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JAZZ新譜レビュー 後編【2020.2 144】

2020年2月20日発刊のintoxicate 144、お茶の間レビュー掲載のJAZZの新譜8枚をご紹介!

※JAZZ新譜レビュー前編【2020.2 144】はこちら

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intoxicate 144


UVWA-0014_CDSOL-1075_エレクトロキーボードオーケストラ

①【J-JAZZ】
エレクトロ・キーボード・オーケストラ<期間限定盤>

エレクトロ・キーボード・オーケストラ
[Solid Records UVWA-0014]

日本で6〜70年代に録音された、所謂「和ジャズ」が国内のディガーではなく海外からの旅行客に求められるようになったここ数年。特に福居良の『シーナリー』と山本剛の『ミスティ』の人気が高かったりで、まぁ、この時代の音に愛着を持つものとしては素直に嬉しい。その『シーナリー』を含む再発シリーズ「NIPPON JAZZ SPIRITS 和ジャズ傑作選」の中で一際特異な魅力を放つのが本作品。大野雄二、佐藤允彦、鈴木宏昌など超豪華8人の名鍵盤奏者がアナログシンセで織りなす宇宙交響曲集はハービーも真っ青のグルーヴから、独特の音響空間とムードは「和レアリック」文脈でもイケる。(渋谷店 片切真吾)

「Our Platform」ジャケ表1 (1)

②【J-JAZZ】
アワー・プラットフォーム

井上銘(g)魚返明未(p)若井俊也(b)柵木雄斗(ds)
[ ポニーキャニオン PCCY-30251]

井上銘がデビューアルバムをリリースして、10年近くがたつ。渡辺香津美のような天才ギター少年の再来として注目を集めて以来、途中、ジャズロック的?なユニット〈ステレオチャンプ〉を発生させてジャズとそれ以外の活動に彼の音楽は多極化するのかと巷を騒がせて20年、なんとジャズアルバムをリリースした。なんの迷いもない、まるで書き譜を演奏しているかのような流麗なソロがあちこちに散りばめられて、果たしてこのギタリストはいったいどうなるのだろうと挙句、アルバムの隅々までを聴いてしまった。さまざまなポップな現場でも活躍中のこのジャズギタリストが輝かせるのはジャズ?それとも。(高見一樹)

J写PianoParty_JK

③【J-JAZZ】
ピアノ・パーティ

国部弘子(p)
[ビクター VICJ-61783]

5年ぶりの新作、24枚目のオリジナル・アルバム。そして結成から22年目というベースの八尋洋一とドラムスの岩瀬立飛からなる国府弘子スペシャルトリオが本作の主役。2019年に行われたライヴの会場の音声から始まり、飛び出してくるのはクラシック、J-POP、タンゴ、ブラジリアンの秀逸なカヴァーと国府弘子自身のオリジナル曲。まさにタイトルのごとし、ピアノ・パーティが展開される。国府弘子のピアノはジャジーでありながら、非常にポップ感覚にあふれ、80年代のデビュー時からそれは一貫していることを本作であらためて再認識。ゲストも小松亮太、露崎春女など異色の顔ぶれが参加。(馬場雅之)

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④【J-JAZZ】
RS5pb

類家心平(tp)
[T5Jazz Records T5J1016] UHQCD 〈高音質〉

ジャズ・トランペッター類家心平新譜『RS5pb』。彼固有のフレーズをジャズに投げ続けた稀なアーティストである。そのフレーズの軌跡を辿れば結局『UNDA』になるのかもしれないが、類家という人の放つ音楽には彼固有の曲線がいつも聴こえる。どのようなコンテクストでも表出する分析不能の歌を抱えた人として曲を書き演奏に身をまかせる。今時これほどジャジーな存在はなかなかないだろうと思う。菊地成孔チルドレンの一人であることは間違いないだろうと思うが、菊地マナーが彼の唾液の中に消化された結果として、痕跡のようにあの響きやリズムのフィギュアがこのアルバムの楽曲、演奏に現れる。(高見一樹)

