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ホテル川久 下

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)


皆さんこんばんは!
フリックフラックの髙橋壱歩です!

さて、昨日から
『ホテル川久』と言うタイトルで
書いているこの記事ですが
昨日の記事を読んでいない方のために
少しだけ説明をしておくと

ホテル川久という南紀白浜にある
宿泊施設を巡る
僕と僕の家族の物語をただただ
紡いでいっているだけの記事でございます!

莫大な量になったので
上下に分けさせていただきました!

ちなみに昨日の記事が
こちら

     ↓
     ↓
     ↓


多分今日の記事から読んでも
なんのこっちゃわからないと思うので
出来たら昨日の記事からお読みください!

ではでは
今日も本編スタート!



(前回まで)
幼い頃、家族や親戚たちと
大勢で毎年、旅行に行っていた僕
たまたまある年に訪れた川久というホテルは
本当に素晴らしく、家族も皆気に入ったようで
次の年も行くことになった。
それから1年後、
3度目の川久行きが決定するのだった。




車に揺られながら外の景色を見る。


高速道路の上、あたり一面 緑


「おい壱歩!寝とんか!」


叔父が話しかけてきた。


「寝てないよー」


僕はなぜか今回の家族旅行では
叔父の車に乗っていた。


従兄弟たちが少し成長し
日常会話を話せるようになり、僕のことを
壱歩兄ちゃんと呼ぶようになり
かなり懐くようになったのだ。

一人っ子の僕にとって従兄弟は
ほとんど兄弟みたいなものである。


懐いてくるのはなかなか可愛いものだ。


いとこ達の遊び相手というか
まあそういう類の要因として
僕は叔父の家族グループと
行動を共にしていた。

数時間車を走らせる。


「おい壱歩!ラブソングかけたろか?」



叔父が突然、僕に投げかけてきた。


球が出る場所も角度も異常すぎて
全く反応できなかった。


数秒後

「え?何?ラブソング?」

「うん、お前のためにラブソングかけたるわ」


お前のために? これ何? ドライブデート?
意味がわからない。


僕が一度でも言っただろうか


ラブソングを聴きたいと


それからまた数秒経つと
音楽が流れはじめた。


ラブソングは突然に


その時、車内に流れたのが
HARCOさんという男性歌手の方の
『世界でいちばん頑張ってる君に』
という曲だった。


叔父の奇行中の奇行を
目の当たりにしながらも
車はどんどんどんどん
目的地へと向かう。


なぜ叔父は僕がこれで喜ぶと思ったのだろうか


「次違うのかけるわ」


何も言っていないのに勝手に進む
叔父

次に流れはじめたのが
沖縄出身アーティストの
SPEEDのメドレーというか
アルバムだった。


マジで何がしたいんだ?


世代でもなんでもない曲を
永遠に流される。

(SPEED批判ではないです。)


着いた。


車から降りる。


建物を見上げる。


いつ見ても色褪せる事なく
僕たちを魅了し続ける

ホテル川久のお出ましだ。


はい早速風呂


皆で一斉に大浴場へと出かける。


髙橋家必殺
1泊でも是が非でも
何としても
どんな手段を使ってでも
風呂3回入りたい大作戦


風呂を上ると食事会場に向かった。
例によって全く覚えていない。


そうだ

ここまで書いてきて
ある事に気がついた。


10年以上昔で、これだけ鮮明に
いくつもの思い出を
振り返ることができる川久であるが
晩飯だけはマジで思い出せないのだ。

割愛


次はもちろん2回目の風呂


ここである事件が起こるのだ。

それは僕が優雅に
湯船に浸かっている時の出来事だった。


大浴場に入って真っ正面、すぐの場所にある
一番大きいメインの風呂


浴槽のへりの部分に顎を乗せ
うつ伏せのような形で寝転がりながら
浸かっていると
ある異変に気がついた。

僕の視線の先には
サウナがあった。

サウナの中でおじさんがウロウロしている。



サウナの中はおじさん1人だった。


何をしているんだろう。


僕は思った。


行動が不可解というか
かなり挙動不審だ。


数分経った。


おじさんの動きが
精彩を欠いてきた。


本当に何をしているんだろう


おじさんがサウナのガラスの壁を
弱々しくトントンと叩く。

ん?

妙だな。

僕は風呂を上がり、
サウナに近づき、扉を開けた。

するとおじさんが雪崩れ込むように
外に出た。

「はぁはぁはぁ、助かった助かった」

ん?


