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地方都市で働く弁護士。そろそろ自分なりの仕事のやり方が見えてきた。何か世の中の役に立つ…

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地方都市で働く弁護士。そろそろ自分なりの仕事のやり方が見えてきた。何か世の中の役に立つ情報発信ができないかと思っている。一児の父。保育園送迎、ごみ捨て、入浴、皿洗い担当。

最近の記事

「社員にやめてもらう」ということ

「困った社員がいてやめさせたい」 「採用してみたが思っていたような実力がないのでやめさせたい」 「クビにした従業員が言いがかりをつけてきた」 最近、地方企業でもこんな相談が増えてきました。 そんな相談を受けると、 「無礼者!何様じゃ!!」とバッサリ切り捨ててみたくなったり。 法的にはそんな感覚。 ○現在の労働法制下では、解雇(首切り)は原則禁止○承諾なくやめさせることは会社にとってハイリスク要約すればこういうこと。 現在の日本の法律では労働者が非常に強く保護さ

    • 『新型コロナの科学』を読んで

      新型コロナウイルスについては、断片的な情報があちこちで出回っているものの、体系的に整理された情報がなかったため、専門家に薦められてこの本を読んでみました。 新型コロナについては、「このような対策を取って下さい」という情報ばかりで、そもそも新型コロナウイルスとはどのようなもので、科学的にはどのような性質があり、どのように感染するのか、科学的分析結果や統計データはどうなっているのか、日本の対策はどのような根拠に基づいているのかということについての情報がなく、とてもモヤモヤしてい

      • 「あの人は信頼できるから」って?

        「そういう時はちゃんと書類を作った方がいいですよ」 って言うと 「先生大丈夫。あの人は信頼できるから」 っていう返し。 「あの人は信頼できる」ってどういうこと?その人はどんな場合であってもあなたに不利益を与えない人ってこと? 人間の関係性は永続的なものではありませんよね。 盛り上がって仲良くなった関係ほど早く終わったりしませんか? しかも契約の場合、契約時の相手が変わっても関係が続くことの方が多い。 売られて持ち主が変わる 亡くなって相続人が引き継ぐ 会社

        • 東京がいいか地方がいいか

          私は、関東で生まれ育ち、大学・大学院と東京で過ごし、働き出してからは地方都市で暮らしている。 正直、就職する際は地方でいいのか迷ったし、働きだしてからも「もし東京で働いていたらどうなっていたかなあ」と時々考えていた。 そんなこんなで地方で生活をはじめて10年。 最近ようやく結論を出せた気がする。 東京じゃなくて正解だった 自分は、「やりたいことをバリバリやる」というよりも「いろんなことのバランスを取りながらその時々でやれることをほどほどにやりたい」「やりたいことより

        「社員にやめてもらう」ということ

          「自分の名前」を疑え

          前記事を書いた勢いで、もう一歩進んで疑い方を考えてみる。 面倒なトラブルになるのは「自分に不利な書類にサインしてしまった」というケース。 よく聞く言い分は そんな話は聞いていない そんなところまで読んでいない 無理に書かされた 形だけのものと言われた 後から変更できると言われた などなど。 これらはいずれも通らないことが多い。 あなたの名前がサインされた書類が出てくると、 サインした=不利な内容も含めて承諾したと評価される。 あなたがどう思っていたかは

          「自分の名前」を疑え

          「疑い方」知ってますか?

          弁護士をやっていると、トラブルに巻き込まれずに生きるためには「適切に疑うこと」が大切だと痛感する。 弁護士に解決を頼らないといけなくなってしまう人は、「誰かを頼りすぎ」「疑いすぎ」の人がほとんど。 人を信頼することが大事ということだけ刷り込まれて育つので、日本では「適切に疑うこと」を身につける機会がないまま大人になってしまう。 これまでは「皆と同じこと」をしていることが良いとされてきたため、国も「皆と同じこと」に対して救済する社会制度を作れば足り、皆と同じことは自然とリ

          「疑い方」知ってますか?

