興会でインターンシップをさせていただいています、大学4年生の近藤と大学2年生の森です。今回から、私たちインターン生から見た一本杉通り商店街の魅力を発信していきます。

夏休みの1か月間、一本杉通り商店街の皆様にご自身のお店や商店街、復興への想いについてインタビューをさせていただきました。この記事を通し、商店街の皆さんの持つ溢れんばかりの魅力はもちろん、震災を経て新たな一本杉通りが育まれていく様子と、そのワクワク感を読者の皆様と共有できたら幸いです。どうぞよろしくお願いいたします!

初回となる今回は、七尾で130年以上和ろうそくを作り続けている高澤ろうそくの高澤久さんにお話を伺ってきました。有形文化財でもあった店舗は震災により全壊し、現在は仮店舗で営業を再開してらっしゃいます。高澤さんの語るお店のこれまでと今、そしてこれからについての想いをお届けします。(森)


その日

ー震災当日は何をされていらっしゃったんですか。
実は僕たちは七尾にはいませんでした。両親は七尾の自宅にいたんですが、僕と妻、子どもたちは妻の実家に行っていました。家に到着して少しゆっくりしていると、地震のアラームが鳴って、テレビでも地震速報が流れてきて。それまでも多少珠洲沖での地震は多かったので「まあその程度かな」なんていう感じでしたが、ライブカメラの映像なんかで珠洲の様子を見ると本当に激しく揺れていてこれは大きなのが来たな、と。心配はしていたけれど、その時は具体的にこんなに大きな被害が出ているなんて全然考えていなくて。うちの両親からLINEで、無事だけれどもひどい被害にあったということと、店が倒壊したというようなことを聞いてちょっと信じられないような気持ちでした。
翌日の夜に金沢に着いて、下道を通って七尾まで帰ってきたんですが、七尾に近づくにつれて道路に段差がでてきたりとか、被害が段々と大きくなっていくのが感じられて。それまで自分の目で被害を見ていないので実感できなかったものが「やっぱりただ事じゃないな」と徐々に感じられていきました。
そうして避難所で両親と再会して、「お店は必ず再建させよう」という話はしました。復興の一つの象徴になるからと。明るいところでお店を見ることができたのはその次の日でした。

ー色々な思いがつまったお店だったと思います。
僕も妹もまだ小さい時、中庭に縁側があって、布団を干しながらその上に座ってアイスクリームを食べたりしましたね。沢山思い出はありますが、不思議なことにそれが真っ先に思い出されます。そういう家族との思い出の場所っていう感じです。お店と暮らしが一体となっているのは一本杉の特徴でもありますね。

物事に色を付けるのは”自分自身”

ー震災から半年以上が経ちましたが、復興に向けて前に進んでいるなと感じること、反対にまだ進んでいないなと感じることはありますか。
まず、「ろうそくを作る」というのが我々にとっては一番大切な部分になるので、それを1月の下旬に一番最初に再開できたのは本当に大きかったと思っています。そのあと3月にここのお店を再開できたというのも大きなところです。お店の再建についても、あんまり変わっていないように見えるんですが、地盤調査を終えたりとか、建物を隅々まで調査していただいて被害状況を報告書にまとめたりとかして。調べたことはこれから建物をどう再建していくかっていう部分につながっています。止まっている状況に見えると思うけれど、決してそうではない。次進むために必要なことをやっているので、必ず前にも進んでいると思っています。
進んでいないなと思うことは、、うーん、ないですね。(笑) 全体的に何かしら前に進んでいると僕は思うんです。

ーなるほど。悲しい出来事が起こると人はなくなったものばかりに目を向けてしまいがちですが、高澤さんはその中にある良いことに上手く着目してらっしゃっているなと感じます。
そうですね。起こった物事ってそれ自体に色がついていないというか、その事態を捉えるのは自分自身でしかない。地震っていうのはほぼほぼ悲劇的なことですけれど、それをどうやって捉えるかみたいなところは自分次第で、自分にしかできないことなので。これは地震ばっかりじゃなくてね、生きてる中で色々な物事って起こるけれどそれをどう捉えるかはすごく大事です。というか、良い捉え方をする努力をすることが大切だと思っています。

ーその努力は生きている限り続けるもの、、?
はは(笑) たぶん、きっとそうだと思います。

お忙しい中、快く取材を受けてくださった高澤さん

次の世代へ

ー高澤ろうそくとしての夢や今後のビジョンは何かありますか。
まずは長く続くお店であることであることは間違いないことです。僕も5代目っていう一つの順番がついているんですけれど、そこで終わるわけでは決してないので、次の世代、次の世代って必ず続いていくことが重要だと思っています。毎日毎日努力をして、その積み重ねで気が付いたら10年、20年って長く続いているように、そうして世代を超えてお店を受け継いでいけるように。自分だけが良ければ良いのではなくて、自分はお店を受け継いでいく一つの流れの中にいると考えています。
それは大前提として、作っているのが和ろうそくなのでより多くの人に関心を持って知っていただくためのことをこれからしたいなというように思っています。ここは仮店舗なので色々試すことができるんですよ。なので、これから絵付け体験などといった体験メニューみたいなものを実験的にやってみようと思っています。それでお客様の滞在時間を増やせれば、一本杉の他のお店に足を運ぶきっかけにもなると思うので。

ーたしかに!商店街のことを考えても良いアイディアですね。
自分のところばっかりじゃなくて、通り全体が盛り上がっていければなと僕は考えています。なので商店街に新しいお店や人が来ることの抵抗もないです。これからもお互いが共存し助け合って、より良くなっていけるような、そんな通りであったらいいなと思いますね。

ー最後に、ご自身を表す七尾弁や好きな七尾弁があれば教えてください!
好きな七尾弁は「がっぱ」やね。”一生懸命”みたいな感じの言葉で、何だろう、”脇目もふらず”が近いのかな。使うときは、例えば「がっぱになって草むしったわ」とか。(笑)
震災があってから日々本当にやることがあって、会社のこととか、家庭の中のこととか、もちろん地域のことも。本当に、本当に色々あって、まさに目の前のことをがっぱになって今日までこなしてきたなあっていうように思いますね。振り返ると、本当に一個一個やっていったなあと。ありがたいことに支援につながる商品を分けてほしいだとか、記念品にぜひ使いたいとか、支援のための色々なメールをめちゃくちゃいっぱい頂くんですよ。それを全部対応していって、同時に会社の再建のこととか諸々、本当にいっぱいやったなあって感じです。そうなるとやっぱり「がっぱ」になるのかな。

ーありがとうございました!

取材日:2024/8/29

店舗情報
高澤ろうそく
仮店舗住所:石川県七尾市一本杉町37番地(旧けいじゅ一本杉)
https://maps.app.goo.gl/VzQGr6h4mJXqovxS9
営業時間:月~火、木~土9:00-17:00
定休日:水、日
電話番号:0767-53-0406


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?