「ありがとう、君のおかげや。
サウナの出方わからんかったんよ。
ありがとう」


息の上がったおじさんの声


なんだなんだ!?


このおじさん、
サウナの出方がわからなかったのか?


わかるやろ普通


丁寧に礼を言っておじさんが去っていった。


何か一仕事を終えた気がして
少し疲れた。


父に声を掛け脱衣所に戻る。


「なあなあお腹減った!」

「ん?」

「お腹減ったって!」

先ほどのおじさん救出の疲れからか
僕は晩ご飯を既に食べたにもかかわらず
空腹を覚えていた。

「飯なぁ、どっか食べるとこあるかなぁ」

外に出る。


部屋に帰るまでの道を歩いていると
その最中であるものを見つけた。


ラーメン屋だ


こんな所にラーメン屋がある!

(今冷静に考えると
あれはラーメン屋ではなく、
通常の時間はレストランとして営業しているが
夜だけラーメンを販売しているような
そういう店舗だったのだと思う)


「ラーメン屋あるやん!」

「ほんまやな」


父はラーメンが好きだ。ラーメンに目がない。

「食べようや」
この誘いを断るはずがない


「食おか」


YES!!!


店に入り、注文をする。


ラーメンがきた。

一口すする

うまい


深夜に食べるラーメンが
こんなに旨いということを
小学生にして気がついてしまった男
髙橋壱歩


旨すぎて誰かに伝えたくなった。


僕はその頃持ちはじめたばかりの
携帯電話を操り、
電話帳を開いた。

誰かに連絡しよう。


迷った末僕は
伯母(母の姉)に連絡をする事にした。
(なんでやねん)


文面はこちら
「今ラーメン食べてんねん」


すぐに返信がきた。

「深夜にいたずらメールしてこんとって」

は?

マジか


小学生の甥に向かってそんな反応する?


なんでそんな事言われなあかんねん!


伯母には僕以外に甥っ子や姪っ子はいない

僕が唯一の甥っ子だ。

もっと大切にするべきだ。

そんな事を思いながら麺をすする。


部屋に戻り、寝て起きると
また風呂に入り朝食を食べ
チェックアウトする。

僕たちの3度目のホテル川久が終わった。



昨日、今日と
ここまで僕の記事を読んでくださった皆様
本当にありがとうございます。

記事はまだまだ続きますが
ここで小休憩

この時点で十分、
ホテル川久の魅力は伝わったと思うので
ここで読み終わっていただいても全然構いません。

ただ僕と川久を巡る物語はまだ続きます。


気が向いたら是非読んでください。


それでは再開です。




3回目の川久を終えてから
一体何年くらい経った頃だろうか


僕たち家族は
しばらく川久を離れていた。


旅行は大抵、他の場所


4回目の川久は一体いつ訪れるのだろう。
ふとそんな事を考えることもあったが
他の場所に行っても
それなりに楽しい出来事はあったので
その存在自体を忘れかけていたのかもしれない。


その時は突然きた。


僕の父は会社を経営している

その会社の周年記念というか
なんかしらのアニバーサリーで
(細かい情報は忘れました)
大規模な社員旅行に出かける事になった。


もちろん僕もついて行く。


その場所に選ばれたのが
南紀白浜 ホテル川久だったのだ。


大勢が泊まるので確か貸切だった。


一生に一度あるかないかの
大旅行がはじまった。


いつものように車で目的地に向かい、
外に出ると
目の前には久しぶりに見る川久


相変わらずの迫力

中に入り、部屋へと向かう途中
ある衝撃的な事実を聞いた。

「今日はね、他の部屋に
うちの従業員が泊まるから
普通の部屋が全部埋まってるんよ
俺らはスイートルーム泊まるから」


言ったのは確か祖父だったか父だったか

衝撃的すぎてあまり覚えていない


「ホンマに?」

「ホンマやで。まあお祝いやからな。」

エレベーターを上がり、
最上階にある部屋に着く。


僕は今まで部屋の内装について
あまり言及してこなかったが
もちろん今までの部屋も素晴らしいものだった。



しかし今回は次元が違っていた。

まずテレビがでかい。

窓からの景色がレベち

部屋の中なのに
エレベーターがついている。

王宮のようなベッド


何もかもが違っていた。


ここに今日泊まることができるのか!?


こんな所に泊まっていいのか?


