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BOOK新刊レビュー【2020.6 146】

2020年6月20日発刊のintoxicate 146、お茶の間レビュー掲載のBOOKの新刊7冊をご紹介!

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intoxicate 146


オペラで楽しむヨーロッパ史帯アリ

①【MUSIC】
オペラで楽しむヨーロッパ史

加藤浩子/著
平凡社新書
ISBN:9784582859362

2015年刊行の『オペラでわかるヨーロッパ史』(平凡社新書)の応用編。前半は作曲家中心でモーツァルトの「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」の誕生とフランス革命など18世紀終盤のヨーロッパ社会の変容、ヴェルティがイタリアの統一過程に取り込まれた理由、現在形の問題であるワーグナーと「政治」の関係の起源。後半は視点を変えて「蝶々夫人」誕生の背景、ジャンヌ・ダルクやシェイクスピアの「マクベス」と「ハムレット」がオペラでどう描かれたかを綴る。事実を踏まえながらメリハリのきいた筆致でまとめられ、オペラ映像ソフトの案内もある。入りやすく中身の濃い新書。(渋谷店 中川直)

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②【MUSIC】
約束の地、アンダルシア スペインの歴史・風土・芸術を旅する

濱田滋郎 /著 高瀬友孝 /写真
アルテスパブリッシング
ISBN: 9784865592214

音楽評論家でスペイン文化研究家の濱田滋郎さんによる新刊は、99年からら2001年の間『パセオフラメンコ』に連載されていた「約束の地、アンダルシア」の単行本化。写真家・高瀬友孝さんによる美しい数々の風景と共に、読者はその旅へと向かう。アンダルシアの歴史から自然、人々の営み。その行間から私たちは未だ知りえぬ世界を体感できる。またアンダルシアとクラシック音楽、ギター、そしてフラメンコとの関りは大変興味深い。ギタリスト・村治佳織さんも大絶賛!スペイン、フラメンコ好きの方は必読の1冊。本書を片手にアンダルシアを訪れてみたいと思わずにはいられない。(新宿店 飛田晴海)

大ピアニストは語る

③【MUSIC】
大ピアニストは語る

原田光子/訳編
河出書房新社
ISBN:9784309256566

夭折の音楽評論家、原田光子氏(1909~46)による初版が1942年3月という歴史的名著の新装版。パハマンからカサドジュまで、19世紀生まれの20人の巨匠を選び、彼らが著した学習談義、芸術論を収集し、格調高い日本語に訳したもの。全員に共通するのは、演奏の前提は「すべての楽曲を抱擁できる技術的把握力」(ラフマニノフ)だという考え方。技術を維持・発展するための各自の訓練法を包み隠さず告白する。同時にサーカス芸の虚しさを語り、「音楽は常に楽器を凌駕し、大芸術家は生命を表現する」(ナット)と説く。学習者には実践の書として、愛好家には大ピアニストたちの秘密を知る書として必読だ。 (板倉重雄)

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④【MUSIC】
音楽が本になるとき 聴くこと・読むこと・語らうこと

木村元/著
木立の文庫
ISBN:9784909862105

『YMOのONGAKU』『文化系のためのヒップホップ入門』『片山杜秀の本』などで知られるアルテスパブリッシングという出版社は音楽の専門出版社として知られている。単なるデータ本に終わらない人文書としての音楽書をテーマにしていると思われるこの出版社が何を考え感じて本を作っているのか?その秘密の一端を、アルテスパブリッシングの編集者の綴ったこの一冊で知ることができる。全編についたQRコードからBGMに飛ぶこともでき、音と文章からその世界を味わえる贅沢な一冊。「聴くこと・読むこと・語らうこと」という副題は素晴らしい。(荻原慎介)

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⑤【MUSIC】
ゲット・バック・ネイキッド-1969年、ビートルズが揺れた22日間-

藤本国彦/著
青土社
ISBN:9784791772667

ビートルズの最後のアルバム『レット・イット・ビー』が録音されたトゥイッケナム映画撮影所、アップル・スタジオでのセッションの22日間をあらゆる音源、文章、記事、証言を検証して再構築した究極の一冊。本来は『ゲッド・バック』というタイトルで発売される予定だったアルバムは幻となり、フィル・スペクターによって再編集された『レット・イット・ビー』が発売されたわけだが、その過程の詳細は今まで不明瞭な部分も多かった。この一冊によってかなりこの幻のセッションの22日間がクリアになった。ビートルズの最後の始まりを知る一冊。( 荻原慎介)

大杉漣

⑥【CINEMA】
大杉漣

河出書房新社編集部
河出書房新社
ISBN:9784309980027

2018年に突然この世を去った俳優・大杉漣への愛に溢れた一冊である。笑福亭鶴瓶、松重豊、斉藤和義、稲垣吾郎をはじめとする友人・共演者の追悼文や対談に、転形劇場/ピンク映画/Vシネマ/一般映画/TVドラマ/TVバラエティでの多岐にわたる活動の論考が並ぶ(余談だが、篠崎誠論考での、黒沢清vs大杉漣の現場での“アドリブ”攻防戦とその顛末は抱腹絶倒の面白さだ)。分けても青春時代や舞台・映画・音楽・サッカーなどについて語る大杉自身の23編のエッセイ! 肩の力のほどよく抜けた飾らない語り口は絶品。本書の素晴らしさは、大杉漣が存在したことの“多幸感”に満ち溢れていることだ。そのことが例えようもなく嬉しくも寂しい。(高野直人)

エルトン・ジョン

⑦【MUSIC】
エルトン・ジョン自伝

エルトン・ジョン/著
川村まゆみ/訳
ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス
ISBN:9784636972863

1988年11月東京ドーム公演、エリック・クラプトン、マーク・ノップラーとともにステージにいたエルトン・ジョンが名曲《ダニエル》を歌い出し、生で聴けたのは貴重な思い出。2019年の映画『ロケットマン』でその生涯が注目を浴び、そして本書でエルトン・ジョンという稀有のロック・スターの真の姿を知る。作詞家として長年にわたっての協業パートナー、バーニー・トーピンやジョン・レノンら数々のスターたちとの交流、ドラッグやセクシャルな一面を赤裸々に綴り、同性婚の上、2人の息子(代理母出産)の父親であることなど、ウィット&ユーモアに富んだ語り口で深い人間像を浮き彫りにする。(馬場雅之)

▶前号のBOOKはこちら!
BOOK新刊レビュー【2020.4 145】


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