          弁護士業務≒書道・茶道

          間もなく弁護士10年目 最近、自分なりの仕事のやり方というものがそれなりに見えてきた。 自分にとって、法的に検討して、書類作成などをすることは、思っている以上に静謐な環境下でないとうまく進まないことに気付いた。 世の中で弁護士の仕事というと、誰かを目の前にして口でやりこめるイメージかもしれない。 でも、実際のところ、机の上で法理論についてどれだけ落ち着いて考えられたかということが一番大事。 そこが我々の仕事の一丁目一番地。 そういう意味では、自分の中で持っている弁

          弁護士業務≒書道・茶道

          「法律がおかしい」なんて当たり前

          日本の法律は、一定の時期に西洋から輸入された「輸入モノ」です。 そもそも、身のまわりの人間関係を「権利」や「義務」で切り取って考えることは日本の文化にはなじみがありません。 また、法律は「権利」のある者の方が、権利があることを「証拠」によって証明しなければならないというつくりです。 「権利」がある者の方に責任を課しています。 「義務」がある者は義務に違反するおそれがあるからちゃんと記録を残して監視しておかないとダメだという考えです。 (証拠を持たない権利者が不誠実な

          「法律がおかしい」なんて当たり前

          土地購入と住宅建築にひそむリスク一覧

          土地購入における主なリスク 〇隣地との境界があいまい 〇隣地から(または隣地へ)の越境物がある 〇土地に埋設物が埋まっている 〇法令の規制によって建てられる建物が限定されている 〇契約書の定めによって購入後のトラブルについて売主に責任追及できない 住宅建築における主なリスク 〇予算オーバーの建物が設計されてしまう 〇選んだ建築業者の技術レベルが低く、施工不良が発生する 〇業者の確認不足等によって注文したものとは違う建物が建つ 〇過度な住宅ローンを組んだこと

          土地購入と住宅建築にひそむリスク一覧

          なぜ家を建てる前に弁護士に相談しないのか?

          「住宅は人生で一番高い買い物」である。 皆、夢を描いて住宅建築をはじめる。 しかし、住宅建築はリスクの宝庫である。 労働問題はその職場と縁を切れば終わり、相続問題はもらえるものをあきらめれば終わる。 が、住宅トラブルはそうはいかない。 生活の基盤である家にトラブルを抱えていると生活すべてに悪影響を及ぼす。人生が壊れる。 そして、住宅トラブルは家が建ってしまってからでは解決が難しい。 建築問題で裁判になると平均で2年、長いと5年以上かかることもある。 住宅問題は

          なぜ家を建てる前に弁護士に相談しないのか?

          裁判所は真実を明らかにする場ではない

          こう聞いて驚く人もいるのではないでしょうか。 でも実際そうなのです。 裁判所は真実を明らかにするための場ではありません。 さらに言うならば、善悪を判断する場でもありません。 特に民事裁判においてはそれが顕著です。 民事裁判では、裁判所は「法律の要件にあてはまる事実が証拠から認められるか」にしか興味がなく、それを判断するのみです。 「なぜそのトラブルが起こったのか」とか「関係がこじれた原因は何なのか」とか「不誠実な対応をしたのはどちらか(どちらが悪いのか)」というこ

          裁判所は真実を明らかにする場ではない

          「自衛法務」という考え方

          法的トラブルが起きた時、勝ち負けを決めるのは何か。 弁護士の腕で勝ち負けが決まるのか。 いい弁護士に依頼できるかどうかが大事なのか。 確かに、弁護士のやり方で結論が変わる部分はある。 しかし、その範囲というのはさほどのものではない。 50:50の結論を60:40か、良くても70:30にできる程度の話。 トラブルが起きた後に弁護士の腕だけで100:0の完全勝利にすることはできない。0:100の負けを覆すこともできない。 勝敗はトラブルが起きる前に決まる。 法的な

          「自衛法務」という考え方

          noteで何を書こうか

          前々からブログでもやろうかとは思っていたけれど、なかなかきっかけがつかめず。 コロナの状況も落ち着き、諸々のタイミングが合ったのでnoteはじめてみることにしました。 せっかくここに書くのだから、自己満足だけで終わらないような内容にしたい。 最近改めて思うのは、「法律の世界の仕組み」と「普通の人の考え方」というのはかなり違うということ。 このギャップが、トラブル解決の大きな足かせになる。 「ただ何となく真面目に生きていれば大丈夫」なんていうことはない。 ずる賢く不

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