幼い従兄弟たちは広い、嬉しいと
ただただ無邪気に走り回っていたが
少し大人に近づいた僕は
そう簡単にはこの事実を受け入れられない

ここに泊まるのか

こんな所に!?

しかし僕はこの時まだ気がついていなかった


この旅における重大で残酷な事実に


荷物を片付けると
今度はロビーに移動になった。


何やら催しがあるらしい。


ホテルの玄関部分に
等間隔に沢山の椅子が並べられている。


その正面には特設の舞台というか
ステージのようなもの


「これ今日は何があんの?」
母に聞いた。


「なんかな、
太鼓のパフォーマーみたいな人らが
来て出し物するらしいよ」

太鼓のパフォーマンス?


部屋に荷物を置き終えた従業員の方々が
続々と席を埋めはじめ、
いよいよショーがはじまる。



圧巻だった。

簡単に説明すると
ただただ太鼓を叩いているだけなのだが
音が耳だけに届くというより
波動というか振動として
体全体に伝わるのだ。

顔面に太鼓の振動が直に伝わってくる。


金かかってんなぁ
としみじみ思った。
(お前小学生やろ!)

太鼓の音がドドン!と鳴り、
静寂が訪れる。


盛大な拍手


僕も精一杯手を叩いた。


すごい
正直、舐めていた。


太鼓をただただ叩くだけで
ここまで感動するとは

パフォーマンスが終わり、
一旦解散になる。

部屋に戻る。

入るのが二度目でも
全く色褪せることのない
素晴らしすぎる部屋だった。


白浜の海を
まるで自分のものにしたかのような
窓からの眺め


素晴らしい

そう思った直後

母からある事を告げられた。


「こんなにええ部屋やのに泊まられへんの残念やな」


そうだ


そうだった。

実は僕には
この部屋には泊まれない
ある理由があったのだ。


これは遡ること、
僕が小学校に入学する少し前の話

幼稚園児だった僕と父はある約束をした。


その内容と言うか
父が言った言葉がこれだ

「俺はな、勉強頑張れとかスポーツ頑張れとか
そんなことは一切言わん。絶対に言わん。
別に勉強とかスポーツ頑張ることなんか
すごいことでも何でもないからな。
そんなことよりもな重要なのは学校休まんことや。
学校休まん奴が一番偉い。
だからな、お前がもし一度も休まず
皆勤賞達成したら
お小遣いの金額、上げたるわ。
1年ごとに上げるけど
毎年連続で皆勤達成すればするほど
金額上げたるわ」

無類の皆勤好き
勉強頑張る奴よりも
スポーツ頑張る奴よりも
何よりも皆勤を優先する
父からの提案だった。

その当時、5歳だった髙橋壱歩少年は
「やったー!学校休まんかったらお金もらえる!」
くらいの感覚だった。



そこから僕は1日も休まず
学校に通い続けた。



今のご時世なら許されないだろうが
結構な熱があっても微熱であっても
毎日毎日通い続けた。




そして迎えたこの日、
社員旅行の日は日曜日だった。


ということは
明日は月曜日
学校がある。


ホテルに宿泊するわけにはいかないのだ。

なぜなら
泊まってしまうと登校時間に間に合わず
連続記録が途切れてしまうからだ。
(ちなみに皆勤は遅刻すら許されない)

だから僕と母はホテルには泊まらず、
夜には帰宅する。

出発に前にこう決めたはずだった。

それなのに
久しぶりにきた川久で
素晴らしい外観と
素晴らしい部屋と
素晴らしい太鼓を味わったせいで
その事実を完全に忘れていた。



忘れていたというよりも
忘れたかったのかもしれない。

「そうか。泊まられへんのか」

「そうやで!出発前に決めたやろ!」

母が念を押すように僕に言った。


なんでこんな事を決めてしまったのだろう。


少し後悔していた。


「従兄弟たちはどうすんの?」

「みんな明日学校休むって」


帰るのは僕と母だけ


幼い頃の僕にとっては残酷な事実だった。


連続記録を取るか
ホテル川久を取るか

皆勤賞を取るか
スイートルームを取るか

泊まって仕舞えば
今までの努力は全て無駄だ。


父の方を見ると

何やお前、学校休むんか?

ええんかそれで

今まで頑張ってきたのに

ええんやな?

