「おばあちゃんの話」2/5 急いだ結婚式と、前々からとっていた休暇|公募インタビュー#31

まきさん(仮名) 2021年9月初旬〉

・・・1/5 私の居場所 からの続きです・・・

牧さんは、大好きなお祖母様おばあさまのお話をしてくださいました。お別れから3年が経とうとする今も、寂しくて死を受け入れられないと言います。やさしくすてきだったお祖母様との思い出や、牧さんとのつながりが引き寄せたようなめぐりあわせの数々。時に笑い、時に涙声になりながら語ってくださいました。

2018年お正月〜春 結婚を決め、式を急ぐ

牧さん 私は、九州の実家で2年間暮らした後、2018年春から、旦那の勤務先がある北陸の県に住んでいます。

 2018年の夏に結婚式を九州で挙げたんですが、結婚も結婚式も、急展開で決まったんです。そもそも、旦那とは学生時代からずっと付き合っていて、結婚したいという話は彼の方から出ていたんですけど、就職して1年くらいは仕事に慣れたいと言うのでやきもきしながら待っていました。

 彼と2018年のお正月に会った時、就職してしばらく経っているのにまだ踏ん切りがつかないみたいな感じだったので、私、ぶち切れて、「今結婚するかしないか決めないんだったら別れる」って言ったんですよ。そしたら彼はすごくあわて出して。その時もう7年くらい付き合っていたので、別れることは考えていなかったみたいです。1ヶ月猶予を与えましたけど、彼は別れることは考えられないって言って、渋々結婚しますみたいな感じになったんです(笑)。

 結婚することがお正月辺りに決まって、その年の春から北陸で新生活を始めることになったので、そこからすごくバタバタするようになって。私はすぐに仕事を辞めて、新居を決めたり、引越し準備をして。結婚式も翌年やっちゃいたいねっていう話になったんで、式場探しもして。結婚式は、九州の彼の実家の近くで挙げることになりました。

 調べたら、結婚式って夏にやったほうが安いんですよ。シーズンオフ割みたいなのがあって、春やるのと夏やるのとじゃ下手したら100万円ぐらい違うんです(※式場や条件による)。当初は翌年のつもりだったんですが、じゃあ(その年の)夏にやろうと思って、普通は1年ぐらいかけるところ、準備期間半年でやることにしました。彼はもうちょっと余裕があったほうが、とか夏より秋のほうが、とかいろいろ言ってたんですけど、私はもうすごいケチなんで(笑)、いや夏が安いから夏にするって言い張って決定しました。
 
 で、4月になって、私も北陸に引っ越して、引っ越してからもずっと結婚式の準備はしつつ、私もまた仕事し始めて。

 準備で徹夜したりするくらいバタバタしていたんですけど、祖母の家にも時々電話していました。祖母も結婚式をすごく楽しみにしてくれていました。私がちっちゃい頃から、孫の結婚式に出たいなと思ってたけど、本当に出られるとは思ってなかった、って……。

 祖母が結婚したのもそんなに若くなかったし、母の結婚も私が生まれたのも遅かったので、祖母は、正直、私が大きくなって結婚式をするまで生きられないかなって思ってた、だから本当に楽しみにしてるって言ってくれました。楽しみすぎて、結婚式に来て行く服をオーダーしちゃったと言ってたんです。着物はもう大変だから、親類の呉服屋さんに、ジャケットとスカートのスーツをオーダーしたって。「へえー、おばあちゃん何色にしたの?」って聞いたら、「水色が好きだから水色にした」って言ってて、「ああいいねー、似合うやろねー」って言ってたんですよ。 

7月 楽しかった結婚式ーおばあちゃん、遺影を撮ってもらう

牧さん 結婚式当日を迎えて、式自体は無事に終わりました。祖母も作った服を着て来てくれて、カメラマンさんにたくさん一緒の写真を撮っていただきました。高砂でも撮りましたし、ああいい写真撮れたなーって思ってたんですけど、式が終わった後、カメラマンさんに「やー、おばあちゃんすごいですね」って言われたんです。聞いたら、カメラマンさんが各テーブルを回ってお客さんの写真を撮っていた時、祖母が自分一人の写真を撮ってくれと言ってきたって。なんでかなと思ったら、祖母は「遺影にするための写真を撮ってほしい、この年になると遺影のためのいい写真がなくて困っちゃう人がいるって聞いたから、せっかくオーダーした服も着てるし、一人の写真を撮ってほしい」と言って撮ってもらったらしいんです。(遺影の話は)冗談だと思うけど、と言ってカメラマンさんが教えてくれました。

 それを聞いて、いやー、すごいこと言うなうちのばあちゃん、死ぬ予定もないのに、ってみんなで笑ってたんですよ。結婚式の時は、具合が悪いとかもなく、いつも通りすごく元気だったんですね。結婚式を挙げたのは7月だったんですけど、夏までは畑仕事も祖父の介護もしていたし。
 祖母は背中がエビみたいに曲がっちゃってて、杖はついてたんですけど足腰は強くて、結婚式に来た時も、杖をついて一人でスタスタスターッて歩けるぐらい元気だったんですよ。