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⑤【JAZZ-VOCAL】【CD/LP】
I Am a Man

Ben Williams(b, vo)Kris Bowers(p)Marcus Strickland(sax)Jamire
Williams( ds)Keyon Harrold(tp)
[Rainbow Blonde/Ingrooves ユニバーサルミュージックUCCU-1622(CD)
BLONDE020V(LP)]

パット・メセニーの〈Unity Band〉への参加の他、ウィントン・マルサリスや渡辺貞夫まで、数々のレジェンドと共演してきたベーシスト。これまでに2枚のリーダー作を発表している彼だが、2011年発表の初リーダー作『State of Art』、続く2015年の『Coming of Age』と、その作風は全く異なり、3枚目のリーダー作となる本作では、なんと自らがヴォーカルを担当するという挑戦的な内容に。マーカス・ストリックランドやクリス・バワーズら同世代の凄腕達と奏でる異色のネオ・ソウル。“ベーシスト”という肩書きは、もはや彼には相応しくないのかも。(新宿店 栗原隆行)

J写_Karen Souza

⑥【JAZZ-VOCAL】
愛の囁き(+1)

Karen Souza
[ビクター VICJ61784]

80年代のロック&ポップスの名曲をカヴァーしたアルバム『Essentials』のヒットにより話題となったアルゼンチン出身のシンガー。本作はホイットニー・ヒューストンやアレサ・フランクリンのソングライターであるパメラ・オーランドとカレンの共作によるオリジナル曲を中心に、エレガントで官能的なヴォーカルを堪能出来る。ストリングスやホーン・セクションを効果的に配した楽曲もあれば、ピアノの伴奏のみでしっとりと歌い上げる曲もあり、ヴァラエティ豊かな楽曲が並ぶが、一貫してナチュラルさとエレガントな雰囲気を纏ったカレンの歌の存在感が際立つ一枚だ。 (新宿店 栗原隆行)

UCCQ-1117 ジャケ写

⑦【JAZZ-VOCAL】
シスター

Puss N Boots:Norah Jones/ Sasha Dobson/Catherine Popper
[ ユニバーサルミュージック UCCQ-1117]

ノラ・ジョーンズ、シンガー・ソングライターのサーシャ・ダブソン、そしてベーシストのキャサリン・ポッパーという3人からなるガールズ・ユニット、〈プスンブーツ〉。昨年秋にクリスマスEPをリリースし活動再開を強く印象付けた彼女たちが、CDデビュー作となった前作から実に約6年ぶりとなるセカンド・アルバムをリリース。3人のオリジナル曲を中心とした今作は楽曲によって担当楽器がかわるなど、より自由で遊び心が満載な作品に仕上がっている。気心の知れた仲間と奏でるカントリータッチの味わい深い雰囲気に、“ジャジーなノラ・ジョーンズ”とはまた違った魅力があふれている。 (千葉広克)

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⑧【JAZZ】
RECKON

JIM BLACK TRIO:Jim Black(ds)Thomas Morgan (b)
Elias Stemeseder (p)
[Intakt Records ITK3342] 〈輸入盤〉

ジム・ブラックはティム・バーンやデイヴ・ダグラスらとの共演によってジャズに登場したドラマーだった。ある評論によれば、ジャズというよりはポストロック的なドラマーだそうだ。このトリオは8 年前に発表された『So matic』と同じメンバーでの4枚目である。晩年の菊地雅章と活動をともにしたベースのトーマス・モーガンとジョン・ゾーンとのプロジェクトに参加するピアニスト、エリアス・ステメセダーによるトリオである。北米のピアノトリオ、〈The Bad Plus〉のようでもあるが、三曲目《Tighter Whined》の断片から音楽全体を構築するかのような演奏はやはりジムならではだ。 (高見一樹)

▶前編はこちら!
JAZZ新譜レビュー前編【2020.2 144】


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