そういう顔をしていた。




祖父を見る


「そうか、壱歩帰るんか。寂しいな」


何が言いたいんやおい


「帰るって決めたやろ?」


母が追い討ちをかけるように更に続けた。
確かに決めた。
決めたが…


僕が今まで皆勤賞を達成できたのは
決して僕だけの力ではない

母の協力あってのものだ。

ここで裏切るわけにはいかない。

ダメだダメだダメだ


葛藤する僕の周りを
無邪気に走り回る従兄弟たち

帰るんだ

僕は帰るんだ。

その時、
頬をつーっと冷たいものが伝った。


あれ?


俺今泣いてる?



「なあなあ、やっぱり泊まりたい」

その頃の僕はまだ子供だったのだ。



一度決めたことでも
普通に覆したくなる。


「なんでそんなん言うんよあんた!
用意もなんも持ってきてないで!
帰るで!」

母のこの一言が決め手になった。


帰るしかない。


連続記録を途絶えさせるわけにはいかない。

唇を噛みしめ
僕と母は帰路についた。




帰りの車内で
助手席と運転席に
重い空気が流れる。




こんなことなら
来なければよかった。




ホテル川久となんて出会わなければよかった。





本気でそう思った。


車の中でまた泣いた。


あまりにも不憫だったのだろう。

帰り道のサービスエリアで
母が野球ボールのついた
ストラップを買ってくれた。


それを握りしめてまた泣いた。



家に着く。

明日もまた学校に行くため
僕と母は早めに眠りについた。






そこから一体何年が経っただろうか。


その日は高校の卒業式の
次の日だった。


実家の1階で
僕と父が向かい合って座る。


「お疲れ様。よう頑張ったな。」


父から封筒を渡された。


皆勤賞でお小遣いを貰うのは
一体何回目だろうか。


でもこれで最後だ。

封筒の中身を確認する。




そこには高校卒業したての僕にとっては
想像も出来ないような金額が入っていた。




あの、社員旅行の前の数年間
そしてその後の数年間
全て含め


僕は小学校1年生から
高校の3年生までの
12年間、一度も学校を休まなかった。


めちゃくちゃしんどい日や
サボりたい日
いろいろな日があったが
それが全て報われた気がした。


その日僕は父と母に
それぞれプレゼントを渡した。


お小遣いが入る事を見越して
ある程度の金額を使って
あらかじめ買っておいたのだ。

あの時、
泊まらなくて本当に良かった。

よく耐えた。


あの頃の自分に
改めてありがとうと言いたくなった。





そこからまた数年後

僕は大学の4回生になっていた。


大学のサークルの同期と行く
はじめての卒業旅行
(結局卒業できなかったけどね)


場所はたまたま白浜だった。


レンタカーを借り、
所々、運転を交代したりしながら
目的地に着いた。


部屋に入る。


「結構ええ部屋やなぁ!」

「おいおい!この部屋床の間あるやんけ!」


思ったよりもいい部屋に
同期全員が歓喜した。



部屋の窓に近づきカーテンを開ける。



驚いた。


真っ正面に
あのホテル川久があったのだ。


「うわ!川久や!」


思わず口に出してしまった。


「え?なんて?」

「川久?川久って何?」


同期が口々に聞いてくる。




「え?いや…別になんもない」



久しぶりに
はじめての角度から見る
ホテル川久は

あの頃と同じように立派で
あの頃よりも遠く
僕の目の前にそびえ立っていた。




川久





そうか
普通にまだあるんだ。

あの時、もう二度と泊まれないような
そんな気がしていた。


泊まろうと思えば


頑張ればいつだっていけるんだ


もし、僕が売れたら
真っ先にあのホテルの
スイートルームを予約しよう

そしてあの時泊まれなかった
母を含む家族みんなで旅行に行こう。

まだ行ったことがないけど
ハワイなどの有名な海外の旅行地よりも
きっと楽しめるはずだ。



また一つ夢が増えた。



(完)





お疲れ様です!!!

最後まで読んでくださった方々
本当にありがとうございました!


僕自身が体験した事を
赤裸々に描きつつ
できるだけ川久の魅力が伝わるよう
頑張って書きました。

「川久」
本当に素晴らしいホテルです

正直こんなに長編になるとは
全く思っていなかったです。


原稿用紙30枚分くらい書きました。


今回で僕のnoteをはじめて読んで
良かったなと思ってくれた方は
是非他の記事も読んでみてください


本当に僕も皆さんもお疲れ様でした。


ではまた明日!


今後もどんどん楽しく面白い記事書けるよう頑張ります! よければサポートお願いします😊