9月中旬 最初の入院 

牧さん 7月の結婚式の後は、新婚旅行に行ったり、式に来てくれた人にお礼状を書いたり、ちょっとバタバタしていたのもあって、祖母とは電話もあまりしていなかったんですね。

 9月の中頃になって、母から、祖母の具合が良くないという連絡が来ました。2ヶ月前には元気にスタスタ歩いていたおばあちゃんが、今入院している、と。ガンが見つかったんですね。ちょっとどこのガンだったか、私、うっかり忘れちゃったんですけど、ガン自体がすごく重症になっているというわけじゃなく、それに高齢なんで、若い人に比べたらガンの進行はすごく遅いんですね。見つかったのも、特に具合が悪くなって病院に行ったわけではなくて、たまたまいつも通りの感じで病院に行って、なんとなく検査してもらったらガンが見つかっちゃったと。でも正直、ガン自体は命に関わるようなガンじゃなかったんですよ。

 ただ、祖母は自分がガンであることを知って、すごく気落ちしちゃったんです。一緒に病院で告知を聞いた母が言うには、告知したお医者さんの言い方が、そりゃないだろっていうような言い方だったみたいで。
 (一般的には)お年寄りがガンになったら、体力を使う手術はしないパターンが多いらしいんですね。ガン自体の進行も遅くて、あと1年しか生きられませんというような速度で進行しないんで、手術後に体力を回復できずに寝たきりになったりするよりは、ガンとは薬とかでうまいこと付き合っていくのが、お年寄りのガンではよくとられる選択らしいです。お医者さんのほうからも、そうやって「ガンもすぐにはどうこうなりませんから、お薬とかで様子を見ていきましょう」とか言ってくれたらよかったんですけど、そうじゃなくて「あなたは手術しても意味がないんで、手術できません」って言われたらしいんですよ(苦笑)。

 お医者さんの判断が間違っていたわけでもないんですけど、たぶん言い方の問題ですね。祖母は、ああもう自分は助からないんだ、って思っちゃって。それでごはんが食べられなくなったんですよ。

10月下旬 再入院

牧さん ごはんが入らないと、内臓の機能ってすぐに落ちていくみたいです。母が電話してくれた9月中旬には、固形物は食べられなくなっていて、それで体がすごく弱ったから入院してる、っていう電話だったんですね。でも、入院しているうちに液体がとれるようになり、おかゆが食べられるようになり、ってちょっとずつ回復して、一回退院したんですよ。なんですけど、結局、10月の下旬、また入院したっていう連絡があって。

 回復はしたけど、やっぱり、一度落ちちゃった内臓の機能は、若い人みたいにはフルに戻らなくて、腎臓がすごく弱くなってしまったんです。腎臓が動かなくなると尿が作れなくなるんですね。水は必要だから飲むけれど尿を作れないから、ずっと水分が体内にたまっていっちゃうんですよ。そしておなかがパンパンになるまで腹水がたまってしまう、その前段階だということで。尿があまり出なくなってきちゃったから入院するという話でした。

夫婦で既にとっていた休み

牧さん その電話があったのが10月下旬で、それはもともと私たちが夫婦で帰省する予定にしていた日の1週間ぐらい前でした。

 私、8月くらいに職場に申し出て、10月末から1週間休みをとっていたんですよ。11月頭は地元のお祭りがあって友達も集まるし、その時はただ遊ぶために実家に帰ろうと思って。飛行機をとるのはなるべく早いほうが安いんで、早めに決めたんです。
 私、最初は1人で帰ろうかなって思ってたんですけど、旦那の会社が大きなプロジェクトの後の休暇として自分もちょうどその時期にしばらく休めるから、一緒に帰ると言うので、じゃあということで8月に飛行機も2人分予約して、夫婦2人で10月末から11月頭まで1週間帰る予定にしていたんです。

 なので、祖母の再入院の話を母から聞いて、ああそうなんだ、じゃあ来週帰るから、帰ったらお見舞い行くね、という話をしていました。

 正直、まだその時点では、腎臓の機能が落ちているとは言え、入院もしてるし、あれだけ元気だった祖母だから、そんなに深刻なことはないだろ、また今回もしばらくしたら退院できるだろうって思ってたんですよ。本当にみんな、母もそう思ってたし、私ももちろんそう思ってたし、祖母自身も退院する気満々だったんですよ。だから、母にも、庭の花にちゃんと水やっといてねとか、いろいろ祖母も言ってたんです。意識とかは全然しっかりしてたんで。

3/5 「1週間」 に続く)

※インタビューは音声のみの通話で行いました。
※病状などの記述は個人の状態によるものです。万人に当てはまるものではありません。

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