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BOOK新刊レビュー【2020.4 145】

2020年4月20日発刊のintoxicate 145、お茶の間レビュー掲載のBOOKの新刊7冊をご紹介!

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intoxicate 145


ハリースミス

①【MUSIC】
ハリー・スミスは語る
音楽/映画/人類学/魔術

ラニ・シン/編、湯田賢司/訳
カンパニー社
ISBN:9784910065014

ハリー・スミスといえば『Anthology Of American Folk Music』(52年)の編者だ。1920~1930年代のフォークやブルース、カントリーのSP盤(いずれもスミスが個人的に収集したもの)を6枚組のLPに収めた同作は、ボブ・ディランらフォーク・リバイバリストたちに影響を与えた……。というのが、教科書的な説明。ここ日本にあまり伝わってきていないのは、彼がニューヨークに巣くう生粋の芸術家であり、魔術に通じる偉大なる奇人だったこと。このインタヴュー集は、それをじゅうぶんすぎるほどに伝える。冒頭のアレン・ギンズバーグによるインタヴューからして強烈。まさに博覧強記、いや、「博覧狂気」の人。知の幻術と煙幕に、目まいがする。(天野龍太郎)

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②【MUSIC】
ポップ・ミュージックを語る10 の視点

大和田俊之/編著
アルテスパブリッシング
ISBN:9784865592153

牧村憲一と桝山寛がプロデュース、大和田俊之がコーディネイトした連続講義が書籍化。講師を務めたのはアカデミシャン、ジャーナリスト/評論家、ミュージシャンら10人。単なる講義録と侮るなかれ。それぞれの視点は異なるが、濃度は極めて高い。アル・ジャロウなどを例に熟聴法を伝える冨田ラボ、ラージ・アンサンブルの歴史と現場を語る挾間美帆、ジャズの最前線から歴史を編み直す柳楽光隆、アトランタを中心にトラップ以降のラップをレポートする渡辺志保……。音楽について語ることはこんなにも奥深いのか。愉しい目まぐるしさを覚える一冊で、これを始点に音楽をめぐる知について考えたい。 (天野龍太郎)

古関裕而 応援歌の神様

③【MUSIC】
古関裕而 応援歌の神様

長尾剛/著
PHP研究所
ISBN:9784569769912

2020年4月からのNHK 連続テレビ小説『エール』の主人公“古山裕一”のモデルは、《阪神タイガースの歌(六甲おろし)》《栄冠は君に輝く》《スポーツショー行進曲》《闘魂こめて》そして《オリンピックマーチ》(1964 年東京大会)など生涯に約5,000 曲を書いた作曲家、古関裕而(1909-1989)です。本書は文庫オリジナルの評伝で山田耕筰に認められて本格スタートした作曲家としての歩み、戦時中の活動と敗戦後の代表作のひとつ《長崎の鐘》への思い、創作を支えた金子(きんこ)夫人との絆など古関裕而の人生を分かりやすく描いています。ドラマをより楽しめる一冊です。(渋谷店 中川直)

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④【CINEMA】
US ムービー・ホットサンド 2010 年代アメリカ映画ガイド

グッチーズ・フリースクール/編
フィルムアート社
ISBN:9784845919079

『アメリカン・スリープ・オーバー』等の日本未公開映画の紹介、上映を企画・運営するグッチーズ・フリースクールが編者となって制作された2010年代アメリア映画本!作家論(アリ・アスターからフレデリック・ワイズマンまで!)だけでなく、歴史や政治、文化(文学や音楽、ゲームまで)やライフスタイル等様々な切り口で現代アメリカ映画を評論/ 紹介。拙者も本書を頼りに『トマホーク ガンマンvs食人族』と監督S・クレイグ・ザラーの素晴らしさを知りました!『映画秘宝』ファンや宇多丸のラジオのファン、編者が本書制作時に念頭にあったという名著 『ロスト・イン・アメリカ』のファンも必読!(高野直人)

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⑤【MUSIC】
ページをめくるとジャズが聞こえる 村井康司《ジャズと文学》の評論集
村井 康司/著
シンコーミュージック
ISBN:9784401649068

『現代ジャズのレッスン1959年から考える』などの著作で知られるジャズ評論家村井康司の最新作。この本は実に珍しい内容で、ジャズについて書かれた言葉を論じることを通してジャズを語るといったものになっている。評論の対象は村上春樹、ボリス・ヴィアン、スコット・フィッツジェラルド、といった小説家、中山康樹、相倉久人、油井正一といったジャズ評論家、さらには菊地成孔、山下洋輔といったミュージシャンなどであり、多彩なジャンルの人物をまな板の上にのせて存分に料理をしている。それにしてもジャズという音楽について語る人の熱量とそれを浮き彫りにした著者の力量に圧倒される。(荻原慎介)

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⑥【MUSIC】
楽譜でわかる20 世紀音楽

久保田慶一/編集代表
白石美雪・井上郷子・森垣桂一・編
アルテスパブリッシング
ISBN:9784845919079

CDを聴きながらスコアなどの楽譜をパラパラとページをめくる。譜面の記号を楽器に触れた手が音楽に再生する。音楽のプロットを追うために楽譜を利用する人は多いだろう。そしてページをめくる手を止めてその音符や休符、楽譜1ページに記された記号の意味についてじっくり考えてみようと思う人も少なからずいるだろう。楽譜は作曲家の感情や思想を映す鏡、鏡に映る演奏家の解釈は果たして寸分違わず作曲家の意志と一致しているのだろうか。この本は20世紀の作曲家がどのようにして最終稿に至ったのかを研究者と共に紐解き、作曲家がどのようにアイデアを楽譜に落としていったかを教えてくれる。 (高見一樹)

鉄道について話した

⑦【ESSAY】
鉄道について話した。

市川紗椰/著
集英社
ISBN:9784087808964

鉄道オタクとして知られる人気モデル・市川紗椰さんの初の鉄道本が満を持して完成。5、6年前、某テレビ局のロケバラエティーに同じく鉄オタの中川家らと共演し、「架空のダイヤを作るのが好き」と発言するなどオタクぶりを全国に知らしめていた彼女。グラビアに加え約140ページにわたり全国津々浦々、さらに海外の鉄道について、丹念な現地調査(?)に基づいた豊富な知識と、ユーモア&愛情たっぷりに語られる内容は読み応え十分。読後には日々何気なく利用している駅や車両が愛おしく思えてくる。鉄道関連スポットやグルメにも触れ、旅行前にもぜひ一読したい。“鉄分高め”かつ初心者にもおすすめできる新しい鉄道攻略本!(佐古麻美)


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BOOK新刊レビュー【2020.2 144】

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